余り物の魔法遣い

 魔法遣いは世界の様々な事象に干渉するために呪文を唱え、文字や文様として刻む。

 完璧に唱えられた呪文、正しく綴られた文字、美しく施された文様――だが、魔法遣いも所詮人間だ。一分の隙もない完璧や正しさは存在しない。不完全な魔法からは、完全になれなかった魔法がこぼれ落ちる。

「それを拾って使うのが〈余り物の魔法遣い〉だ」

「今の説明だと余り物という言い方は不適切だと思います」

「昔の魔法遣いは今よりも高慢ちきで、自分の魔法が不完全だと認めなかったのさ」

「でも今も不名誉な感じの名称なんですね」

 師匠が指をぱちんと鳴らす。

「他人の力でも、うまく利用すれば最強さ」

 真っ黒な空と稲光を背景に、師匠は不敵に微笑んだ。


※298字

※Twitter300字SS参加作品、第62回お題「余り」

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