完璧美女、横山華恋の彼氏

ラムレーズン軍曹

完璧美女、横山華恋の彼氏

「華恋さん!ずっと前から好きでした!!」

「…ごめんなさい…」

 告白されている彼女の名前は横山 華恋。

 某有名大学に通う成績優秀、運動神経抜群でスタイル、顔、性格…すべてにおいて完璧な美女。

 1日に告白や声をかけられる回数は数え切れないほど。


「貴方の気持ちは嬉しいです。本当にありがとうございます。…っと、ごめんなさい。私、用事がありますのでこの辺で失礼します。」

 華恋は会釈をすると、帰りの道へと急いだ。


「大変っ、もうこんな時間っ!彼…怒ってないかしら……」

 そう、華恋には彼氏がいる。

 同棲をしている彼氏が。


「ただいまっ!遅くなってごめんね、トージくん!」

「おかえり、華恋ちゃん!寒かっただろ?早くこっちにおいで。」

 彼の名前は尾田 桃治。

 運動神経抜群、料理上手でとても優しい。華恋にとって自慢の彼氏だ。


「トージくん…寂しかったよ…」

 眉を下げ、桃治に抱きつく華恋。

「俺もだよ…華恋ちゃんがいない時間はとても長く感じた…。」

「…そうだ!あのねトージくん、今日は何の日か知ってる?」

 華恋は笑顔で桃治に問う。


「んー、なにかな?……あ。」

「ふふ、ジャジャーン!」

 華恋は嬉しそうに大きな紙袋からなにか取り出した。


「トージくん!ハッピーバースデー!!」

 そう、今日は桃治の誕生日。

 華恋は桃治のためにケーキを買ってきていたのだった。


「ありがとう!忙しかったからすっかり忘れてたよー。」

「私は忘れないよ?誕生日プレゼントもあるんだよ!」

「えっ、本当に?」

 華恋はカバンの中から平たく赤いリボンでデコレーションされた箱を出した。


「はいっ!開けてみて!」

「ありがとうっ!……わぁ!マフラー?」

「頑張って作ったんだー!」

 えへへと顔を赤らめて、嬉しそうに頬を人差し指でかく華恋。


「本当にありがとう。凄く嬉しいよ。」

「気に入ってもらえてよかった!」

 とその時、部屋のドアが開いた。


「あら、華恋。帰ってたの?」

「あっ、お母さん!ただいま!」

 華恋は母に近づく。


「今日の夕ご飯は豪華なのにしてよねっ!」

「えっ、なんで?」

「今日はトージくんの誕生日なんだもん!ね、トージくん!!」

 華恋は満面の笑みで振り向き、桃治に言った。


「すみません…居候の身なのに……」

 桃治は申し訳なさげに華恋の母に言った。


「…そうね、誕生日だからね。たくさんご馳走作るわ!」

「やったー!!」

「じゃあ、準備が出来たらまた声かけるわね。」

 そう言うと華恋の母は部屋から出ていった。


 華恋の母は、ドアを締めると泣き崩れた。

「どうして……あの子がこんなことにっ…」


「それでね、今日3人に告白されちゃったの…」

 部屋に虚しく響く華恋の声。


「でもね!私、トージくん以外は愛せないから…」

 床に置かれたホールケーキにマフラー、

 そして部屋にいるのは桃治ではない、ただの抱き枕。

 壁には人気アニメキャラクター尾田 桃治のたくさんのポスター。


「だからね、その……ずっと…一緒にいてね?トージくん…。」


 完璧美女の横山華恋は、彼氏にとびっきりの笑顔を見せた。

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