祈禱のハルカ

おいのみこ

序章

 ――夢をみた。

 一日のはじまりを照らす陽光を束ねた金色の髪。翡翠の瞳。深紅の布地に蘇芳の糸でびっしり刺繍が施された豪奢なドレスを着こなして、銀髪の騎士を従えた美しい姫君の夢だ。石の廊下にまるで流水のような紋様を描いた絨毯が敷かれていて、その流れに逆らってぐんぐんと歩く。

 迷いなく、強固な意思が彼女の足を前へと押しだす。

 行くわよ、行くわよ。

 力強い心音がそう宣言しているように聞こえる。

 そうよ、行くのよ。

 金色の女と目があう。射殺せそうな眼光で、縁どる睫毛までも剃刀のようだ。

 わたしが手を伸ばすと、彼女もわたしに手を伸ばして――


 ハルカは眠りから覚めた。

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