あたりまえのうしろがわ(仮)

ぽん

第一章

 これは、とても強い〝魔法の種〟だよ。

 世話をしなくても勝手にたくさんの実をつけて、毎年、何十倍の数にもなって返ってくる。

 だからかね、手をかけ、育てようようとする人は少ないけれど……

 ばぁさんは、この、しぶとく自由なひとつぶひとつぶが、愛おしい。


 みなが自分の居場所を見つけた時には、この種を土に返して育てなさい。

 そうして実ったものをひとつだけ、違う誰かに分け与えなさい。

 それを受け取り、水を与え慈しんでくれる誰かを、大切にしなさい。


 種を植えたら、戻ってきちゃあいけないよ。

 どれだけ辛くても、しんどくても、枯れちゃぁいけない。

 ちゃあんとその場所に根を張って、毎年たくさんの実を作るんだ。


 そうして、ここが無くなるその時に――

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