第8話採取のち……

 まず、浮いてる理由はわからない。

 理屈はエオリア先生に、聞いたけど訳わからなかった。

 座標がどうか? とか言っとけど。


 「……なるほど、じゃあ水が出るのはわかるんだ」


 ソニアさんがバンザイしながら、言っている。

 コレはわかる!

 湿気をキレイにして、水にするんだ。

 湿度の高い場所では、たくさんの水が出るんだ。



 「湿気! なるほど」



 ライフが頷いている。

 レイは悔しい顔をしていた。

 二人は意味がわかったようだ。

 


 空気中には実は水が存在している。

 だけど目には見えないんだ。

 目には見えないけど、人間は感じることはできるらしい。

 何回も言うけど、僕は綿モンたからわからないんたけど……



 ジメジメする。



 そんな言葉を使ったことない?

 つまり空気に溶け込んだ水を、人間は感じる。

 実はこの蛇口は空気中に溶け込んだ水を、瞬間に冷やす錬金術を持っている。

 瞬時に冷やすと、水が出てくるんだ。

 ただし冷やしすぎは凍っちゃてしまうから、調整が難しいらしい。ちなみに蛇口の中には窒素いう精霊と、二酸化炭素と言う精霊が居るんだって。



 「なるほど、わかったような。わからないよいな。とにかく水が出るのは仕掛けがあって錬金術でどうにかなるんだ」


 

 バンザイしながら、ソニアさんはソニアさんなりの理解をした。

 おじいちゃんは、少し頭を捻っている。

 あちらを見れば、スレイも変な顔だ。

 だけどレイとライフは、興味津々みたい。



 「なるほど、すごい!」

 「すごいけど、感心している場合ではないわ。そろそろ深水を引き上げましょう」



 レイが促している。

 どうやら、深水を満たしたようだ。

 ところでエナちゃんは、バンザイしているソニアさんのホースに水を流し込むと、ホースを伸ばし出した。

 エナちゃんのホースは、どうやら伸び縮みがすごい。

 伸ばしたホースに水を入れ続けると、水がホースに一杯またった。 

 水が溢れる。

 するとエナちゃんかわホースから漏斗を抜き、蛇口をホースに直接押しつけた。

 なんだか蓋をしたみたい。

 そして下にホースを向ける。

 すると……勢いよく水が出だした。

 


 あっ! なるほどね。



 「何がなるほどなんじゃ?」



 おじいちゃんが言った。

 


 「なんだか向こう、水が出ているぞ!」



 スレイの声が聞こえてきた。

 かなり驚いている。

 レイとライフは深水採取中だけど、ほんの少しだけ振り向いた。



 「あれは!」

 「あの原理だね。水は高い場所から低い場所に流れる」

 「なるほどね。だけどヘンテコは、深水の純度を調査していないわ。あれがキレイかはわからない」



 二人の会話を拾う。  

 やっぱりあの原理だ。

 レイも言ってたけどさ。

 水は高い場所から低い場所に流れる性質がある。

 えっ? それはみんな同じだ。

 まあまあ、聞いてね。

 ホースの中を気密する。

 空気をいっさい入れないで、高い所に水を置き低い場所に水を流す原理、それをエナちゃんは使っているんだ。

 これはみんなも結構使っているから……。



 「理屈はわからんが、どうやらエナちゃんも深水採取に入ったんじゃな」



 そうだよ。

 エナちゃんはエナちゃんなりに、やっている。

 緑色の深水が、水槽に貯まる。



 「おい、あっちの水、色付きのままみたいだ」

 「スレイ、あっちはあっちだよ。僕達のは、調査の深水は捨てるだけだよ」

 「普通は捨てるの、採取だけで集めた深水の方がキレイだし加工もしやすいの!」



 三人の会話が聞こえてくる。

 確かに普通はね、だけどエナちゃんはこのまま使うようだ。

 これはエナちゃんに任せよう。

 


 水槽にたくさんの深水が貯まる。

 するとエナちゃんが、ソニアさんに頭を下げる。

 ありがとう を、した。

 えらいぞ! エナちゃん。

 ソニアさんここまでみたいだよ。

 エナちゃん、もういいって。

 


 「そうか、わかった」



 ソニアさんがバンザイを止める。

 そしてボートに座り、体をほぐしている。



 「レイ、すべて取り出したよ。さて、上がろう」


 

 ライフが言った。

 あっちも終わったようだ。

 さてと帰ろうかな。



ぴー! ぴー! ぴー!



 うん? グリンの鳴き声がする。

 甲高い声に、みんなが上を向く。

 


 「なんなんだ?」



 ソニアさんが不思議な顔をしている。

 何があるをだろう。

 僕がそう思った矢先、両足から吸盤をした光が現れた。

 


 「クッキー、なんなんだ? これ?」



 ソニアさんが笑いながら言った。

 ああ、これね。

 これはね、僕は体重が軽いから風で飛ばされないように、足から吸盤をした光を放って地面に固定されるんだよ。因みに宙に浮いてる時は地面に鎖の光が伸びるんだ。


 

 「つまり、クッキー、風がくるんじゃな」



 そう、風……まさか!

 みんながアルムルクを見る。

 すると灰色の雲が、山の頂上にかかっていた。

 これは!


 

 「すぐに、陸に戻ろう」



 ソニアさんが言った。

 護衛船もアルムルクの悪戯に気づいたようで、僕達のボートの後ろにまわる。

 アルムルクの悪戯はいずれ吹くけど、まさか今なんて。

 アルムルク山から、地響きにも似た凄まじい音がする。

 春の目覚まし そう言われてるけど、今の僕達にはお腹を空かした怪獣の腹音に聞こえてしまう。

 悪戯は激しく吹く。

 ガラリの街でもすごいけど、ここはガラリの通過点であり勢いも街よりあるだろうから、ここで悪戯を受けたら……とにかく陸を目指そう。

 

 

 






 

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魔法を知らない錬金術師 クレヨン @5963

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