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夏休みの部活帰り。剣道部での猛稽古を終えた颯太が偶然通りかかった溜め池で少年が溺れているのを見付けたのだ。正義感溢れる颯太は駆けつけて、すぐさま助けにかかった。
溜め池に躊躇無く飛び込んだ颯太。なんとか少年の元へと辿り着き、抱きかかえる。水で重くなった制服とパニックになって暴れる少年に苦しみながらも岸に辿り着いた。
荒い息を上げ、苦しむ颯太。部活で消耗した体力はこの救出劇でほとんど使い切ってしまった。それでも疲労感と引き替えに一つの命を救えた達成感を得られ、颯太は満足だった。だが、少年が言った。
「弟がいるんだ」
それを聞いて颯太は目を見開いた。振り向いて溜め池を見つめると、先程少年を助けた場所の近くに沈んでいく小さな人影が見えた。
颯太は体を引きづりながら、残った力を振り絞り、また飛び込んだ。必死になって少年を助けようと必死に泳ぐ。颯太が少年の近くに来た時には少年はもう息をしていなかった。颯太は潜り、なんとか少年を引き上げた。水を飲んで重くなった少年の体を腕がつりながらも岸に連れて行く。
少年を浅瀬へと上げた時、その兄が心配そうに近づいてなんとか弟を引きずり上げた。それとほぼ同時に近所の人が「大丈夫か?」と慌てて駆けつける。
それを見て颯太はほっとした。まだ溺れて間もないはずだ。今ならまだ助かる。
ほっとすると力が抜け、疲労が全身を襲った。体が鉛の様に重くなり、思考が分断された。
そしてそのまま颯太は浅瀬に顔から倒れ込んだ。そこで颯太の記憶は一度途切れた。
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