オカルトサークル
マムルーク
第1話 岡流斗好
俺は、今東京の某有名私立大学に通う岡流斗好おかるとこう。
高校時代は、占い部という数名しかいない部活に所属していた。高校時代は、そこそこ仲のいい友達と過ごしたものの、大学に進学して2ヶ月経つのだが、初めの方に、複数サークルに所属していたものの、すぐに辞めてしまった。
楽しくないのである。ボランティアサークルは、就職活動に有利という理由で始めたのだが、めんどくさくて辞めてしまった。就職活動に有利になるという理由だけで続けていくことが自分にはできなかった。
他に、モテそうという理由でバンドサークルなども始めたが、練習がきつくて辞めてしまった。練習は週に三回あり、大したことないように思えるかもしれないが、先輩の指導が思いの外厳しく、断念した。モテそうという超絶不純な理由で続くわけがなかった。
それからは、適当に授業をサボっては、大学のパソコンで2chのオカルト版を読み漁るという生活を繰り返していた。
大学では、いつも一人でいることが多かった。
「あー......暇だなぁ......」
ひとりポツンと呟いた。高校時代、もっと大学とは楽しいところだと思っていた。何もしなくても彼女ができるものだと思っていた。一応、名の知れている大学であるため、一年死ぬ者狂いで浪人して、やっと合格したのにも関わらず、この有様であった。
「おいー、美香子。今日おまえんち泊まっていい?」
「え~! 仕方ないな......いいよ!」
「やりぃ! 今日は寝かせねぇぜ......」
カップルの幸せそうな会話を耳にしてしまった。
クソが。逆に永遠の眠りについてしまえ。
別に特段、恋人を作りたいわけではない。だが、俺は充実した日々を送りたいのである。大学生なら一度は思うこの気持ち、今しかできないことをしたいという気持ちである。
社会人になってしまえば、時間も足りなく、やりたいことができないと考えている。
やるなら、今しかないそう考えている。まぁ、いかんせん自分には大きなことをやりとげる根性がないのだが。
まず、何をしたいかを考えた。
やはり、自分は大学生なのだし、サークルをやりたい。
次に、なぜサークルが続かないか考えた。
単純に、楽しくないからだと思った。内容に心の底から興味を持つことができない。高校時代入っていた占い部は非常に面白かった。
満月に行うおまじない、黒魔術、呪いの類を気の合う友達とともに、調べたりした。
だから、部活時代は、今よりもはるかに充実していたと思う。
やがて、一つの結論にたどり着いた。
サークルを立ち上げよう。そう俺は思った。
自分の興味を持てる分野でサークルを作ればいいと考えた。
そして、一週間後――面倒な手続きもろもろを終え、俺は、『オカルトサークル』を立ち上げた。
そうはいっても、まだサークル会員は、俺一人である。当の俺は何をしているかというと、一人、ノートパソコンで、宣伝活動をしていた。ツイッターを使って宣伝している
『○○大学 オカルトサークル』という、アカウントで宣伝している。
――オカルトサークルに入る人募集中です!
という感じのツイートをbotのように一日一時間ごとにしているのだが、誰も入ってこない。どうしたもんだろうか。
俺は、ツイッターをSNSの中で一番好きである。気軽に呟けるというのもいいが、自分を飾る必要性がない場所だと思ってるからだ。
インスタやfacebookは、リア充が利用するものだと個人的には思っている。
前に、facebookを開いたら、中学時代片思いしていた先輩が結婚の報告をfacebookでしているのを見かけてとてもショックを受けた。
また、インスタは、高校時代片思いの女子の投稿で、
――付き合って一年!
とラブラブのツーショットの画像を上げていて、サイレント失恋を果たした。
それ以来、極力facebookやインスタは見ないようにしていた。
まぁ、当然ツイッターにも、自慢する輩はいるのだが、少数である。本当にやめてほしい。
適当に、俺は2chのオカルト版を開いた。気になる記事を見つけた。
なになに? 巨人は存在したかもしれない? ふむふむ......
夢中になって、記事を読んでいると、誰かがサークルの場所として利用している301講義室に入ってきた。
「失礼します。」
入ってきたのは、黒髪の眼鏡の地味な女性であった。服装は、なんかふりふりしてものを訊いていて、なんかオタサーの姫っぽい印象を受けた。
「ここがオカルトサークルですか?」
「ええ......まぁ。入会希望ですか?」
最初にサークル入る人はできれば、男のほうがやりやすくていいと思ったが、まぁいいかと俺は考えた。
「今日は見学です。オカルトサークルって何をしてるんですか?」
そう聞かれて俺は非常に答えに迷った。サークルを作ってやることといえば、ツイッターと2chを見るだけであった。ここは、適当に活動内容をでっちあげることにした。
「うちは、なんていうか占いの勉強をしたり、ミステリーサークルを作ったり、古代文明について勉強するみたいなサークルだよ!」
言ってて、なんだそのサークルはと自分で突っ込みたくなった。内容がなさすぎる。もっと考えておけば良かったと後悔した。
「へー! なんか面白そうですね。」
オイオイオイウソだろ。あの説明で面白そうだと思ったのだろうか。
「そういえば、まだ名前言ってませんでしたね。私、一年で薬学部の菊池凛きくちりんって言います。よろしくお願いします。」
「一年で文学部の岡流斗工好って言います。一応、オカルトサークルの部長です。まぁ、サークルの人俺しかまだいないけどね。」
「そうなんですか。私、占いって興味あるんですけど、岡流斗さん。何か占いってできますか?」
「ああ。まぁね......」
実は、俺には割かしすごい力がある。かなり当たる占いをすることができる。高校時代、占ってほしい言われた女性の起こったことを当てすぎて、ストーカー呼ばわりされたことがある。
全くもってひどいと思う。
占いをするのは、物凄く久々である。その事件以来、俺は占いするのをやめたのだが、サークルに興味を持ってもらうためにやることにした。
もちろん、全て占いの結果を伝える気はない。あなたは、束縛の強い人間ですね。みたいな誰にでも当てはまりそうなことを言王と考えていた。
俺は水晶玉を取り出した。
「それじゃ、すこにすわってください。」
「すごい......なんか、本格的ですね。」
俺の占いは、水晶玉を通して占い人を見ることで、その人の背景と近いうちに起こる可能性が高い未来を予知することができる。ただ、未来は俺が助言することで変えることもできることがある。
唯一の欠点としては、自分自信はどうやっても占うことができない。
「それじゃ占いますね。」
俺は、水晶玉を通して、凛を見た。すると――
凛が罵倒されているようなシーンが見えた。これは......
「凛さん。あなたは、以前サークルでトラブルを起こしましたか?」
「なぜそれを?」
どうやら合っているようだった。凛は以前、男性が多いサークル、何のサークルまでは分からないが、彼女を巡ってトラブルが起こっているようだ。ただ、本人は、悪いことをしていない。
水晶玉から交際を断っているだけのようである。断られた男が立て続けにやめ、お前のせいだと部長から言われていることが分かった。
「前のサークルでサークルクラッシャー扱いされたようですね。」
「あ、あなた! もしかして、前のサークルにいた人から聞いたんですか!?」
「そう思いたければ、勝手にそう思ってください。一応、今から起こりうることを言いますね。もしかしたら気づいてるのかもしれませんが......凛さんはストーカーされてます。このままほっておけばますますひどくなるでしょう。」
「ど、どうしたらいいんですか? 確かに、最近誰かに見られてる気がするんです!」
「俺があるまじないを教えるので、それを実行してください。」
「お、おまじない?」
「三日月の日......明後日に、小さなガラス瓶に、銀の指輪を入れ、外で『ワルプルヘル』と三回唱えれば、ストーカーが終わるでしょう。」
「そ、そんなの信じられない!」
「なら、信じなくて結構。一人でストーカーに話をつけるなりすればいい。」
ちなみに先ほどの説明したおまじないは俺が、ストーカー扱いされたときに使ったおまじないである。自分の周囲の関心を一時的に無くすおまじないである。このおかげで、ほとばりを冷ますことができた。
「分かった......やってみます。ただ......小さなガラス瓶と銀の指輪なんて準備できそうにない。」
「おまじないをする日は、明日だからまたここにくればいい。俺がおまじないに必要なものを貸すので。」
「持ってるの!?」
「まぁ......」
昔、同じおまじないをしたのだから当然のごとく持っている。
「それじゃ、明日借りに来ます......」
「そうだ。一つ条件がある。」
「な、なに?」
「ストーカーの被害が無くなったら、うちのサークルに入会してくれ。誰も入会しないとサークルが無くなるかもしれないから。」
サークルの設立条件に設立して一年以上のサークルは5人以上の人員を必要とするというのがある。今年はともかく来年は無くなるかもしれない。
「ええ......いいわ。おまじないが効いたらね。」
そういい、凛は部屋から出ていった。
多分、凛はこのサークルに入るだろう。実は水晶玉には、ストーカー被害が収まってオカルトサークルに入る光景が俺には見えたのだから。
オカルトサークル マムルーク @tyandora
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