第95話 使わなかった切札
「ん、今の攻撃を受けた場合、佐貫ならどうする」
委員長の質問だ。
「まずはできるだけ静かな体勢に移行してひたすら耳を澄ます。音でも気配でも何でも構わない。攻撃直前には何らかの動きがあるだろう。それを待つ」
「正解ね。それなら上手く行けば相手のカウンターを取って、なおかつこっちはダメージ少なめでいけると思うわ」
松戸が珍しく同意してくれた。
「ただ、問題はそれだけでは無いのです。三郷先輩はまだ能力の一部しか使っていないのです」
みらいがまともな事を言っている。
「三郷先輩って指揮の他にどんな能力があるんだ」
「私と同じジャミング能力は使えるのです。あれを受けると一時的に全部の感覚が無くなるのです。それを上回る現状把握能力と指揮能力が無いと何も感じられなくなるのです」
おいおいおい、そんな凶悪な能力があるのか。
しかもそれ、俺ははじめて聞いたぞ。
様子を見ると他の面々も初耳だったようだ。
そんなのもっと早く言ってくれ。
「それって対策は?」
松戸の言葉にみらいは首を横に振る。
「無いのです。私と三郷先輩でお互いジャミングを掛け合った場合、多分お互いに何も見えないし聞こえない状態になるだけなのです」
何だその勝負不能状態。
「ん、六感以外の能力で敵を感知する事は出来るのかな」
「おそらく無理なのです。ただあれは力を使うので、試合時間目一杯使うのは無理なのです。持って1分がやっとなのです」
「ん、つまり三郷先輩と同時にみらいもかければ、双方時間を無駄にするだけね」
「その筈なのです。使用可能時間は私の方が長い筈なのです」
みらいは頷く。
「他に三郷先輩が持っている能力はあるのかな」
みらいは首を横に振る。
「それだけの筈なのです。あとは現状認識の精度と指揮能力の精度だけなのです。そのあたりは三郷先輩に一日の長があるのです。パワーは負けないのですが経験値で負けるのです」
「その代わりみらいには攻撃能力と逃走能力がある、と。つまり組み立て方次第って事ね」
松戸はそう言って頷いた。
「さて、そろそろ会場へ行ってくるわ。美久は準備、もう大丈夫」
「問題無い」
綾瀬は頷く。
「それじゃ、二回戦の第一試合に行ってくるわね」
そう言って松戸と綾瀬は姿を消した。
そして残る俺達3人。
「おーい、三郷先輩の能力、知っているならもう少し早く言ってくれよ」
「そう言えばそうだったのです。でも私にとって三郷先輩は姉みたいなものなのです。能力の使い方も全部三郷先輩に教わったのです。だから今でも敵に回すという感覚が無いのです」
「まあ、実際は味方だしね。単に模擬戦の試合なだけだし」
まあそうなんだけどさ。
「さて、第八試合を中継するです」
とみらいが言って、そして脳内画像及び音声が入る。
「さあ、まもなく第3試合。お散歩クラブと魔法研究会の試合です。相変わらず私、六町と」
「青井でお伝えします」
「あの2人もずっと出ずっぱりですね」
「ん、少なくとも六町先輩はあれが生きがいみたいなもんだしね、大丈夫」
委員長の知り合いなのだろうか。
さて、画面上は3人と2人が整列しているのが見える。
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