交わる道

 ファーストフード店に二人の男がいる。

 一人は麦わら帽子にポロシャツにハーフパンツの露天商、一人は少年だ。

 奇妙な取り合わせだが気にするものは誰もいない、二人の前にはドリンクとナゲットだけが置かれている。

「……その情報、マジ?」

「マジもマジだ、”狩猟者”の居所が分かった。しょーじききなくせえけどな。手練れの暗殺者がこんな簡単にしっぽをつかませるなんて」

 罠の可能性もある。不安もある。それでも――

「けど、行くしかないか」

「その、なんつーか無理すんなよ」

「しないよ、約束したしね。というかどうせ、支部長達には先に伝えてあるんでしょ?」

 言って立ち上がると露天商、鍵谷は頭をかいて。

「ものがものだからな……許してくれよ。その辺は」

「支部長との仲を今後ともよろしくしてくれればいいよ」

 御馳走様、と言い残して向かう先は愛しの支部長のいる塾だ。

 いつも通りに愛を囁いているうちに皆来るだろう。そうなれば、はじまりだ。

 彼の名前は”キャッツ・クレイドル”遠藤ひばり。

 ”狩猟者”によって仲間を殺されたオーヴァードだ。


 

 夕刻の路地裏。Tシャツ姿のショートカットの女子にスーツをきた中年がいる。

「へぇ、そんなのがいるんだ。面白そう」

「挑む気か? 正気じゃねえな……死ぬぜ?」

「は? まともな人なんかこの辺にはいないし」

 それに、と彼女は言葉をつづけ。

「香坂は強いから」 

 無愛想にそういってその場を立ち去った。

 彼女の名は”ハイランダー”香坂もみじ。復讐のために強さを求めるオーヴァード。



 夜、公園に一組の男女の姿がある、一人は長身の少年。もう一人は小学生ほどの背の低い少女、その手にはゴルフバックを持っていた。

 少女は棒つき飴を口から出して、面倒そうに肩をすくめた。

「なんだってまた厄介な仕事が回って来るやら……」

「味方を疑わなければならないとはな」

 ためいきをついて少年は飲んでいた缶ジュースをゴミ箱へと放った。

「まあ、まずは会わなければ話にはならない。早速行くとしよう」

「なんかやる気じゃね?」

「靖音が待っているからな」

「アーアーお熱い事で」

「この機会にもっと、人のことが分かればいいのだが」

 二人並んで夜の街へと赴く。 

 少年の名は尼崎護。人ならざるものレネゲイトビーイング。

 人と共に歩みたいと願うオーヴァードだ。

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