あんまり怖くない話

たん

メリーさん



『もしもし、わたしメリーさん。今、あなたの最寄りの駅前にいるわ』

「……はぁ。そうですか」


 いつも通りの定時帰宅。妻の出してくれた晩飯を食べて、子供もいないので早速缶ビールで一杯やっていた矢先。さきいかを口に運んだ瞬間に掛かってきた電話だった。


「えーっと……メリーさんでしたっけ?あの怖い話で有名な…」

『えっ……ま、まぁそうね。わたしはメリーさんよ』

「あーやっぱり……そんなメリーさんが何故に家へ?」

『え、いや………特に理由はないけど』

「…あ、そうですか。まぁそれなら良いんですけど。で、何時ごろにこちらに来られます?」

『22:00過ぎかしら……初めての土地だから迷うかもしれないし』

「あ、じゃあ近くのバス停まで迎えに行きますよ。古和杉流こわすぎるっていうバス停で降りてください。クソ田舎だからバスも一本しか無いんで」

『あ、ありがとう……』

「じゃあ到着したらまたご連絡ください。お待ちしてます」


 電話を切ったら、待っていてくれたのか、妻が「誰だったの?」と訊ねてきた。


「かなり親しげだったけど…友達?」

「いや、メリーさんだ」

「メリーさんって………あのメリーさん?」

「そうだよ。今から来るんだって」

「あらそうなの。じゃあ何か……お茶請けくらい用意しておかないとね」

「確かにな。じゃ、頼むよ」


 数十分後、不思議な表情で家にやって来たメリーさんは「今夜の宿が無い」とのことだったので泊めてあげた。翌日は一緒に朝ごはん食べて、LINE交換して帰っていった。


「……あ、見て。メリーさん、向かいの近藤さん家に入ったみたい。写メ送られてきた」

「すごい怖がってるわ……。良い子なのに」

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