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お米を研いで、野菜を切っていると、砂桐さんに声を掛けられた。


「あれ?今日は砂桐さんの家で練習するんだと思ってた」

「そのつもりなんだけど、前の授業の課題が終わってないメンバー待ち。それ、もしかして炊き込みご飯作ってるの?」

「そう。でも鶏肉がないから何か工夫しなきゃなんだけどね」

「鶏肉?あっちでお肉のメニュー作ってるところあったから、少しなら余ってるかも。聞いてみるといいよ」

本当ほんと?そうする、ありがとう!」


味付けの工夫を考えていた所に、タイミング良く知り合いが現れ助言をくれたおかげで、当初の予定通りの炊き込みご飯を作ることが出来た。


「いただきます」

「いただきます。鶏肉と一緒に唐揚げまでもらっちゃった。出汁の味付けにこだわったんだって。廉人の味噌汁も美味しい」

「周りから野菜の切れ端もらって入れただけだけどね」

「なんだかすごく“お家の味”みたいなメニューになっちゃったね」

「凝った料理は家でも授業でも作ってるから、普通に食べるにはこっちの方が俺は好きだな」


廉人が学校長の息子、というのはわりと有名なのだが、そういえば家での様子などはあまり聞いた事がない。


「廉人って学校長先生と一緒に住んでるんだよね。普段はどんな感じなの?」

「別に、学校こことあまり変わらないよ。あの人は料理の話ばかりだから」

「家でも料理の事考えてるんだ。すごいね」

「全然すごくないよ。食事も、ほとんど俺が作ってるけど、ダメ出しばっかりだし。休みの日まで授業受けてる気分になる」

「それは…、ちょっと大変かも」

「好きなものを好きなように作りたいんだけど、リクエストだけはしょっちゅうしてくるんだよ。食べたいものあるなら自分で作れっていつも思うし」

「なんだか意外」

「何が?」

「廉人もそんな風に話す事あるんだね」


優等生で通っている廉人が、愚痴っぽく話すのがなんだか新鮮で、今までよりもっと近くに感じられるように思えた。


「話くらいなら僕にも聞けるし、また何かあったらいつでも話してよ」

「…なんか変な事言った感が否めなくもないけど。ありがと」

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