ナイトロ・ナイトメア
佳原雪
Night-flight(夜間飛行)
雲は晴れ、瑠璃色の空には流れ星のひとつもない。やわらかな風の吹く地上の高速で、Doomは遠い灯りを反射する空を見上げた。いい天気だ、と呟いたDoomへ、Dearは頷く。
「雨も星も降らない。地上を走るのはいつ以来だろうな」
Doomは自身の船のインターフェース、『Dear』とサービスエリアでコーヒーを飲んでいた。夜の闇よりなお暗いコールタール色のカフェイン溶液を啜り、Doomはあくびをした。盆を下げ、店を出てからもDoomはどろんとした目を擦りもう一度あくびをした。
「地上を飛ぶとどうもだめだな」
「運転代わりますよ。着くまで少し休んでいてください」
「ああ……任せる」
低速モードに切り替えられていることを確認し、Doomは仮眠室に入った。
『空が繋がっているところへならば、どこへでも、どこまでも』。星間輸送船デリシャス・メテオの船主、Doomの生業は運び屋だ。彼のおもだった仕事は死体を運ぶことだが、積めるものなら何でも積み、金額次第でどこまでも飛ぶ。
白の宇宙船デリシャス・メテオを駆り、星々を渡るアンダーテイカー。青の黒髪に深い宇宙色の目をもち、数多の星が飛ぶ夜空柄のフライトジャケットを着る彼を、皆は『流星のDoom』と呼んだ。報せを受ければ誰より早く駆けつけて空の上へと運びゆく死神。運び屋稼業で右に出るもののない宇宙最速の男。それがDoom。流星のDoom。
デリシャスメテオは改造宇宙船だ。速度特化の改装を施したこの船の出力は地上のものを壊してしまう。脆い地上の走行のため低速で航行する船は、操縦手の彼へ眠気を誘う。超高速で流れる星々に慣れたDoomの目には、時速100キロメートルは遅すぎた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます