第29話 ぼっち飯×2
学術機関、昼休み
中庭から外れた校舎の隅っこ
ミシェルはため息をつく。
ひとりで昼飯を食べる場所を探す・・・
ふ・・・寂しい物だな
以前は、取り巻きを従えながら、
我が物顔で教室を占領していたというのに
桜花国ではこんな状態を
『ぼっち飯』と呼ぶらしい。
なんて、惨めなんだろう・・・
角を曲がった先、誰もいない校舎の隅っこで
ケイシュウ=ミヅチが、パンを食べていた。
「!?」
「・・・」
$$$
ある程度離れた位置、
微妙な距離で、それぞれ昼食をとる二人。
それは、人目に付かない空間の範囲で、あけることのできる、精一杯の距離だった。
(気まずい)
ミシェル「意外だな」
ケイシュウ「?」
俺を倒したほどの男なら・・・
女子生徒をたくさん はべらせて
「やれやれだぜ」とか
カチンとくるセリフを吐いているものとばかり思っていたが
(それは一体どこの常識なんだよ)
ケイシュウもまだ学術機関に馴染めないでいた。
年上で、敗戦国の人間で、なおかつ、シスナが俺の悪評垂れ流しまくっているというのに、どうして馴染めようか・・・
「・・・いいだろ・・・別に」
・・・
「俺の親父は偉大だ」
ミシェルは静かに話し出す。
「この学術機関の模擬戦で『敗け』など一度もなかったそうだ」
そんな父のようになれと言われ続けて育ったし、
俺自身そんな父に憧れてそうなりたいと思った。
いや、今も思い続けている・・・
独り言のように話すミシェル。
その姿は、ケイシュウが最初の修行で脛を蹴られて立ち上がれないでいた頃の姿に・・・似ていた。
「お前が・・・本当に心の底から・・・そう思うんなら、きっとそうなんだろう」
ケイシュウは、
そっけなく去っていく。
$$$
『誇りを取り戻す方法は簡単です』
『君が父君以上の存在になればいいのですよ』
『父君にあって君にない物は、なんでしょうか?』
『それはヘルドール家に国王から委譲された鍵の力・・・この街の結界の力です』
『ならば!・・・君が鍵を受け継いで結界の力を継承すればいい!』
そうすれば・・・きっと君は・・・誇りを取り戻すことがデキるはずです・・・
あの時出会った怪しげな仮面の男の言葉が、耳について離れない。
そして、徐々に・・・
その言葉が自分の中を支配していくのを・・・感じた。
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