剣聖の道々
気が付くと、彼は屋内にいた。
辺りには種々の物品が散らばっており、
当の品々から察するに、恐らくは電気屋。 決して大きな規模ではなく、親族経営を
「ぬ……」
このように
本日は定休日なのか、幸いにも人の気配は無い。
ふと右手を見ると、刀身の
ここまで、まことに
かつて、将軍家の指南役に請われた“彼”は、先の関ヶ原における東西荷担の
時の幕府にとって、一度でも大坂方に
ともすると、かの兵法家がその折りに抱いた悔しい心の内は、察するに余りある。
もっとも、この頃の彼というのは、あと数年の後に、言わずと知れた
つまりは、その剣名も未だに中の上。
この後に、さらなる紆余曲折を経て、天下武双の剣聖と語り継がれる彼の道々を思えば、当の一件は、大事の前の小事と言えなくもない。
大望が
指南役に推挙を戴いた老中格の御仁が、
とは言え、
ちょうど、他愛のない
これが仮にも、世間に
“それにしても”と気を回し、すっかりと
これほどの名剣ですら、折れる時には折れるものか。
となると、戦場でいつまでも命脈を保つ兵具など、夢のまた夢。
やはり、費用対効果を考えても、木剣こそが至高ということか。
そういえば、かの御仁はどうなさったろう。 変わらず壮健でおられるものか。
お
かの兵法家の行く末に、掛かる暗雲なしと見抜いたか。
それとも
そういった
「いつまで寝ておるのか?」
出し抜けに、情味を欠いた呼び声がした。
目線を移すと、大きく破れた店屋の間口に、かの荒神が忽然と立っている。
果たして、その
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