彼女の正体

 私は魔法少女レルク。魔法王国スレグナからこの人間界にやってきた。

 何者かわからない女――もとい黄金と出会ってから、一週間が過ぎた。

「蟋蟀お兄ちゃん!」

 私は床に座り込んでいる蟋蟀お兄ちゃんの胸に飛び込んだ。あったかくて気持ちいい。とろけちゃいそう。

「レルク」

 ギュッと抱きしめてくれた。頭を撫でてくれた。体内で構成された照れくさい気持ちが、体外へ放出されて体温を上昇させた。

「スベスベしてるな。レルクの肌」

 蟋蟀お兄ちゃんは私の肌を優しく撫でてくれた。おでこにキスをしてくれた。

「いつも、そんなことしてるのかい?」

 黄金が呆れた表情でつぶやく。

「まあな。で、何でお前がここにいるんだ?」

 蟋蟀お兄ちゃんが目線を黄金にやりながら、言った。

「ああ、それはだね。散歩してたら、偶然にもレルクにあってね。家に連れて行ってとお願いしたんだ。ワタシの正体を教えることを条件にね」

「ほう~正体か」

 私は、黄金に歩みよる。

「教えて。あんたの正体」

「うん。ワタシは、魔法使いと人間の間に生まれた子どもだ」

 驚くことを口にした。

「すごいね。それは」

「すごくないさ。魔法は一切使えないし。魔力を持ってるくせにね」

「え? 魔法が使えない?」

「そう。魔法は使えないから、魔法使いとはいい難いし、魔力を持ってるから、人間ともいえない中途半端な存在なんだ」

 悲しそうに言う黄金。

「……魔法が使えないから? 魔力を持ってるから? それがなんだって言うの。生まれてきたからには、何か意味があるの。決して中途半端な存在なんかじゃない! え、えっとだから、そんな悲しそうな表情しないで」

 私は、必死な表情で黄金を見つめる。

「ありがとう。君は、いい子だね」

 そう言って、黄金は頭を撫でてくる。顔が赤くなった。

「あの」

「何だい?」

 優しげな表情を浮かべる。

「私のお姉ちゃんになってください」

「え?」

 ぽかんとした表情を浮かべる。

「そいつはいいな」

 蟋蟀お兄ちゃんは笑いながら言った。

「俺たち三人で暮らそう。黄金」

「……うん」

「よろしくね。黄金お姉ちゃん」


 ☆☆


 半年が過ぎた。私たちは黄金お姉ちゃんの家で暮らしている。蟋蟀お兄ちゃんの家は売却した。

 地下室にきている。蟋蟀お兄ちゃんと黄金お姉ちゃんの二回目の戦いだ。

「黄金。本気で来いよ。俺も本気で行くから」

「もちろんだ。今回は魔力を存分に使わせてもらうよ。武器に付加してね」

 二人は、見つめ合って同時に飛び出した。

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魔法少女レルク 神通百力 @zintsuhyakuriki

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