第130話 南の島は暑いです

 今日の訓練から使用する武器が変わった。

「やっぱり実際に現場で使う可能性が高い武器で練習した方がいいよね」

 との事で、松戸が頼んで作ってもらった練習用の武器を持ち込んだそうである。


 実際に使う武器とほぼ同じ大きさと重量バランスとの事だが、その武器の名前とか云われとか効用とかは、

「言わぬが花ですわ」

という事で教えてもらっていない。


 ちなみに俺のは太刀で委員長が槍、綾瀬が短剣で松戸が太刀だ。

 松戸の太刀はこの前の敵に構えていたのと同じ刀だろう。

 あの異常な長さは多分間違いない。

 俺のもあの時に使った太刀のようだ。

 委員長のは穂の部分が太い槍。

 綾瀬のは三日月形の独特な形をした片手剣だ。


「それぞれの戦闘スタイルと腕力にあわせて、神殺しの実績があって私が借りてくることが出来る武器を選んでみたの。どうしても使いにくかったら言ってね。別の在庫を探してくるから」


 この場合の在庫とは松戸の家にあるとか店にあるという意味ではない。

 宗教施設だの博物館だの研究施設にあるのを無断で借りてくるという意味だ。

 しかも因果律に反しなければ過去や未来からも調達可能らしい。

 この前高浜先輩と魔術の話をしていた時にそんな事を言っていた。


 俺は渡された模擬刀を抜いて軽く振る。

 バランスは悪くない。

 ある程度刀の取り扱いに慣れれば使いこなすのもそう難しくは無さそうだ。


「あ、模擬戦をする時は佐貫はその模擬刀じゃなくてこっちを使って」

 松戸はいかにもおもちゃです、という感じの黄色いプラスチックの柄の黒い刀みたいなものをよこす。

 何だこのちゃちいのは。


「スポーツチャンバラ用のエアーソフト剣よ。それなら思い切り叩いたり突いたりしても怪我しないでしょ。みんな佐貫ほど頑丈でも回復早くもないから模擬戦の時はそれ使ってね。一応あちこちに錘を仕込んでおいたからそれなりの重さはある筈よ」


 何か納得いかないが、まあ確かに俺が模擬刀で女性陣相手に本気で打って当たってしまったら間違いなく骨折ものなので、仕方なく受け入れる。

 でも俺は骨折しても打撲しても無視という事なのだろうか


「佐貫なら全身打撲で内臓まで被害あっても1日寝れば治るしね。だから女性陣は武器に慣れる事も重視して本物に近い模擬武器を使ってもらうわよ」

 男女差別だ!

 と言ってもこの場は圧倒的に女子多数。

 勝ち目は無い。


「では早速訓練するです。チーム分けは前と同じ。私と佐貫君のペア対他全員。佐貫君と秀美ちゃんは神眼を対象敵全体で使うです。みらいは3人を指揮しながら私がどう佐貫君を指揮しているかモニタして参考にするです」

 三郷先輩の指示で、午前中の訓練が始まる。


 ◇◇◇


 取り合えず模擬戦5分を2本やるとそれだけで汗だくだ。

 既に女性陣は水着にTシャツといういい加減なスタイルになっている。

 松戸のちょっとえぐい角度のV字ゾーンが動くたびにずれそうでやばい感じ。

 紳士の俺は見て見ぬふりだけれども。


 なお俺が長袖長ズボンなのは別に紳士だからではない。

 模擬武器が当った時のダメージが少しでも軽くなるようにだ。

 でもいい加減この恰好、暑さに耐えられなくなってきた。

 まだ一撃も相手の攻撃を受けていないし、もうちょい軽装でもいいかな。


「悪い、ちょっと着替えてくる」

「じゃあその間休憩です」

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