7


プレ当日。


昨日の夜、余裕を持って朝5:00にセットしたアラームが鳴る前に目が覚めた。

二度寝をする気持ちにもなれずに、ベッドから起き出す。

いつもより早く準備を済ませると、学校へ向かった。


日毎ひごと暖かくなる風に春を感じつつ校門を抜け、すっかり見慣れた校舎を見上げる。

1年前、受験票を持って同じ道を通った記憶が懐かしい。


「おはよう、雪夜。早いね」


呼ばれた声に振り返ると、廉人がこちらに向かって歩いてくるところだった。


「おはよう。なんだか目が覚めちゃって。緊張してるのかも」

「俺も。あんまり眠れなかった」

「動きのシミュレーションは完璧だよ!」

「現実は何があるかわからないけどね」


ふと、廉人の手元に目が行った。


「その保冷バッグはお弁当?」

「ん?ああこれ」


言いながら白のバッグを少し持ち上げる。


「今日はちゃんと食べる暇ないと思っておにぎり作ってきた」

「あー、僕もそうすればよかった!朝もあんまり食べられなかったんだよね。途中でお腹空いてくるかも」

「その時は雪夜にもあげるよ」


話をしながら集合場所である第1調理室へ向かう。

ドアを開けると、思いの外学生が集まっていた。

同じ班の天ヶ原さんの姿もある。


「おはよう天ヶ原さん。みんな早いね」

「昨日の下拵えの様子が気になるみたい。私は、家にいても落ち着かないから先に来ちゃったわ」

「雪夜。俺は会場の方がどうなってるかちょっと見てくるよ」

「わかった。行ってらっしゃい」


廉人を見送ると、テーブルの上の道具と材料を確認する。


(小麦粉、卵、バター、食紅…あれ?オブラートってこんなに減ってたっけ)


「天ヶ原さん、オブラートってこんなに少なかったっけ?」

「あらほんと。誰かが練習用にごそっと持っていったんじゃない?予備はまだあるんでしょう」

「うん、そこら辺は廉人が上手く調整してくれてる」





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