とんでもない濃さとボリュームの群像劇

合わせ月は二年ほど前にとある個人のサイトで絶賛されていたのを見たのが切っ掛けでした。
 まずビックリしたのがそのボリュームでした。でも一話一話の文章量は決して少なくなく、かつ、続きがよみたくなる絶妙な区切りかたをしているため、読みはじめると止まらなくなります。作者さんは物語を書くのは初めてとのことらしいですが信じられません。(笑)
 この物語はファランドールと呼ばれる世界の数多くの登場人物による群像劇です。「ルーン」と呼ばれる魔法などの要素も出てくるので西洋ハイファンタジーと言えるのでしょうか。群像劇なので登場人物はめちゃくちゃいます。ですがどの登場人物も非常にキャラが立っていてカタカナ名前なのに「こいつどんなやつだっけ?」となることはありませんでした。もうたくさんいるので絶対好きな登場人物がいると思います。ちなみに私は「天色の楔」ニーム=タ=タンが好きです。(一部の登場人物には二つ名的なものも持っていて個人的にかなり「刺さり」ました)
 合わせ月の魅力はそれだけではありません。多くの登場人物たちがそれぞれの思惑をもって動いており、主人公エイルを含め、彼らの物語を読み進めていくことで、徐々にファランドールの世界の秘密に迫っていきます。一癖も二癖もある設定、物語の途中で読者に問いかける謎。伏せんの回収も唐突に来ることもあり読者を引き付けて離しません。(アクセントとして様々な恋愛模様も物語に織り込まれていて、それもグットです)
 特に世界観の設定が素晴らしいと思いました。国の文化、歴史、それぞれの登場人物たちの過去や先祖たち、膨大な設定などの解説も、本来退屈な世界観の説明的な話になるはずが作者さんの技量なのでしょうか?それも面白いです(笑) 故に登場人物たちそれぞれのバックボーンが見えやすく深みを感じるのかなと思います。
 濃い設定、膨大な登場人物、読者を引き付ける展開、ライトノベルとは決して言えない超本格的なファンタジー小説です。序盤は特にわからない単語が連続してしまい読む人を選んでしまいますが、ガッツリと濃い作り込まれた小説が読みたいという方には是非とも読んで欲しい小説です。