イロトリドリ
イロマグロ
はじまり
『以上のことから、この一件はSYSTEM能力者による……』
テレビから平和なニュースキャスターの声が聞こえる。
「まーた事件かよ。しかも大方、また未遂だろ?」
少年は誰もいない部屋でつぶやく。
SYSTEM能力――――わかりやすく言えば特殊能力のことだ。様々な種類が存在し、まさしく十人十色、千差万別であるため、先の四字熟語からとって、『カラーズ』と俗称されている。
その最大の特徴は一定年齢のどんな人にでも覚醒すること、そして、ゲームのスキルなどのように人と交換したり譲ったりが割と簡単にできることだ。あとは、八つまで保有できること。
かくいう少年も『カラーズ』保有者だ。
その手軽さと、覚醒するのが32歳以下の子供からということで、俗にいう不良少年たちの犯罪行為に使われているのだ。
「あのての連中もご苦労だなぁ。どーせ熟練の宝具使いにでも鎮圧されるのに。」
宝具というのも似たようなもので、道具に能力が宿ったものだ。こちらは覚醒などの条件が一切ないのでおもに警察などの組織に使い手が多い。
「あー。久しぶりに暇な一日なんだがなぁ。何もすることがない…つーかやるきがおきねぇ。」
そう言って少年は座っているイスをガタガタと揺らす。ひとしきり揺らすと飽きて動きを止める。そしてまた先の一言を呟く。
少年の身長は150cmくらい。肉付きは悪く、同年代と比べてもかなり細い。現在は部屋着ということでジャージを上下身につけただけだ。
しばらく後、彼の部屋(ワンルームマンション)に備えられた電話が鳴り響いた。
「――――電話だな」
特に何も考えずに受話器を取る。
『おう、おまえかー?実は頼みたいことが』
―――――電話を切る。友人からの電話だったが、彼からの依頼でろくな目にあったことがない。基本的に断ることにしていた。
しかし、またもや電話のベルが鳴った。まだあきらめていないようだ。しっかり10コール待って電話に出る。
『毎回思うんだがよ、その10コール待つのやめねー?こっちは用事があるんだぜ?』
「お前の依頼、基本的に報酬と労力が釣り合ってねーからヤダ。」
電話を切る。
―――――二回断れば友人もあきらめる。三回目がかかってくればXYZだということで、すでに二人の間で幾度となく繰り返された行為だ。今回は三回目のコールが鳴り響いた。
「んだよめんどくせーな。受けてやるから場所を言え。」
『え?まだ私何も…』
(げ。別口かよ!まずいな。しかも声からして小さな女の子?
―――――絶対めんどい依頼だこれ!!)
「いや、間違え……」
『では、大映ホテルのほうに来てください!何階かはわかりませんが、中にいるので!!』
それだけ言うと一方的に電話は切れた。
「――――絶対面倒な依頼じゃねーか!!」
絶叫する。
小さな女の子、すぐ切れる電話、怪しいうわさが多いホテル、極めつけの何階かはわからない発言。数え役満だ。
「間違いねぇ。誘拐だ。SOS依頼だ。だーーーー!!ふざけんじゃねぇ!!何でこんな依頼を……
―――キャンセルは……できるかコンチクショーー!!」
間違いなく、見て見ぬ振りができるような案件ではない。
「まきこまれた?いや、違うな。自分から勘違いして首突っ込んじまった感じだな…最悪だ…」
ぶつくさ言いながらも外に出る準備をする。ジーパン、Tシャツの上から薄手のジャケットを羽織り、準備完了。
「―――大体あいつのせいだよな。」
番号通知をオフにして携帯で友人にかける。
『はい?どちら様で?』
「死ね」
『はぁぁぁぁぁぁ!?なに?だれ?なんで俺女の子にそんなこと?!』
声を変えて喋ったために女子だと思われたらしい。好都合だ。あとは、しばらく無言電話だ。
『もしもーし。もしもーし!!?なにこれ?なんなの!?ってうぉぉぉ!!頭の上をナイフがぁぁぁぁ!助けてくれ―――』
―――――あっちから電話が切れた。どうやら友人の依頼も重要案件だったらしい。
(――――悪いことしたか?早く終わったら助けてやるか。)
ドアにカギをかけ、出発する。
少年の名は蒼真。この街では『神速』の二つ名で呼ばれる依頼屋である。
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