第21話 アルテナの怒り
オラ、アルシュ。ディリアのレアド領の事を父親と母親、父親の正妃様に話したら、なんか…重い空気になった。
ディリアからの、カメリア合衆国レアド領にあった。
レアドの穴の戦争を回避する為に、アルシュの最高位の力であるドッラークレスを使い、ジェネシス帝国の飛翔船艦隊を撤退壊滅させ。
更に、ジェネシス帝国の秘密兵器、宇宙砲台も破壊。
ジェネシス帝国に大被害をもたらし。
まつさえ、自分の残骸である数千億トンにも及ぶドッラークレスの赤いロゼッタストーンをジェネシス帝国とカメリア合衆国で折半という形にした事。
正妃ヴィクティアの執務室で、母親のファリティアはソファーに座り、隣には正妃ヴィクティアも座りファリティアを支えている。
さっき、ショックで気絶したのだ。
父親でありヴィクタリア帝国の皇帝アルファスは、アルシュの目の前で
「アルシュ…お前がどれ程の事をしたのか…分かっているのか?」
凄く冷静に告げるが、その顔は困惑が出ている。
アルシュは頭を掻きながら
「大丈夫だって、人間って自分が見たい範囲の現実しか受け入れないから。
今回の事はカメリア合衆国大統領とも話し合って
地中に眠ってたウェフォルが復活して、暴走、その自重に耐えきれず死んで
それが巨大な山脈になったって事になっているから」
アルファスが頭を振り
「たとえ、それが世の中の通説になったとしても…
確実に、お前がやったという痕跡は残っている。
これを恐怖と思う者が調べ上げ、お前を…襲うかもしれないぞ」
アルシュは首を傾げ
「そうだとしても、そんな強大な力を持つ物を正面から倒そうとする?」
アルファスは渋い顔をして
「それは…確かにそうかもしれん。だが…お前の将来が…
この国にいられなくなるぞ」
アルシュは肩を竦めて
「そんなの心配しなくていいよ。もし、やばくなったら…ディリアの元へ逃げるから」
アルファスは、アルシュの隣にいるディリアを見て
「どういう事だ?」
ディリアは
「そういう約束なので…。もし、ヴィクタリア帝国に居られなくなったら
私の…レアド領へ逃げるという約束で、今回の事をやって貰いました」
アルファスは額を抱える。
まさか、息子が…国を追われる事を考えているなんて想像もしたくなかった。
アルファスはアルシュの肩を持ち
「いいか、アルシュ。この事は絶対に誰にも喋るな! いいな!」
念を押す。
アルシュは眉間を寄せて
「その…ディリアのそばにいる者達や…カメリア合衆国大統領とか…あと…エネシス様とか」
アルファスはグッとアルシュの肩をつかみ
「それ以上、広げるな! いいな!」
アルシュは困惑気味に
「ああ…うん。分かったよ…父さん」
話し合いが終わって、ディリアとアルシュは部屋から出され、アルファスとファリティアにヴィクティアの三人での話し合いが行われた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アルシュがディリアと廊下を進みながらアルシュが
「アルテナに見つからないように帰るよ」
ディリアは少し渋い顔をして
「ああ…分かっている」
二人して廊下を進み、玄関ホールに来た時
「ねぇ、アルシュ…」
二人の背後からアルテナの声がした。
ディリアは振り向かず、アルシュだけが
「やあ…アルテナ」
アルテナは鋭く二人を見つめている。
「アルシュの隣にいる人って?」
アルシュは硬い笑みで
「ああ…お客さん。ぼくが送っていくんだ」
アルテナが「ふ…ん」と告げて
「アルシュ、その人って前に私を…」
アルシュは首を横に振り
「いいや、全然違うよ!」
ディリアは項垂れ後ろのアルテナの方を振り向いた。
アルテナは鋭い目で
「やっぱり…」
ディリアはアルテナに
「今度は、アンタを誘拐にしに来たんじゃない」
アルテナは、アルシュの隣に来て
「ねぇ…説明してくれるよね」
また、さっきの説明をアルテナの部屋でディリアはした。
アルテナはソファーに座って、正面にアルシュとディリアの座るソファーを見つめ
「そうか…それで…」
アルテナは肯き、右にあったクッションを抱いた。
アルシュは頭を掻きながら
「という事なんだ…。もう…アルテナを誘拐するなんて事はしないから…」
アルテナはジーとディリアを見つめ
「ねぇ…ディリアさん」
ディリアは「ディリアでいい」と告げた。
アルテナは息を呑み
「ディリアは、アルシュにとってなんなの?」
ディリアは頭を掻いて
「まあ、もしコイツに何かあった場合に逃げる先を提供する水先案内人かな…」
アルテナはディリアを見つめ
「それって、そういう位置だってみんなは…」
ディリアは肩を竦め
「まあ、表向きは、こいつの愛人って事になってる」
「そうっか」
と、アルテナはアルシュに視線を向ける。
んん?とアルシュは、アルテナの視線が冷たい事に気付く。
アルテナは
「ディリアさん。アルシュと二人だけにさせて」
ディリアは肩を竦め
「ああ…構わないよ」
ディリアは部屋から出て行った。
アルテナとアルシュだけ。
「んん…」
唸るアルシュ。
アルテナ、沈黙の後、アルシュの前に来て、アルシュの頬を軽快に叩く。
「えええええええ!」
驚き、叩かれた頬を擦るアルシュに
「なんで! そんな事をしたのよーーーー」
怒っているアルテナがいた。
「アルシュのバカ! バカ! バカーーーーーー」
ポンポンと殴るアルテナ。
出会った時のようなタコ殴りだ。
「や、止めてよアルテナ…」
アルシュは腕を組んで守ると、アルテナが泣きながら
「ねぇ…どうしてよ。アルシュはわたしのナイトでしょう…。だって…」
涙を拭うアルテナにアルシュは渋い顔をして
「アルテナ。ぼくたちは、子供だ。今は…仲良くいられるかもしれない。
でも…将来は、分からない。
ぼくは、結局の所…正式な子じゃない。
アルテナは、将来のヴィクタリア皇帝だ。
もし、ぼくみたいな存在がいたら…それを危険と思う人はいると筈だ。
これは、アルテナを守る為でもある」
アルテナは泣きながら
「わたしは、絶対にそんな事させない」
アルシュはアルテナの肩を持ち
「アルテナはそうだけど…アルテナ以外の人たちはどうなるか…分からない」
アルテナはアルシュに抱き付き
「わたし、アルシュと離れたくない」
アルシュは抱き付くアルテナの背中を撫でながら
「嬉しいよアルテナ。でもね…これは将来…もしもの場合があるから、なんだ…
保険みたいな事だ。
使われないならそれでいい。でも、もし…」
アルテナがアルシュの顔を見つめ
「じゃあ、アルシュがいられなくなったら、わたしも連れって」
アルシュは首を横に振り
「アルテナ。どんな所に行ったって、ぼくは
アルテナのナイトだ。その右手にあるぼくのあげた指輪はその証なんだよ」
アルテナがアルシュを見つめ
「ホント、どんな所に行ったって。どんな場所に行っても、アルシュは…わたしを助けてくれる…」
アルシュは肯き
「ああ…約束だ。どんな場所でも、どんな所でも、アルテナを助けるよ」
アルテナはアルシュに強く抱き付き
「分かった。じゃあ、わたしもアルシュを助けるから」
アルシュは再び抱き付いたアルテナの背中を撫で
「ああ…ありがとう」
本当に他愛もない約束なのかもしれない。
時が過ぎ、お互いが大人になれば、それぞれの立場か生まれ。
もしかしたら、お互いに戦う事があるかもしれない。
父親アルファスだって、親族で皇位継承者争いをしたのだ。
アルシュは思う。
自分には上に立とうという野心はない。
だが、自分を利用しようとする者達はいるだろう。
そういう、美味しい思いをしようとする連中は、地球時代でも多く見てきた。
そんな連中に巻き込まれないように…。
せめて、このアルテナを助けるという約束だけは…守ろう。
何時か、アルテナが自分を必要としない日まで…。
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