第7話 開発者と使用者
王都に滞在すると言った理由は大きくわけて3つ
ハーヴェン兵器廠が見たかったのと
アルベルトさんが言っていた俺をよく思っていない大臣、重役連中の炙り出し
そして3つ目は教会に行って魔法を少々学ぼうと思っている
聞いた話しによると、魔法に関してはストラ教が管理している、その中でも王都の教会は最前線だ
2つ目はまぁ、出来たらでいいや
まずは!兵器研究所!
これが1番の本命なのだよ
なんでも天才的な開発者がいるらしい
っていうか、なんで使わない兵器を研究してんのか俺にはさっぱりわからん
どうせ使わないんだからよこせよ
俺が使ってやるから
朝一番、馬車を止めて乗り込む
ワクワクしすぎて早朝に目が覚めてしまった
「ハーヴェン兵器研究所まで」
「ここからだと川沿いの裏口の方が近いですが、どうします?」
「そっちでいいですよ」
「・・・わかりました」
馬車に乗ってガタゴトガタゴト
やべっ、酔ったか・・・?
ぎもぢわ゛るい゛
研究所はもうすぐだというのに!
「こ、ここで良い、降ろしてくれ!」
ん???シカト???
止まれよおいこら
「降ろせと・・・!」
この腐卵臭!
そして足元の陽炎
乗り物酔いじゃない、これはガスだ!!
ドアにも鍵がかかってやがる!
窓ガラスをぶち破って!
?・・・ぶち破って!・・・ぶち破って!
ぶち破れねぇ!クッソ
だけど、天井は薄いはず!
「ふん!」
ジャンピングオーバーヘッド直上頭突き!
オーバーヘッド・・・?
なんというか見事に首だけ外に出てしまったが、
これでガスは大丈夫だろう
しかし、戻そうとすれば木の破片が刺さって痛いし
上に抜けようにも力が入らない
どうしたもんかな
通り過ぎる人達がみんなひぃっ!?って言う
馬車から頭がはえてたらそりゃそうか
こっからどうすっかな
おっ、これは!タイミングさえ合わせれば!
・・・・・・今だ!
「おい御者!こっちを見ろ!!」
「ひぃっ!?」
真っ直ぐ進む馬車
馬車ごと川に投げ出される
「いってぇーーー!!!」
身体中がいてぇ!
擦り傷、打撲、切り傷
身体中ボロボロだ、くそったれ!
「く、くそっ!しくじった!」
「誰の差し金か言わないとこのまま死んじゃうけど、言う?」
城でお土産に貰った最新式の試作の銃を持ってきて正解だった
これから何かしら武器は携帯すべきだな
治安が良いとはなんだったんだ
「大臣の、オーブリーだ・・・」
「それで、あのガスは毒か?俺を殺すつもりだったのか?」
だとしたら問題だ、この世界の人間に殺されそうになったら人として終わりだと思う!
こんな温厚な人達を怒らせるなんて・・・
というのは半分冗談で
殺しに手を染めるほどになったら少し余裕が減る
余裕で調子ぶっこいていたいのでそれは困る
「殺すなんてとんでもねぇ!拉致して脅す気だったらしい!逃げるなら早くしな・・・!
確認の為に大臣の手勢が来る事になってる」
あ、やっぱ治安良かった
殺す気だったらもう殺されてんな、コレ
「そうか、ありがとよ」
銃のストックで後頭部をぶん殴る
そして水に沈めて、これで良し!
こんだけ派手に馬車も壊れてるし、事故で死んだかどうかなんてわからんだろ
余計な情報を喋られては困る
消せるなら消しておくに限るだろう
「ここら辺のはずだ!!探せ!!」
もう来やがった!
しかし幸い研究所の入り口はすぐそこ
さっさと逃げよう
ドアを開けてすぐに階段
どういう作りだよ・・・
「おや?どなたですか?」
白衣に眼鏡、髪もボサボサの女性が気だるそうに尋ねてくる
「すいません、匿って貰えませんか?」
うわぁ〜、物っ凄い嫌な顔してくる〜・・・
「なんて汚い・・・」
「あ、いや、すいませんホント」
恨むなら大臣にしてくれ、と言いたい所だが
こいつも息がかかってるかもしれない
下手にバラせはしない
っていうかお前も汚ねぇよ
「まったく、どうせワケありでしょう?」
まったくもってその通りだが、そろそろその嫌な顔やめてほしい
普通に傷つく
「申し訳ない」
「大人の汚い事情に私を関わらせるなと常々言っているはずですが!?」
ん?常々?俺は言われてないし・・・
「あの、なんの事でしょう」
「はい?あなた、国の人間でしょう?それも、そこそこ以上の立場とお見受けしますが?」
「なんでわかる?」
服はズタボロ、階級章をぶら下げてるわけでも無し、紋章も提示していない
わかる要素なんてどこにも
「はぁ〜・・・その試作の銃は、狩りが好きな貴族連中に高額で売りつけた物。それを持っている、と言うことは貴族と近しいもの、つまりそこそこ以上の立場という事だよ。」
おもっくそため息を・・・
いや、なんで試作の銃を知っている?
それに貴族に売りつけるって
「あんた、もしかして」
あの天才兵器開発者!
「ポーレット・フェイヴルという名称だが」
やったぁぁぁぁぁ!!!
探してた人に巡り会えたー!
「あっ、あの!聞きたい事があるんですが!」
そう、ずっと聞きたかったのだ
もしかしたら俺の仲間かもしれないこの人に!!
兵器のロマンを知るこの漢に!!
いや、女だけど
「なんで兵器の研究してるんですか!?戦争とか起こらないのに!」
なんか聞き方間違えた気がする、これ喧嘩売ってね?
「やれやれ、君もかね?無駄だ、とでも?他の大臣共と同じように・・・!」
ほらぁ〜・・・俺完全にやらかしたやつじゃ〜ん・・・
だけどまぁ、良い事がわかったぞ
この国のお偉いさん達に良い感情は抱いていないようだ
これならば、こちら側に引き込めるかもしれん!「俺と一緒に、戦争しませんか!?」
告白みたいになってる
「ふむ・・・しかし、いや、断らせて貰おう」
ガッデム!!
コポコポと黒色の液体が何かの反応を起こしている
何これ、コーラみたいで美味しそう
「隠れて下たまえ!早く!その机に!」
条件反射で机の向こう側に飛び込みうずくまる
液体が何かの反応をして爆発するのかと思ったので耳を塞いだ
フィリップ君には聞こえていませんがこの様なやり取りが行われております
「ここに人が来なかったか!?」
身なりの良い男が尋ねる
「いいえ、誰も来ていませんよ?」
白衣眼鏡がダルそうな顔で答える
「そうか、ならば良い」
身なりの良い男が立ち去ろうとした時
「あれ?なんだよ何もないじゃん!」
ズタボロの美形金髪が顔を出す
「あっ、バカ!」
バカだと!?
「貴様隠していたか!!この事は上に報告するからな!おい!捕らえろ!」
パンパンパン!!
時間差!?!?
と思ってビクッとしたが違う
ポーレットさんが拳銃で追っ手を撃ち殺していた
「えっ、普通に殺すやん・・・」
びっくりした、この人やっぱ俺側の人間だ
「君も、私をおかしいと思うかね?」
「変わってるなーとは思うけど、別に良いんじゃない?」
ニコりと笑って返してくれる
笑うと結構、その、かわいいっスね////
あれ?そういえば
「拳銃?なんで?」
ライフルはともかく、拳銃は狩猟に向いていない、つまり、人に撃つ為に作られた銃、という事になる
「拳銃?まだ名前を付けた覚えはないが。新開発した小型の銃だよ、低威力のため程度接近しないと使いものにならないが」
つまり、この人は正常に殺意を持ち合わせている、という事だ!!
やっぱり俺の味方だ!!
「やっぱり俺と一緒に戦争をしましょうよ!」
なんでこの人は断ったのだろうか
「そうだな、君のせいでここにはいられなくなったし、その話し、お受けするしかないだろう」
苦笑いで答えてくれる
やった!やった!!
「あ、研究資金はちゃんと支給されるだろうね?」
さっき渋ったのはそれか!?
「フィールドテストも付けますよ!」
当然だ、これから使う機会は増加する
元が0だから間違いなく増加する!
「素晴らしい・・・!!」
「あ、そういえば聞きたい事がいくつかあるんですけど良いですかね?」
「その話しは死体を運びながらしよう、ここを発つ準備もしなくてはならんしな」
死体を脇から持ち上げズルズルと溶鉱炉まで運ぶ
普段は溶鉱炉に不純物をブチ込むなど絶対に許さないらしいがどうせ放棄するから良いんだと
「あぁ、それで、ですねなぜ兵器を開発してるんです」
「邪悪な大人達を消し去る為さ・・・!」
なんだってそんな事を・・・
「この平和な世界には純粋で、清い子供達さえいれば良いのだよ」
ひぇっ
とても綺麗な眼差しをしておられる・・・
カンボジアで独裁者の経験とかあるのだろうか
だがまぁ、彼女の目的が邪智にまみれ欲望の下僕となった大人達の抹殺だろうが関係ない
彼女の手段がこちらの目的なのだから
すなわち、彼女が殺そうとすればするほど文明は発達するのだ
「なるほど、それともう1つ、あの黒い液体なあに?なんで急にコポコポしたの?」
死体を溶鉱炉に放り込む、ズヴォアァと音を立てて沈んで行く
タンパク質の焼ける匂いが充満する
この匂い、結構好きなんだよね
「あぁ、アレは魔法器で人の憎悪を抽出したモノで、兵器転用できないかと試行していたのだ。
反応の理由は悪意を持った人間が近付いた事による共鳴反応だよ」
!?
「抽出された人間は、憎悪なくなります?」
だとしたら非常に困るぞ!?
いや、使えるかもしれんが憎悪は抱いて貰わねば!
「これは哲学の領域だが、憎悪は向ける対象が存在する限り、一定量沸き続けると思っている。事実抽出した人間は生き絶えるまで憎悪を抱いていたぞ」
良かった、ならば使いようはいくらでもあるはず
「他の感情を抽出する事は?」
憎悪は、という事は他の感情は無くなるなるのか?薄くなる?
「普遍的で大きいものならできる、憎悪より量は少なくなるが。愛情や友情は足し算で増えるが、憎悪は引き算で増える」
好きは加点方式、嫌いは減点方式、か
つまり、好きになるのは好きな理由が増えるから
嫌いになるには嫌いじゃない理由が減っていくから、というわけだ
それに愛する理由は簡単に無くなるが、憎む理由は、誤解だったとかじゃない限り消えにくいものだからなぁ
「おいしそう、と思ったんだけど、飲んだらどうなるんですかね」
てきぱきと大事なのであろう書類や道具をカバンに詰めていく
「純粋に憎悪そのものだからね、注射でも経口でも身体に溶けて、君がちょっと嫌いとか、その程度のものが憎しみに変わるのだよ。量次第だがね」
恐ろしい薬品じゃねぇか!!
人の精神が手間なしで変えられるなんて、悪魔の液体だよあれは!!
「あ、準備できました?」
「あぁ、これだけあれば問題は無い
あ、そういえば君の名前を聞いていなかったね」
「フィリップ・ド・エルディンですよ。これからよろしくお願いしますね」
「あぁ、よろしく頼む、共犯者君」
熱い握手を交わす
「これは君へのささやかな贈り物だ」
拳銃を貰った、わーい
安全装置とか付いてないし怖いけど
おっと忘れるところだった
手近にあった紙にペンで自分の住所を書く
「ここが私の家です、先に向かっていて下さい。あとコレを城の者に渡せば、適当な部屋をくれるはずなんで」
命令書を書きそこに指輪の印で判を押した物を
財布から出した電車代、馬車代と一緒に渡す
「まさか名門の貴族だったとはな、驚いたよ。了解した、では世話になるぞ」
指輪の判子を見てから気付いたの?
俺の知名度・・・・・・
「あぁ、それじゃ向こうでまた」
「くれぐれも捕まらないでくれたまえよ?」
彼女と別れて研究所を出て時間を確認する
まだ昼前か、じゃあ教会にも行けるな
しかし城まで馬車で帰れる程度の金額しか残っていない
1度荷物を取りに部屋まで戻らいとな、めんどっ
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