本宮ほんみやに参加するかどうかは、君が自分で判断すれば良い。僕がどう対処するかは、別の問題だからね」


 グラスを手にしたまま考え込んでしまう。

 ふと、窓の外を何かが横切ったように見えた。

 それに……聞えるのはかえるの鳴き声?


「付いて来ちゃったかな。様子を見てくるよ」

「ちょっと、待ってよう!」


 ことも無げに言い置き、外に出ようとする宗也さんの服をつかんで引き止める。あんな話を聞かされたあとだからというのもあるが、正直彼が心配だったからだ。どれだけ自信があるのか知らないが、元特殊部隊グリーンベレー所属にも、無敵のコックにも見えない。


「いいかい、そこの奥のドアを進むと、地下の通路で別棟の倉庫に繋がっている。鍵は中からなら開けられる。様子を見て外に出るんだ。明かりは点けずにだよ」

「この子はどうするの?」

「キィのことは頼む。心配ない。半分は僕の用事だけれど、に来たがったのは彼女自身だからね。僕と合流できなかったら、この子を橋まで連れてきてくれ」


 出たらすぐに鍵をかけるんだ。そう言い残して宗也さんは外に出た。

 言われた通りドアに鍵をかけ、キィの元へ戻る。

 キィは不安の欠片も感じていない様子で、唇でグラスを弄んでいる。抱きあげ膝にせると、わたしの不安も和らいだ。


 建物の周囲を何かがまわっている気配がする。宗也さんだろうか。

 不意に照明が落ちた。緑色の非常口の誘導灯だけが、ぼんやりと辺りを照らしている。

 

 驚きでしばらくのあいだ、身動き一つできずに固まっていたが、キィを抱いたままそろそろと奥のドアへ向かう。良くないことが起こっているのは確かだ。

 守るべき存在がいるという使命感が無ければ、わたし一人部屋の隅で、膝を抱えて震えているほかなかっただろう。


 注意深く薄暗がりに目を走らせていると、展示品の一つがやけに気にかかった。

 磨かれた緑色の石。古い護符ごふか何かだろうか。中心に燃える目を持つ歪んだ五芒星ごぼうせいが刻まれている。非常灯の灯りに照らされ、五芒星が揺らめいて見えた。


石を持って行く。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884676877/episodes/1177354054884684651

石には触らない。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884676877/episodes/1177354054884684182

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