第24話 ラエリオンの招待
オラ、アルシュ。誕生日パーティーにあったいざこざのせいで、ジェネシス帝国に来る事になったぞ! どんな事になるやら…
アルシュは、ラエリオンの謝罪という事で、ジェネシス帝国に来る事になった。
付き添いには、ディリアと部下達五人。ヴィクティアの一番の秘書アリアと部下三名。
アルシュを合わせて十人が、ラエリオンが出した飛翔船に乗ってジェネシス帝国に来た。
ジェネシス帝国の飛翔船港にて、アルシュ達を乗せた飛翔船が港前の海に着水。
そのまま、港へ停泊する。
ジェネシス帝国は活気に満ちていた。
二十年の敗戦復興により、多くの施設は一新され、ワールストリアの全土から飛翔船が来て取引していた。
アルシュ達が港に下りると同時に、ラエリオンの迎えの大型魔導車が三台来て、アルシュ達十人を乗せて郊外へ向かう。
アルシュと同席しているディリアが
「全く、お前は…どうして、こんな誘いに乗ったんだ!」
アルシュは外を見ながら
「無下にする理由もないし、それに…」
同じく同席するアリアが
「それに…とは?」
アルシュは淡々と
「どこまで、ジェネシス帝国が掴んでいるか…知りたかった」
ディリアが渋い顔をして
「お前がここに来た所為でバレたら、どうする?」
アルシュは右にいるディリアを見て
「その時は、その時だ。だが…ぼくが思うに、あの人の狙いは…糾弾する事ではないような気がする」
アリアが
「もしかして…上手く取り込んで」
アルシュは肩を竦め
「それなら、やりやすい」
そう、利害関係で使いたいなら、以外ややりやすい。目的がハッキリしているからだ。
ディリアが腕を組んで
「ケツの毛まで抜かれて、ひもじい思いはゴメンだからな」
アルシュはフッと皮肉に笑み
「そんなに愚かな程、強欲なら、多分…将軍なんてなれないよ」
アリアは眼鏡を上げ
「確かに…その程度の連中が、成れる職務ではありませんから…」
そしている間に、ラエリオンの邸宅に到着する。
ギャラルフォルン財団本部であるそこは、白磁器の大きな邸宅だった。
アルシュはその邸宅を一望して、正妃ヴィクティアと同じクラスかなぁ…と思う。
数名の執事達が、アルシュ達を邸宅に通して、白く輝く大理石の廊下を進み、大きな庭に案内される。
そこは、様々な運動施設があり、キャンプが出来る施設もある。
そのど真ん中で大きなテーブルが置かれて、そこにラエリオンがいた。
「ようこそ、我が屋敷へ…」
アルシュ達を歓迎する。
「どうも…」とアルシュは頭を下げる。
「さあ、こちらへ…」
ラエリオンがテーブルにアルシュ達を誘うと、アルシュが、お肉を焼いているバーベキューキッチンを発見して、そっちに近付く。
ラエリオンがフッと笑み
「もう、料理は完成して盛りつけるだけなので…」
アルシュが、そばにある盛り付け用のお皿を手にしてラエリオンに向け
「おじさんが、盛り付けてよ」
ラエリオンはキョトンとしたが、嬉しそうな顔をして
「ああ! もちろんだ!」
ラエリオンはアルシュの皿を盛り付けして、アルシュ達はテーブルに座り、ラエリオンの二人の妻達と、若い二十代の部下達も着く。
アルシュは、目の前にあるラエリオンが盛り付けした肉料理に、いただきますの祈りをして
「じゃあ、いただきます」
と、食べる。
お! うめぇ…
とろけるような脂身の肉と、肉汁タップリの赤身の肉のうま味が口の中いっぱいに広がる。
ラエリオンが
「どうだ?」
「うまい! おじさんが盛り付けしてくれたから、もっとうまい」
アルシュは素直な感想を言う。
それにラエリオンは満足そうだった。
ラエリオンがアルシュの連れて来た者達に
「さあ、皆さんも…」
進められ、ディリアとアリア達は戸惑いつつ頂く。
アルシュは黙々と食べ、ディリアとアリアは、ラエリオンの部下達が軽く喋りながらの食事会だ。
ラエリオンが
「この前は、すまなかった」
アルシュは食べながら
「いいよ。気にしてないし」
ラエリオンは微笑み
「そうか…君は良い子だなぁ…」
アルシュは
「おじさんって、ぼくみたいな子供が好きなの?」
ラエリオンはフッと笑み
「ああ…そうだ」
アルシュが
「あの時、子供を権力の道具にするのは如何なものかって言った時、マジなトーンだったから」
ラエリオンは肯き
「ああ…妻達から産まれた息子達がいる。つい…君と重なってなぁ…」
ラエリオンの黒髪の妻の一人が
「アルシュくんのお母さんってどんな人?」
アルシュは上を見上げ
「優しくて暖かい人だけど…でも…邪悪な事を知らない人だ」
妻達は驚きの顔を見せ、ラエリオンは笑みだが目が鋭くなる。
ラエリオンの金髪の妻の一人が
「なんで、そんな事を…?」
アルシュが鋭い目で
「確かに、世の中には十分、幸せで不幸な事を知らない人も多い。
まあ、世の中の不幸な出来事を知っても、じゃあ、自分に何が出来ますかって。
言われても…出来る事なんてなかったりする。
でも、知らないより、知っていた方が…世の中を見る幅が広がると思う」
周囲は驚きを見せる。
その言葉は、11歳の子供が言うような事ではないのだ。
アルシュがラエリオンを見て
「ねぇ…どうして、おじさんは、ぼくを呼んだの?」
ラエリオンは首を横に振り
「いや、あれは…私の勘違いで」
「ウソでしょう」とアルシュが告げ
「おじさんは、そんなヘマをするタイプじゃあない。でなければ…将軍なんてやってられないよ。
おじさんは、万軍を統べられるタイプの人だ。
ぼくは、このアルシュに生まれ変わる前の世界で見てきた。
おじさんみたなタイプが、世界の裏で世界を動かして来た事を…」
隣にいるアリアが
「申し訳ありません。子供の戯言ですから」
周囲が戸惑う中、アルシュはただ、ラエリオンを見つめる。
ラエリオンも同じくアルシュを見つめる。
アルシュが唐突に
「レアドの穴に現れた。あの超巨大なウェフォルのような存在。
あれ、ぼくなんだ」
ディリアが席を立ち「アルシュ!」と声を張った。
アリアが
「アルシュ様、言葉が過ぎます」
ラエリオンが目を僅かに細める。
アルシュはそれを見逃さない。
「それを分かっているんだね。おじさん。
って事は…ぼくと似たような人を知っている…そういう事だね」
ラエリオンの妻達が、夫を見つめる。
ラエリオンが肯き
「ああ…そうではないかと、推測していた」
全体に緊張が走る。
そこへ執事がラエリオンに耳打ちして、ラエリオンはフッと笑み
「ちょうど良かった。アルシュくんに紹介したい人物がいてねぇ…」
ラエリオンは席を立ち執事と一緒に、その者を迎えに行く。
ラエリオンが居なくなった食事会でアリアが
「皆様…子供の悪戯です。アルシュ様は、偶にこのような事をする悪いクセがあるので…」
ラエリオンの部下が
「はは、そうですか…ですよね」
と、場を気遣って和ませる。
ラエリオンは正面玄関に行くと、そこには…インドラと、インドラの14歳の長男がいた。
「ようこそ…」
と、ラエリオンは二人を招き入れた。
ラエリオンはアルシュ達の食事会にインドラ達を入れる。
「この者は、私と同じジェネシス帝国の将軍、インドラ・ヴァーチェー
そして、息子のロディーだ」
アルシュは、インドラを見た瞬間、エネシスと同じような不気味な気配を感じる。
それは、インドラも同じだった。
そう、それこそ、アルシュとインドラが同じ者であるという証だ。
そして、インドラの息子ロディーはインドラの力を受け継いでいるので、詳しくその性質を感じ取れる。
ロディーを父親インドラを見つめる。
インドラはそれで更に確信した。
アルシュが、自分と同じであると…。
インドラはお辞儀して
「初めまして、ブラック・ジェネラル(黒の将軍)を務めるインドラ・ヴァーチェー
となり居ますのは、息子のロディー・ローツ・ヴァーチェーです」
赤髪のロディーもお辞儀して
「初めまして…」
アルシュも席を立ち
「初めまして、アルシュ・メギドス・メルカバーです」
お辞儀すると、インドラが
「存じておりますよ」
と、インドラが怪しく笑む。
それに応じるようにアルシュも不気味な笑みをする。
それでラエリオン達は察した。
そう、インドラとアルシュは同じなのだ。
アルシュに付いて来た者達も、その場景に頭を抱えた。
一波乱がありそうな予感がしてならない。
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