最強の魔法使いの服

 魔法使いが魔法を使うには、魔法が織り込まれた服が必要だ。使う魔法によって服は変わる。

 だから師匠は、真夏でもたくさん重ね着をしている。快適に過ごせる魔法のかかった服も着ているから、暑くはないらしい。

「だが、重ね着すればいいものでもない。魔法をうまく操れなければ、結局意味はないのだ」

 師匠はこれから、皆を困らせる魔物を討伐しに行くのだ。だから重ね着は当然のはずなのに、師匠は服を脱いでいく。

「覚えておけ、未熟な弟子よ。最強の魔法使いの服装は、これだ」

 師匠は一糸纏わぬ姿になる。その体表は、あらゆる呪文で埋め尽くされていた。

「裸を恥じぬ勇気。それが、最強の魔法を生み出すのだ」

 でも師匠、脱ぐのが早すぎです。


※300字

※Twitter300字SS参加作品、第70回お題「服」

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