ダンジョン歴11日目Ⅱ

 少しばかり考えていたことがある。先に『上』に引きあげた奴らのことだ。

 このダンジョンは上に行くほど広くなっていて、今のところ、この5層が一番狭いらしい。元からなのか、それとも上に住むゴブリンだのコボルトだのが勝手に拡張したのかはわからないが、その辺にゴロゴロ岩が転がっているような雑な構造から見た限りは多分後者だと思う。

 問題なのは、上層にはそういった奴らの巣が確認できただけで5つもあったということだ。こういう亜人種に詳しくない将来の読者のために注釈しておくと、普通、地上に巣が1つでもあれば近くの村が滅びることもあるし、騎士団が出張ることだってある。そういう危険物だ。ちなみに、俺はゴブリンとコボルトの違いがわからない。聞いた話では細かい違いがあるようだが、どうせ出くわすのは暗い地面の下で、よく観察している暇もないから仕方ない。

 真っ当に戦っていたらきりがないので、行きはモグラ仲間と貴族のお付きが集落の中に爆発魔法を投げ込んで、混乱に乗じて適当に間引きながらすり抜けてきた(ちなみに俺を含めたモグラの一部は、爆発魔法の使用には反対した。崩落の危険があるからだ)。一応、ゴブリンどもにもモノを考える頭はあるようで、脅しをかければ暫くは襲ってこなくなるという。つまり、俺達が通り抜ける間だけは。

 まぁ、何が言いたいかというと。やっぱり、順調に行けば奴らはもう地上に着いている頃だ、ということだ。

 ……要するに、俺が地上に帰るには、同じ場所を抜けなければいけない、ということでもある。なんだか最後は暗い想像になってしまったが、他の人間のことを想像する余裕があると分かったのは、悪いことじゃないと思う。

 そして、仲間のことを考えていて、思い出したことがある。厳密にはこの日記を読み返していて、なんだが。

 そう、『薬草』だ。モグラが持ってたダンジョンの戦利品の中に、高価な薬草があった。準備ができたら、とりあえずの目標としてそれを探してみようと思う。売るためじゃなく、自分で使うためだ。俺は植物の生えたダンジョンには潜ってこなかったから、ダンジョンの植物は全部危険だと思い込んでいたが……もしかすると、そうでないのがあるのかもしれない。

 

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