円満の太刀
会心の威勢で応じたは良いが、いまだ機は熟さず、剣豪の本心は気が気でない。
一方で、姫の心身に焦りは無く、まるで
これはこれで、警戒の印か。
かの剣豪は、刀法の極意を奮発すると宣言した。
それが
勝つため、生き残るためには手段を選ばぬ彼のことだ。 どのような悪法を用いるか、まったく知れたものではない。
「……姫さま」
「大丈夫」
何より、先頃から妙な殺気が、周囲にチクチクと
気配の発端を知ろうと意識を澄ますも、ただただ背筋に
また、正体を特定するにも至らない。
なにか、良からぬものがこの場に現れ出ようとしている。
「………………」
古流の奥義には、特定の型を持たないものが多い。
こういった構えから、こういった術を用いよと限定するのではなく、あくまで心の持ち方や精神性を謳い、これを流儀の奥伝として、後代に授けてゆくのである。
例えば、“剣を抜いて敵と
例えば、“天地人の
あるいは、“剣を抜かぬのが意地。 常日頃から他人に無礼を働かず、
自力では不足と見れば、迷わず他力に
敵の
時には文筆を駆使し、正義の
これは
平たく言えば、“勝つため・生き延びるためには、角を立てずあらゆる物皆を活用すべし”という事になる。
「ぬ!?」
姫の身体に
その
「ち……っ!」
数束の
いつの間のことか、目先には、丈の高い一刀を
この人物というのが、
目元には
何者かと考えたが、すぐに合点がいった。
「燕返し……。 佐々木の
「左様。 左様であろうな」
まったく無法も
かの剣豪は苦し
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