盗み飲みの犯人は
出来上がって樽に貯蔵されている酒が減っていたら、それは神様が飲んだ証。
杜氏が目指すは、神をも酔わす極上の酒。
昔から酒造りが盛んなこの村に生まれた者なら、子供でも知っている言葉だ。かつて村一番の杜氏の酒を神様が盗み飲みしたことがある、という言い伝えも。
一人前の杜氏になった今、盗み飲みしたのは村人だろうと思っていたが――。
半分ほどに減った樽の傍でいびきをかいて寝ているのは、見知らぬ青年だった。状況から、彼が盗み飲みしたのだろう。
いつになくいい出来の酒だったのに。その上、酔い潰れて寝るとはふてぶてしい。
怒りにまかせて叩き起こすと、
「いい酒じゃった」
にんまりと笑い、青年の姿は煙のように消えた。
※296字
※毎月300字小説企画参加作品、第15回お題「酔」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます