保存の功罪

 脳にチップを埋め込み、記憶を外部の媒体に保存する。ネット環境さえあれば、どこにいても、見聞きしたことであれば些細な出来事でも記録し、自由に引き出せるようになった。物忘れ防止になるし、忘れたくない大事な記憶を、事故や病気になったとしても忘れずに済む。

 もちろん僕も、忘れたくないからと、永遠の愛を誓い合った日の記憶を保存した。


 あれから時を経て、記憶を保存するだけでは、気持ちは保たないのだと知った。

 永遠を誓った日のことを忘れてないでしょう? と君は言う。

 忘れていないと言うか、まだ外部媒体に保存してある。ただ、最後にその記録にアクセスしたのはいつだっただろう。

 君が見ていない間に記録をこっそり削除しよう。


※300字

※毎月300字小説企画参加作品、第14回お題「忘れる」

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