numerous stars(満天の星)

「随分寒いな…… クール便でも始めたのか?」

Doomは帽子をかぶり直し、フライトジャケットの前を閉めた。エンブレムのついた軍帽をかぶった女は長い黒髪を揺らし、愉快そうに笑う。

「面白いことを言うのね! 暖房用の燃料を切らしてしまったのよ」

「それは……いや、いい」

Doomは何かを言おうとして、言葉を切った。


「嬉しいわ。こんなところまでわざわざ来てくれて。前と同じでなにもないけど、ゆっくりしていってちょうだい」

帽子をかぶった黒髪の女は口元をにいっと歪ませた。Doomは目を泳がせ、言葉を探す。

「なあ……ナイトメアをどうした? あんた、『ナイト』の方だろ。ナイトメアをどこにやった?」

帽子のつばの影で、表情がすっと消える。メアの服を着た『ナイト』は感情の抜け落ちた顔でDoomを見る。ぞっとするような無表情は見る間に怒りへ変わっていく。

「……なんでわかったの? わたしがメアじゃないってどうして気が付いたの? メアの事なんてなんにも知らないくせに!」

「前にあったときナイトメアは暖房に核を使ってると言った。燃料切れを起こさないからいい、と。とすると、さっきの台詞は妙だ。これがひとつめ。次に、あんた、俺のこと人間だと思って接してるだろ。ナイトメアはそんなことはしなかった、俺のこと喋るスピード狂のポテトマッシャーかなんかだと思っているんじゃないかって何度も思うときがあった。今のあんたにはそれがない」


「それから……ナイトメア、ちがう、あんたじゃなくて、船の方だ。随分加速したな。今日は、調速しなくても乗り込めた……急加速のGは人間の体には毒だ。こんなことは言いたくないが、ナイトメアは……」

黒髪の女、ナイトはそれを遮った。

「うるさい、全部、あなたのせいよ。あなたが、メアを惑わせたのよ……」

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