東京チルドレン

啄木鳥

第1話 カラーギャング

「おぉいドッグ!てめぇ遅れてんぞ早くしやがれ!」

「ご、ごめんよモンキぃい」

「馬鹿テメェ!"ボス"を付けろとなんど言えばわかんだよ!」

「まぁまぁボスモンキー、ドッグは新入りだから」

「……ちっ!こんな奴がいると"レッド"全体が舐められちまうぜったく…」


無人の道路を高速で走り抜ける三台のバイク。305号線を新宿方面に法定速度を遥かに超えた彼らを取り締まるものはいなかった。


東京。


日本の首都が置かれるこの都市は、圧倒的な人口密度を誇り、常に時代の最先端を走っていた。つい、五年前は。


ある時、東京で大規模な感染症が流行った。

医者達は驚いた。全くの未知のウィルスだったのだ。治療法を確立させようにも現在の医療技術では1%も解析ができなかった。分かったことはただ一つ。大人がこの病気にかかると必ず死ぬ、という事だった。感染経路は不明。大人の定義も不明。何もわからぬまま1人、また1人と大人達は死んでいった。大人達は何としてでも、東京から外にこの病気を出しては行けないと、東京とその他を隔離する壁を建設し始めた。瞬く間に、空をも覆う隔離都市が出来上がった。


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「さぁて着いたな。ここが今日の狩り場だ。ほかのカラーギャングもいるかもしれねぇ。気ぃ引き締めろよドッグ」

「う、うん。わかったよモン…ボスモンキー」


大人達は死ぬ前、東京を覆うドーム状の隔壁を作った後、各都市にも壁を作ってエリアを分けた。少しでも都内での感染を防ぐために。また、都市としての機能を失ったこの街で食料を確保するために。


ボスモンキー達は新宿を囲う壁の前まで来ていた。


東京の有力者達は最後の延命を都庁でしたとされている。大量の食料や燃料を独占し、都庁に立て篭もったのだ。


当時のニュースでそれを知っていた子供たちは、必然的に都庁周辺で生きるための材料を確保しに行くことを考えた。隔離されたこの東京に外から物資が届くことなどありえない。コンビニやスーパーの食料があらかた尽きて、餓死者が出始めたとき、子供たちは"狩り"をするようになった。すなわち食べ物の、飲み物の奪い合いである。


「ジャッカル、バイク隠しとけよ。今日は俺がドッグに狩りを教えるから、後からついてこい。」

「あいよ。」


新宿外周付近の地下駐輪場に1台ずつバイクを運ぶジャッカル。それを尻目に、


「ッし、行くぞ」


ボスモンキーとドッグは新宿へ入った。

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