さ迷う魂

『……まったく迷惑な。』

『神聖な城をなんと思っているんだ。』

ぼんやりと見える景色

真ん中にある赤い石だけハッキリと見える…………

姿が見えないなにかが話している


「アリサ?」

窓ぎわで膝を抱えていた女性が顔をあげる。

彼女の口から言葉はでてこない

窓からは緑の光が注いでいる

「顔いろ悪いぞ。横になったほうがいい。」

男性が優しく彼女を抱き上げる

その温もりを感じながら

彼女の意識は遠いとこにいる


『とにかく闇の扉をとじなくてわ…………我々の世界だけじゃなくあちらも滅びる。』

『あのバカ王子でもあれを動かすのは無理だ。何者かがあれをうごかした…………』

『ラピスはおいていこう……』

『でわ私は例の空間に行ってみよう。』

景色が目に写る……

そこは美しい光がみちる部屋だった

壁には見事な龍の彫刻

『清き姫よ、戻るがよい。我々のことは時期にそなたも知ることになる。ラピスがお前を気にいったようだ加護をしてくれるだろう。恐れてはいけない己の闇を……

のまれてはいけない己の中の暗黒のうずに

清き姫よ素直に素直に生きるのだ

清い心は気の石になり闇を打ち砕くだろう

さあお帰り。』

彫刻の龍が動いた

銀色のたてがみがゆれる

美しい紫の瞳に吸い込まれるように彼女の意思は帰って行く

辛く苦しかった世界へ


「アリサの具合はどうだ?」

男性、樹里が部屋からでると黒髪を一本に縛った男性が声をかける。

「まだしゃべらない、だいぶ顔いろは良くなった。」

樹里はそれだけ伝え廊下を歩き突き当たりの温室に向う。

アリサは現実と夢のはざまをさ迷っている。

魔物に操られ体も心も傷つき彼女は生きる希望を失なっている。


男性はアリサの部屋に入る。

ベッドで眠る姿はかつて愛した女性によくにている。

彼の名前は有佐冬馬、アリサの実の父親だ。

「また来たの?どうせまた女の所に行くんでしょ。」

湯気のたつ洗面器を持って入ってきた少女がの言葉に冬馬は苦笑する。

少女も冬馬の娘だ。

「もう辞めたよ女遊びはと言っても信じて貰えないか。」

アリサの母も少女、瑠璃の母もかつては女優だった。

彼女の母達は今は冬馬にはわからない人になっている。

アリサの母はアリサに水商売させ遊び歩きあげく男のもとに消えたという。

瑠璃の母はなにをしているかわからない。

「私は貴方を父親と認めない。アリサだってそうよ。出て行ってもうこないで。」

静かな声だが怒っているのはわかる。

冬馬はドアから出た。

「よく娘の前に顔をだせるものだ。まだ親の愛が必要な時に見捨てたのだろ?」

銀髪の男性に言われ冬馬は返す言葉はなかった。

「お前こそ魔物にふさわしい。どうやって入ったかは知らないが二度とここの敷地をまたぐな。私は温和だが他はそうはいかないぞ。お前をみたら精神を壊し苦痛を与えるだろう。」

それだけの罪を犯したということだろう。

重い扉を開き冬馬は夜のやみに消えていった。

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