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あかときの8分19秒

 昼に白く輝き、夜は月を通して存在を知らしめる、人類最寄りの恒星。

 目を細めても眩しすぎるその輝きは、8分19秒前のもの。今見えている太陽は、既に過去なのだ。

 見えていても、それだけかの星は遠い。


 有志が集まって打ち上げた太陽探査機「あかとき」。太陽に到達しているはずなのに、未だ応答はない。

 誰もが諦めた暗い管制室から、もう何度も呼びかけている。

 答えてよ、あかとき。

「感情的にすぎるAI」と仲間からも非難され、それでもめげずに開発を続けた。打ち上げを見届けずに私の前から消え、太陽よりも遠い恒星になってしまった博士のために。

 ヘッドホンを痛いほど耳に押し付け、今日も呼びかける。


 無音の中に、微かな雑音を聞いた。



※300字

※Twitter300字SS参加作品、第77回お題「答える」

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