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「おーい、雨野あまの!レセプションのメニュー決まったか?」

「今日の実習でもう少し試してみてから決めようと思ってた」


春の訪れを感じられるようになってきた季節、僕たちはなぶさ調理師専門学校の1年生は、1年で1番忙しく動き回っている。


通常の授業に加え、4月に入学してくる新入生の歓迎パーティーの為だ。

このパーティーは、企画や運営はもちろん、当日の料理やデザートも全て、学生たちが準備をしている。


師が忙しく走り回るから、12月を師走と呼んだらしいけど、ここでは3月こそ師走と呼びたい。


「そっちはデザート班だっけ?お前のとこははなぶさもいるんだろ。いいよなあ」

「あはは。それ、他の人にも言われた」


学校長の息子であるはなぶさ廉人れんとは、和洋中何でもござれのオールラウンダーで、座学の成績も良い。


この歓迎パーティーの役割分担は、先生や周りの学生から推薦される場合もあるが、基本的には本人の希望制だ。


廉人はそれはもう引く手数多だったが、デザート担当を希望し、更には同じ班になった僕を班長に推してくれた。

デザートはわりと得意分野だけど、廉人がいてくれると心強い。


「宝の持ち腐れにはするなよ、班長。お、噂をすれば」

雪夜ゆきや!」


廊下の角から、柔らかそうな黒髪を揺らしつつ、廉人が姿を見せた。


「メニュー案なんだけどさ、他のデザート班はもう何出すか決まってるんだよね?」

「うん。B班はゼリー、ババロア系で、C班はマカロンと、お土産用にクッキーやフィナンシェみたいな焼き菓子も作るんだって。D班はまさかの和菓子」

「練りきりとかみつ豆とか?」

「わらび餅とか道明寺とか!」

「何でまたそんな難しそうなものを」

「ほら、D班には砂桐さぎりさんがいるから」

「ああ、あの老舗の」

「今日は和菓子屋砂桐さんちで練習でもするんじゃないかな」





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