第2話 牛若と言う少女
電波娘、改め自称牛若と言う娘は、日の出とともに出ていくどころか、俺が朝飯を作っているときに、腹をボリボリ掻きつつ、あくびをしながら――
「ふぁ~~あ。あー主殿、朝はクロワッサンとサラダ後は牛乳でお願いします」
などと、愉快なことをのたまってきた。
「あっはっはっは、てめぇ、マジで何様のつもりですかこの野郎」
「はっはっは、もちろん某は主殿の忠実な守り手にて、この地球の防衛者ですよ?あとフルーツも忘れずにつけてくださいね」
壱 奴につかみかかる
弐 ベッドまで投げ飛ばされる(しかも足払いだけで飛ばされた)
参 体を起こすと、俺が作った朝食をちゃぶ台に並べ合掌していた
「はー、味はギリギリですが、いかにも男料理と言った感じの雑な料理ですねぇ。某は人間が出来ているので文句は言いませんが、とても文明人の朝食とは思えませんね、控えめに言って豚の餌?」
などと言いながら、パクパク俺の飯を平らげていく。
壱 奴につかみかかる 以下略
「はーはー、この野郎」
「はー、全く何をバタバタと食事中ですよ静かにしてください」
「それは、俺の、飯だ!」
何度か仕掛けたが、奴は姿勢を崩さず、箸を使って俺を投げ続けた。塚原卜伝か宮本武蔵かこいつは。
「まったく、それに某の名前は牛若と言ったでしょう。野郎野郎とレディーに対する礼儀がなって無さすぎます。酷いを通り越して無残なレベルです」
「やかましい、この傍若無人自己中心女、お前なんか野郎で十分だ!」
「はー、まったく朝から元気なことで。あーところで主殿、主殿は学生なのですよね」
「あ?それがどうしたよ」
「学校は何時から始まるのですか?」
「あ゛」
てめぇ覚えてろよ、後で絶対泣かしてやるからな!と由緒正しい負け台詞を言いつつ大学へと走る。今日の1限目はスパルタンな必修科目だ、代返なんぞ出来ないし、苦手な分野なので押さえておきたい。それにしても昨日からずっと肉体的にも精神的にも走りっぱなしな様な気がする。安らぎがほしい。
「おう、真一。お前がギリギリなんて珍しいな」
「ああ、ちょっと、寝坊、してな」
脇腹を抑えつつ、馴染みの奴らと軽口を交わしながら席に着く。ああそう言えばカバンの中は昨日のままだから、今日は1日教科書無しだ。などと、ひと時日常の空気を吸っていたら冷静になってきた。
なぜ、俺は、あんな、危険物を、部屋に、置いて、来たのだ。
ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ、脂汗がダラダラ出てくる。いや考えろ、貧乏学生のボロアパートだ、金目のものは預金通帳と、しいて言えばパソコン位だ。それに奴が盗みを働こうとしたらチャンスなんか幾らでもあった。奴は超ド級の危険物だが、そっち目的で来たのとは違う気がする。だが、ヤバイのには変わりがない。よし帰ろう!と思い勢いよく立ち上がったのと教授が入出してきたのは同時だった。
「んっ?どうした佐藤、講義を始めるぞ?」
「あ…いやちょっとトイレに」
「まったく、そういうことは講義が始まる前にすましておけ、社会ではそんなことは通用しないぞ」
「あはははは、いや急に腹が痛くなって……」
「むぅ、確かに顔色が悪いな、出欠は待ってやるからとっとと行ってこい」
「あはははは、ありがとうございます」
とっさにそんな言い訳をしてしまった俺は、一路便所へと向かった。このまま早退するのも有りと言えば有だが、気が抜けた俺は大人しく一限を受けた後で、今日は帰ると連れに伝え自宅へと戻った。
「で…………お前は何がしたいんだ」
「あーー今忙しいんで後にしてください主殿」
ダッシュで戻ると言うのも何か違うような気もするが、のんびり歩いて帰る気分でもない。なんだかモヤモヤした気分を抱えつつ、少し早足で帰った俺を待っていたのは、ゲームに勤しむ牛若だった。
安心したような、呆れたような、どっちつかずの気分で牛若のプレイをぼーっと眺める。モニターの中では戦車が弾を打ちあっている。実況プレイで見たことあるなーなどと考えてると、自軍は牛若以外全滅したようで、玉砕覚悟の特攻の末、見事に爆散していた。
「あーもう!初手レミングスで左陣をがら空きにしといてながら速攻で溶けるなんてやってられっかってなもんですよ!!」
「おうそうか、大変だな」
「まったくです、兵法のひの字も――っと主殿お早いお帰りですね」
「…………」
「…………」
「待て待て待て、何もう一戦しようとしてるんだ」
「えっ?何と言われても、ロードが終わったからですけど」
俺が呆れ眼でぼーっと眺めていたら、牛若は『なんだこいつ』みたいな顔でちらっと俺を見た後、モニターに視線を戻しゲームの続きをやろうとしだした。
「はぁー、まったく本分である学業をおろそかにしてまでやることと言えば、某の項を覗くこととは、全く主殿はどうしょうもない助平でございますなぁ」
うん、よし、大丈夫。大学まで往復してきたおかげか、こいつの言動にもだいぶ慣れてきた。
「あーはいはい。それでお前はずっとゲームしてたのか?」
「ええまぁ、粗方家探しして暇になったので」
そう言ってちらりと、俺の机に視線を向ける。
「――まぁ特に面白くもない性癖なのですね主殿は」
「…………」
まぁいい、そういうこともあるだろう。
「コホン、それで正義の味方の牛若さんよ、お前さんは化け物退治とやらに行かないのか?」
俺がそういうと、奴は花が咲くような笑顔を見せる。
「ええそうですそうです主殿、某は正義の味方の牛若です。正義の味方の牛若はもちろん悪鬼羅刹や魑魅魍魎を見逃したりはしませんとも♪」
そう言って上機嫌で返事を返してくる。どうやら俺が牛若と呼んだことに喜びを感じているらしい。そう言えば牛若の事を名前で呼んだのはこれが初めてだった。
牛若は犬が尻尾を振る様にパタパタと左に垂らしたサイドテールをリズムよく揺らしつつゲームを再開した。
その様子を眺めていると、あれこれ考えてざわついていた心が落ち着いて来る。問答無用で懐に踏み込み、傍若無人に振る舞われていると言うのに、不思議と許してしまいそうな気持になってくる。
何だろう、アニマルセラピー的な何かだろうか。しかしセラピードッグに求められる必要条件は躾が出来ているかだ、可愛いだけでは務まらない。ちょっと世間の厳しさを教えてやろうと、対戦ゲームを選びに行った。
牛若が押しかけて来て一週間。こいつがやっている事と言えば、部屋にこもってゲーム、ネット、漫画三昧のニート生活を満喫しているだけだった。もちろん家事なんか一切しない。
それどころか、着の身着のままだったこいつの為に衣類一式も買い揃えてやった。このレシートは何処にもっていけばいいのだろう。傍若無人と言うより残酷非道だった。
「おい、家出娘。お前はいつになったら家に帰るんだ」
「はい?家出娘ってだれのことです?」
「お前のことだよ、お、ま、え。いい加減にしないと警察に通報するぞ」
「警察?ああこの国の警邏でしたね、けどそれをして被害をこうむるのは主殿では?」
あぁそうか、やっぱり委細承知の上での居座りか。確かにここまで引き延ばしたのは俺のミスだ。だがもう覚悟は決めた、未成年者略取誘拐とか何とかでヤバいことになるかもしれんが、自主したら少しは減刑借料のお沙汰が頂けるかもしれない。
そんな事を考えながら牛若の目をずっと見ていると、奴は観念したのかため息を一つ。
「はぁーーー、全く主殿の分からず屋にも困ったものです」
「おうおう、何とでも呼べ。俺はもう覚悟決めたぞ」
「じゃあ某も一つカードを切りますか」
「ん?」
牛若はそう言うとモニターに向き直り、ゲームを再開しだした。
「主殿、少しこちらに」
牛若はそう言って、自分の隣に来るように手招きしてくる。警戒しながら牛若に近づくと、牛若は俺の手を握りながらこう言った。
「一石二鳥の手段です。私の存在証明と生活費の捻出をおこないましょうか」
「は?」
牛若が何かのスイッチを入れた。瞬間、世界が万華鏡に包まれる、いや世界と言うか俺の視界が極彩色に彩られ目まぐるしく姿を変えるものしか映さない。手足の感覚どころか上下すらわからない。
『主殿ー、某の手をしっかり握っててくださいねー』
どこからか、牛若の声が聞こえる、いや耳に届くと言うよりは脳に直接響いて来るような不思議な感覚。しかし俺がはっきりと自覚できるのは極彩色に染まった視覚だけ。
『だいじょーぶですよー、ちゃんと五体はぶじなんで、しっかり左手に意識を集中してくださーい』
何も分からない、とにかく牛若の声を信じるしかない。目を瞑って集中する、しかし閉じた筈の瞼なぞお構いなしに万華鏡の光は網膜を焼く。
『はー、しょうがありませんねー』
何か温かいものに包まれる……様な気がする。視界は相変わらずだが、少し力が抜ける、いや正確には緊張がほぐれていく事を認識できる。そこから先は早かった、自分の呼吸が認識でき、瞼を閉じることができ、体の輪郭が把握できた。
相変わらず瞼を開ければ万華鏡の中だし、上下の感覚も分からないが、その分からない空間に俺が存在していることは自覚が出来る。
「到着しますよー」
今度の牛若の声は、はっきりと俺の鼓膜を振るわせているのが認識できた――
「がはっ!」
頬に伝わる硬い感触、頭の中はまだぐるんぐるん回ってて酷い酩酊状態。上下は分からず自分の姿勢も分からない。だが土の匂いと草木の香りは感じ取れる。そしてどこからか聞こえる間の抜けたファンファーレも…………ファンファーレ?
「ほら、主殿いつまで寝てるんですか、とっとお立ちください」
牛若に手を引っ張られ、ふらつきながらも立ち上がった俺が目にしたのは、もちろん牛若だった。だったのだが……ぼやけた焦点がはっきりすると、ふざけた格好をした牛若が目に入った。
ついさっき、俺の部屋にいた時はジャージ姿だった牛若は、いつの間にやら日本式の甲冑を着込んでいた。いやまぁ細部を見れば色々ととげとげしてておかしな所が山盛りだが、その筆頭は牛若の背中に担がれた刀だ、いやこれを日本刀と言っていいのだろうか、身の丈を優に超えるそれは野太刀に分類されるだろうが、肩ごしに見える柄の部分をとってもやけにファンタジーな意匠がなされている。
「えーっと、何その恰好、と言うかここ何処?」
「平原ステージですね、初心者向けのステージです」
「平原ステージ?」
「ええ、次元跳躍のちょっとした応用でモンハンのステージを再現してみました」
「モンハン?」
「はい、そうですが?」
「モンハンの中に入った?」
「んー、大分違うのですが、その程度の理解でも大丈夫ですよ」
成るほど、そのアバンギャルドな甲冑一式もそう考えれば納得できる。そして俺の恰好はと言うと……部屋着にしているジャージのままだった。
「あー、主殿はどうせ足手まといになるし、面倒くさいので弄ってませんよ」
「はぁ」
「まぁこれで、私が異世界からやってきたことの証明と生活費の捻出、同時に行えますね!」
牛若はそう言うと、背中の野太刀を一息に抜き放ち天に掲げる。
「はっ?えっ?なにこれどういう事???」
「ですから、主殿は拙者の活躍を遠くから眺めていてください。3乙しても、多分現実世界で死ぬことは無いと思いますが、死ぬほど痛いのは確実ですよ」
牛若はそう言って今日一番の笑顔を見せた。
「ふざけんなてめぇ!何が何だかさっぱり分かんねぇよ!」
「あっはっはー、百考は一行に如かずですよ主殿、それでは牛若出陣いたします!」
牛若はそう言い放つとまさに風の様に駆け抜けていった。奴の言葉を信じるならこの場所はベースキャンプのはずだ、此処にいれば安全なのだが……。
「これでいいか」
アイテムボックスに入っていた羊皮紙の地図を足に巻き付けツタで縛って靴の代わりにする。不格好だが、裸足よりは100倍ましだ。
「しかし、モンハンを再現した世界?」
最近はすっかりご無沙汰だが、一時期はそこそこプレイしていたゲームだ、この風景には見覚えがある。確かに平原ステージに相違ない。だが、足に感じる大地の感覚、風に乗って漂う爽やかな草原の匂いは現実のものと相違ない。となると、空を舞う翼竜らしきものと遠くに見える大型の草食獣も現実なのだろうか。
CGとは違う、複雑で色鮮やかな風景、VRでは再現できない匂いと肌触りに包まれ我を忘れて豊かな自然の中に独り佇む。
「すげぇな」
そんなありふれた感想しか思い浮かばず、我を忘れて風景を眺めていた。そう忘れていた、ここが草原ステージなら出現するある敵を。
「ずぁッ!!!」
背中に走る激痛に膝をつく、痛すぎて歯を食いしばることしか出来ない。気が付くと周囲を虫の羽音に取り囲まれていた。
くっそヤバイ、油断した、超痛い、歯を食いしばって、手当たり次第に石だのなんだの辺りにあるモノを投げつける。子供が駄々をこねるように地面を転がりながら手足を振り回す。武器が、武器がほしい、30㎝レベルの昆虫が飛びながら襲ってくるなぞ恐怖しかない。
「あったッ!」
奇襲を受けた際にポケットから転がり落ちた回復薬を掴む。毒が回ってきたのか左手の感覚が鈍い。突っ込んでくる虫の一撃を瓶の底で受け止める。とっさの事だったが運よく瓶は砕ける事無く一撃を弾き飛ばした。
「阿ッ!」
気合を入れなおす、勿論少林寺拳法は引くほどデカイ虫を想定した護身術ではないが、いつも通りの動作をすることで、少しは心を落ち着かせることが出来る。
素早く周囲を見回す、混乱した頭じゃ無限にいると思ったが、冷静になると俺を囲んでるのは5匹だけ、となるとまず第一手は――――逃げる!
囲みを前回り受け身で潜り抜け崖まで全力でダッシュする、後ろから羽音が響いて来るが――チャンスだ!奴らは動きが遅い、痛みにひくつく背中を抱えても走れば引き離せる。
崖を背にして奴らを待ち構える。視線は外さず稼いだ時間で回復薬を飲む、色の割には無味無臭でかえって不安になったが効果は覿面だった。麻酔薬でも投与したように傷みは一瞬でなくなったが感覚はしっかりとある、ゲームならではの都合のいい薬だ。
「あーーー疲れた」
牙は鋭く針はデカイが、落ち着いて対処できれば相手はデカくて遅い的だ。先ほどの回復薬のおかげで、ここがゲームの世界だと言うことを実感できた故の余裕もあって、落ち着いて対処できた。
もっとも相手にできるのは防御力の無いこの雑魚エネミーが精いっぱいだ。これ以上のランクが相手だと余裕で死ねる。ハンターさんはやっぱり超人なんだなぁと思いつつ、警戒しつつも、動き回る余裕が無いのでその場で待機する。
そう言えばあのバカはどこに行ったのやら、と思っていると上空が騒がしい。上を見上げる2~30mはある崖だ、もしかするとあそこで暴れているのかもしれない。
と、何かがそこから飛び出してきた。始めは唯の黒い点だったものがドンドン大きくなって―――
「やべぇッ!!!」
全力で横にダッシュ――――!
ドカンと地面が大きく揺れるほどの衝撃音とともに、なにかデカイものが地面に激突する。辛うじて直撃は避けるもその衝撃波で吹き飛ばされる。
「あはははははははーー」
続いて上空より響いて来る、聞き覚えのある馬鹿笑い。
「ばっ!何考えてんだあのバカ!」
投身自殺の現場目撃となるかと思いきや、爆発音が鳴り響き牛若の眼前で衝撃波が発生し、地面にめり込む巨躯が爆ぜる。
何をしたかは分からない、けど何が起きたかは視認できた。
牛若が音もなく地面に降り立つと同時に、どこからから間抜けなファンファーレが鳴り響いた。
「はっはっはー、随分遅いと思ったら主殿はこのような所で風流を嗜んでおられたのですね」
「うるせぇ!普通の人間に無茶いってんじゃねぇ!ついてきてほしかったら俺のステータスもハンターさんレベルに弄ってからにしろ!」
「んー、そのような面倒なことは疲れるのでごめんですなぁ」
「ふっざけんな、てめぇはチートプレイでご満悦かもしれねぇが、俺は十把一絡げの雑魚エネミー相手でも命がけだったよ!」
「んっ?某、具足は用意しましたが、素のステータスは弄っていませんよ、面倒ですから」
「はっ?」
「まぁ普段着でもこの程度の相手なら何とかなりますが、折角ですのでゲームの方で使っていた具足をそのままコピーしてきただけですよ」
「え゛?」
マジか?マジで言っているのか?範馬さん家の息子さんでも2~30mの高さは5点着地でしのげるものじゃねぇぞ。しかも甲冑着込んであの動きって……。
「あーっと刈り取りタイム終了ですね。戻りますので、また某の手を握ってください」
パチンと指を鳴らすと牛若は何時ものジャージ姿に戻り、俺の手を握ってきた。あれ?こいつ本気になれば爪楊枝より軽く俺の手をへし折れるんじゃないの?
「どうしたのですか主殿、次元跳躍ではぐれてしまったら多少面倒なことになるのでしっかりと某の手をお握りください」
「えっ?帰りもまたあの万華鏡の中通るの?」
「無論そうですが?」
俺は全力で牛若の手を握り返した。
「ぐおぉぉぉぉぉ」
慣れない、2度目だから多少は何とかなるかと思ったが。結果は大して変わらなかった。無論、心構えが出来ていた分動揺は多少抑えられたが、自分の存在が宙に溶けた感覚と極彩色で上下左右が不明な空間を潜り抜けた俺は、床に突っ伏したまま頭痛と吐き気と戦っていた。
「ふーむ、まぁこんな所でしょうか」
「な、にが、だ……」
幾分回復した俺は力を振り絞り体を起こす。するとちゃぶ台の上に今まで見たことのないものが並べられていた。
「なに?これ?」
「ふっふーん、今回の戦利品ですよ主殿」
ドヤ顔をする牛若の目の前にあるのは、黄金色と銀色に輝く岩石の塊、そして血がべっとりと付いた虹色に輝く玉、そして立派な角らしきものがちゃぶ台一杯に並べられていた。
「どうです主殿、これが金の原石に似た何か、こっちが銀の原石に似た何か、この玉が竜玉っぽい何か、そして最後は竜の角っぽい何かです。これらを質に入れれば暫くは遊んで暮らせると言うものです!」
「…………何かってなに?」
「さぁ?元にしたゲームのデータでは単に原石としか設定がなされていませんからねぇ。まぁ質屋の目を誤魔化す程度はしてくれるんじゃないですか?」
「馬鹿野郎!通るか!そんなもん!!」
牛若に尋問した結果分かった事は以下の通りだ。
第一に次元跳躍で異世界へ持ち込めるモノには厳格な規制がなされている。牛若が身に着けている端末等を除き、基本的に現地に存在する物質と同レベルのモノしか持ち込めない。これはまぁ地球でも同じことだ、危ない薬や危険物の持ち込みは法に触れるし、貴重な動物や生態系を乱す恐れのある動植物も監視対象だ。
第二に今回行ったようなVRを100万倍高度にしたような世界では、上辺だけのガラクタしか作れない。例えば回復薬を持ち帰ったとしても現実世界では唯の色付きの水にしかならないし、本物の金が採取できるほどの作り込みをするなら、同量の金を買う1000倍はコストがかかる。
だが、例え1000倍のコストが掛かろうと回復薬の様な超常のモノを作ればつり合いがとれるかもしれないが、その場合第一の条件に引っかかるので犯罪となる。
第三に腕相撲を申し込んだらてんで相手にならなかった。
結論としては、牛若の与太話は本物で、少なくとも人外の力を持つ異世界人だと言うこと。そして真っ当な手段で生活費の捻出をする能力もしくはやる気はないことだ。
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