射矢らた詩集

川原でのひととき

暖かい日差し

川面を小鮒が跳ねている

ああ

もうすぐ五月が来るな

また五月病にかかる

また？ 笑わせるな

あれは新入生がなるものだろう

お前のは単なる倦怠だよ

倦怠か

ボードレールやゲーテの言うあれだな

確かに倦怠は恐ろしい

なにもかも嫌になる

付き合いたくないものだ

主はかくして人間を貶めたり、か

おいおい昼間から飲むのかい？

休日じゃないか

それに倦怠に打ち克つには

精神を鍛えねばならんだろう

酒で精神を鍛えられるなら

修験者はみな酔いどれだぜ

高野山で高僧たちが毎日

朝から酒宴を開いているとでも？

細かいことを言うな

たまには酒の力を借りたいだけだよ

実際いま俺は

通り魔が来ても素手でつまみ出す

そんな力がみなぎってきたぜ

よせよ 飲み過ぎだ

つまむなら

そこのシロツメクサでも摘んでいろ

ラッキークローバーあるかな

どうかね

あの四つの葉はそれぞれ

希望と幸運、誠実、愛情を意味しているらしいぜ

じゃあ三ッ葉には何が欠けてるんだ？

お前の場合、明らかに誠実だ

ふん

言ってろよ

俺は四ツ葉を捜しあてる

あったらどうする

酔った勢いに手を借りて

佳奈さんに告白しに行こう

面白い！

よし、探そう

夜までかかっても見つけるぞ

わかった やろう

しかし酔いが回って

葉を数えられん

日差しはさらに強くなり

魚たちは河底へ逃げる