40話 約束

 約束を覚えているだろうか。




「……服を脱ぐ必要、ありますか?」




 イケメン君を介抱した後、取り巻き達に連れていかれるイケメン君を見送り、俺はギャルとお嬢様と一緒に食事を始めた。 レバーのスープはもちろん、蜂蜜を塗ったサゴパンは絶品だ。


 イケメン君のことでお嬢様から凄く感謝されたが、別に対したことはしていない。 イケメンが軟弱過ぎるのだ。 少し目を光らせておく必要があるだろう。




「あるとも。 むしろ必須だぞ?」




「……」




 森からの帰り道、良い物を見つけた。


野生の生姜だ。 スープのアクセントに最適で、体もポカポカしてくる。


 ワサビでも見つけられればいいなと思っていたのだが、嬉しい誤算だった。


おっさんは生姜が大好きである。 豚の生姜焼きなんて最高だよね。


 醤油さえあればなぁ……。




「ココナッツオイルも使うから、脱いだほうがいい。 安心しろ、変なことはしない。 ギャルにもやっているが、文句を言われたことはないぞ?」




「うーん……ですが……」




 なんだろう、恥ずかしいのかな?


もう裸を見た仲じゃないか。 まぁただの事故だが。


 森に行く前に約束したマッサージ。 おっさんは一ミリも忘れることなく、食後に紳士な顔でいたって冷静に切り出した。




『さぁ。 マッサージを始めようか。 まずはその服を脱ぎなさい……!』




 二人から浴びせられた視線が少し痛かったような気がした。




「水着なら平気じゃない?」




 ギャルの価値観。 水着なら平気。 面積は一緒なのにね!




「水着は持ってないです……」




「そっかぁ、じゃ私のつか……、えないよね……」




 ギャルもかなりのモノをお持ちだが、お嬢様とでは戦力差は明らか。


俯いたギャルは食後のデザートにイチジクを齧り始めた。




「下着でも問題あるまい」




「いえっ、大問題ですよ!?」




 むぅ。 ガードが堅いなぁ。 ギャルを見習ってほしい、こんな怪しいおっさんの寝床にホイホイついて来ちゃうんだぞ? ユルユルだよ。




「大丈夫だよ、おっさんは襲ったりしないし。 ……だよね?」




「当たり前だ」




 無理矢理は俺の趣味ではない。 


大人の歓楽街でもやる気の無い美人より、やる気のあるノリの良い普通の子のほうが好きだ。




「……分かりました。 お願いします」




 こちらこそ、やらしくお願いします!


くく、どうやらここで断ればギャルに悪いとでも思ったのかな。 友達を信用できないのか? みたいな。 それは危険な考えである。




「よし。 じゃあさっそく、始めようか!」




 俺はお嬢様が不安にならないように、努めて明るい笑顔で接する。


楽しいマッサージの時間の始まりである。 そこには未知が待っている。


 俺の経験でもこれほどの大物は初めてだ!






◇◆◇






 やはり白だった。




「おぉ……!」




「っ……!」




 思わず感嘆の声が漏れる。


白地に水色の刺繍のような花柄の細工の入った下着。


 黒髪のお嬢様にはとても良く似合っている。 意表をついて黒とか赤とかで来るかと思ったのだが。 ここは王道で来たようだ。




「相変わらず、凄いねぇ」




 日本人離れした双丘にくびれたウエスト。 白く透き通った肌に外国人モデルのような体形は長い黒髪と合わさり神秘的な魅力を醸し出している。




 俺たちの寝床の周りには風除け兼覗き防止の壁を作ってある。


まぁ捲れば見えてしまうような物だが。




「じゃあうつ伏せに寝て」




 木製のベットが軋む。 寝心地は改善したが、強度はもっと上げるべきだな。




「!」




 お嬢様は手を前で交差するようにベットに寝そべった。


横から見える光景――その豊満な胸の作る柔らかな曲線、くびれた腰から更にお尻へと連なる稜線。 思わず見とれてしまうほどに美しい。




「おっさん、見すぎ……!」




「……早くしてください!」




「お、おう」




 少しくらい見惚れてもいいじゃないか。


俺は残り少なくなってきた、ココナッツオイルを手に取り、少量の蜂蜜を混ぜる。  


 まさに自然由来。 甘い匂いがする気がする。




「んっ……!」




 手をこすり合わせ人肌の暖かさにしたら、まずは足から。


お嬢様から蜂蜜よりも甘い声が漏れる。 構わずに俺は足の指先の間まで塗りたくる。


 足先から心臓に向かうように、俺はお嬢様の白くて細い脚をマッサージしていく。


押せば跳ね返すような弾力、ゆっくりと柔らかさを堪能しつつ太ももを越えお尻に至る。




「うっ、んっ……あくんっ……」




 ゆっくりと。


太ももとお尻の間に指を滑らせる。 俺の太い指がお嬢様の柔らかな尻肉を押し上げる。


 


(パンツが邪魔だなぁ……)




 お嬢様のお尻を守る白のショーツ。


臀部をマッサージすると気持ちいいのだが、オイルで濡らすわけにもいかない。




(どうすればいい?)




 ギャルの時は水着だったから問題なかった。


上にいたってはホックを外してたしね。


 困った俺はギャルを見つめる。




「え?」




 小首を傾げるギャル。 俺はギャルに首と顔の表情を使ってジェスチャーをする。


その間もお嬢様のマッサージは続いていく。




「こう?」




「ええ!? な、なにっっ!?」




 Tバックが出来上がった。


ギャルはお嬢様のショーツを上に持ち上げたのだ。


 キュッと。 びっくりしたお嬢様はお尻に力が入る。




「なるほど。 素晴らしい!」




 これなら下着を汚さず、臀部のマッサージを行える。




「もう少し上げてくれるか?」




「はーい」




「やっ、ダメっ!」




 隙間に喰い込む白のショーツ。


露わになったプリ肉を優しくマッサージする。


 太ももの厚みのある肉と違い、揺れるプニプニした柔らかい尻肉。




「んん゛っ〜〜!!」




 俺はマッサージを続ける。


声を我慢するお嬢様。 俺の額には汗が浮かび、ほど良い疲労感が腕に来る。


 前戯は終わり、そろそろ上に行くとしよう。




(待ちかねたぞ……)




 ブラのホックをギャルに外してもらう。 髪は邪魔にならないようにしておく。


 うつ伏せなのに背中からはみ出る横乳。


どうやってアプローチしていこうか。 とりあえず、背中にオイルを塗りつつマッサージを続ける。 




「んっ……」




 やはり直接はダメだろう。


バレないように指先を当てていく。


触ってもあまり感じていない? 普通に揉んでいく。




「肩も凝ってるだろう? マッサージしてやるからな」




「あっ」




 肩をマッサージするため片腕を上げる。


通常ならばこれで頂きが見れるのだが、お嬢様の胸はベットについたままだった。


 しかし胸の形は男心をくすぐる、淫靡な形に変化した。




「よし、じゃ仰向けになってくれるか」




 いよいよ本番だ。


俺は酷くいい声でお嬢様にお願いをした。




「え、いや、いいです。 とても気持ちよかったです、山田さん。 ありがとうございます」




「え……」




 そんな馬鹿な……。


表と裏でマッサージだろう? 俺におっぱいを揉ませるんだ!!




「まて、待てっ、おっぱいも凝ってるから、絶対凝ってるからッッ!!」




 しまった。 つい本音訳の分らん事を。


マッサージしてたら本能が昂っていたようだ!




「おっさん……」




「やっぱり。それが目的ですか……」




 冷めた視線。


 二人の好感度がだだ下がりしていく。




「いやぁ、冗談だぞ? ははは、冗談に決まってるだろう。 ははははは」




 俺は笑いながらその場を後にする。


ほとぼりが冷めるまで上流の探索でもしてこよう。




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