第十三話:『勇者のカレー皿』
「じんぐるべーる、じんぐるべーる、すずがなるー」
『女神の空間をクリスマス一色にしないでもらえませんでしょうか』
「良いじゃないですか、女神様いつも一人でクリスマスを過ごしていそうですし」
『人のこと言えたギリですかね』
「えっ、人間として死ぬ一年前はご近所さんとパーティしていましたよ」
『そんな馬鹿な、馬鹿な、私が貴方以下だというのですか』
「あ、でも異世界転生中でのクリスマスは殆ど一人でしたね」
『無生物や人外とのクリスマスパーティは送りたくないでしょうからね』
「勇者の肋骨やヒロインの耳での参加はカウントに入りますかね」
『貴方の存在を知覚していないのはカウントに入りませんね』
「兄弟のいた時計の針の時はリア充への魔法攻撃でクリスマスどころじゃなかったしなぁ」
『貴方のやらかした世界の神様達から苦情が来るときもあるのですから程ほどに』
「そんな異世界転生者のすることに怒る器の小さな神様がいるんですか」
『宝箱についている錠前になっていた貴方のせいで倒された神様とかが筆頭ですね』
「あの神様世界の創造主でしたか」
『基本やられた神様が悪いということで論破していますがあまりやらかされると集団訴訟が来てもおかしくありませんので程ほどに』
「では今日は女神様と楽しくクリスマスパーティといきましょう」
『残念ですが異世界転生のお時間です』
「そんな、折角用意したクリスマスディナーのフルコースが」
『私が二日で食べるので安心してください』
「プレゼント交換用に用意したプレゼントが」
『私が貰っておくので安心してください』
「女神様からはないのですか」
『ではチートオプション一個、好きなのを選ばせましょう』
「わーい、では早速目安箱を奥山 千尋さんより『勇者のカレー皿』」
『勇者関連ですね』
「そうですね、基本設定としてはやはりカレー好きは外せませんね」
『カレー嫌いの勇者ですと出番も無くなりますからね』
「あとは概念体となるか、物質となるべきか」
『勇者がカレーを食べる皿全てが貴方になるのか、勇者が食べるカレー皿が固定されるかと言った所ですか』
「折角ですから一点もので行きましょう」
『余程のカレー好きなら行けそうですね』
「あとは勇者の性別ですが女性が良いかなと」
『今回は禁止しませんが、男女に関係があるのでしょうか』
「野郎が美味しそうに食べている光景に欲情できません」
『禁止したくなりました』
「そんな」
『自分が愛用しているカレー皿が自分のカレーを食べる姿を見て欲情していると知った時の女勇者の心境を述べなさい』
「見られるのも悪くない、ですかね」
『貴方も勇者も上級者ですね、ではそう言う性癖を含めるなら許しましょう』
「でも羞恥心はちょっとは欲しいかなぁ」
『さっさ決めてください』
「ではこの辺で、そうそうケーキは冷蔵庫に入れてありますので」
◇
『彼の用意したクリスマスプレゼント、普通にセンスの良いネックレスでしたね。チートとはいえオプション一つは雑すぎましたかね』
「ただいま戻りました」
『クリスマスイブに送り出した彼がクリスマスに帰ってきた件』
「あれ、一日しかたっていないのですか」
『正確に言えば日付変わったばかりですね、どうやら転生先との時空が歪んでいたようで』
「日帰り異世界転生と言うのも新しいですね」
『お手軽でしょうけどドラマは少ないかと』
「さて、報告ですが先ずは勇者のことを語らないと始まりませんね」
『そうですね、カレー好きな勇者なのでしょうけど』
「勇者の名前はリアン=メリクという女勇者です」
『安易ですが悪い名前ではないですね』
※ターメリック、コリアンダーより
「リアンは生まれつき病弱で体の弱い少女でした」
『勇者なのに虚弱設定ですか』
「村を襲う魔物の群れを蹴散らすといつも喘息を引き起こしていました」
『生まれつき病弱で体の弱い少女は魔物の群れを蹴散らしませんよ』
「神様の加護を出鱈目に受けていたチート系勇者でしたからね」
『弱点として虚弱体質を付けられたと言う事ですか』
「そんなところですね、俺とリアンの出会いは彼女がまだ十才の頃、魔王の右腕であるダルカンモ将軍を素手で血祭りに上げていた時のことです」
※カルダモンより
『酷い十才児もいたものですね』
「咽返る血の臭いに気分を悪くしたリアンは食欲も無く、戦闘後の疲労もあり床に伏せていました。そんなリアンを心配していた両親は元気をつけようと最近伝わった異国の料理を作ったのです」
『それがカレーと』
「そう、カァリィーです」
『無駄に発音が良い』
「全身に浴びていた血の臭いを打ち消す香辛料の香りで食欲を取り戻したリアンは初めてカレーを食べます」
『体洗いましょうよ、その状態で床に伏せていたのですか』
「するとその美味しさにリアンの病弱だった体は見る見る回復していくではないですか」
『カレーにそこまでの力があるとは』
「頂いたチートオプション『不治の病を治せるアイテム』の効果ですね」
『貴方の割には良いチョイスをしましたね』
「ちなみに俺はその辺の商人から二束三文で買った安物の木製食器です」
『器が残念、しかし今まで良く目立ちませんでしたね』
「転生先が『勇者のカレー皿』だったのでリアンが始めて食べたカレー皿が俺になったんですよ」
『なるほど、それまではただの皿だったと』
「世界から与えられた唯一の弱点すら克服したリアンは数年しないうちに立派な勇者として成長しました」
『十才の時に既に魔王の右腕を倒していましたからね』
「リアンは大勝した日や記念日等には好んでカレーを食べていました、俺で」
『俺でと言う言葉に抵抗感を感じますね』
「ストライクゾーンには少し遠かったですが何とか興奮できましたね」
『嫌悪感を感じますね、それはそうとリアンは同じ皿で食べ続けたのですね』
「リアンには物に愛着を持ちやすい子で縁担ぎなどで良い思い出のあった品を愛用していたのです」
『なるほど、自分の体調が改善され、美味しいカレーを食べた記念として貴方を重宝したのですね』
「いえ、ダルカンモ将軍討伐の記念日に使ったと言う縁起物と言う扱いでした」
『自分の体より功績を優先しましたか』
「初めて一撃を貰った相手だったそうで」
『十才児の発想ではないですね』
「リアンは色々な収集癖もありましたね、ダルカンモ将軍の武器、ダルカンモ将軍の軍旗、ダルカンモ将軍」
『本人を剥製にしてませんかね』
「ホルマリン漬けです」
『思想まで危険な勇者だ』
「お、旧スペイシャスからメールだ」
※魚系魔王(封印)>魚系魔王(紅鮭)>魚系魔王の右腕と転生している主人公の異世界転生仲間。詳しくは7~9話を思い出そう。
『報告の途中だというのに』
「彼も最近再び魔王の右腕として異世界転生したらしいのですがあっさり死んだそうです。適当に攻めた村にいた幼女に撲殺されたとかで」
『報告の補足になりましたね』
「似た境遇の人もいるものですね」
『察しが悪い』
「ああ、ちなみに何故ホルマリン漬けにしたかと言うとお魚さんみたいで可愛いかったとかで」
『でしょうね、ちなみに魚の部分に対してです』
「そして十五才になったリアンは魔王を倒して世界を救います」
『一気に端折られた、冒険談とかないのですか』
「魔王の城の隣にあった村がリアンのいた村なんですよ」
『なんて狭い世界』
「魔王を素手で血祭りにしたリアンは勇者として称えられましたが、同時に虚しさも感じていました」
『人生における最大の敵を若くして素手で血祭りにしてしまえば虚しさも感じますね』
「残り人生を勇者として生きていく意味はあるのだろうかと」
『その辺はシリアスでしたか』
「勇者とは勇気ある行動をした者、ならばこそリアンは勇者らしい生き方を考えます」
『おや、立派ですね。魔王を倒した後の勇者の生活とは大抵平穏が荒んだものが多いと言うのに』
「そしてリアンはカレー屋さんになる決心をします」
『勇者でその選択肢はある意味勇気ありますね』
「自分の人生を変えたカレーを通して世界の者達に人生を変える切っ掛けを与えたい、カレーさえ食べれば魔王だって倒せるのだと」
『カレーを食べたからといって魔王は倒せませんが、倒してますけど』
「勇者は近場の王国にカレー屋『勇者印のカレー』を開きます」
『勇者であることは利用するのですね』
「場所は城前の一等地」
『勇者ですね』
「最初は皆珍しがって店を訪れてくれます、しかしリピーターは中々増えません」
『味が良くなかったのでしょうか』
「国民の9割がハヤシライス派だったのです」
『凄くどうでも良い理由』
「更に生き残った魔王が道向かいにハヤシライス屋を建ててきたのです」
『王国に魔王が普通に入り込むとか酷い話ですね』
「どこかの世界の話を思い出しますね」
『そうですね、そう言えばそんな世界もありましたね』
※作者作品ネタ。
「店の名前は『魔王ハヤシ』」
『日本人の魔王でしょうか』
「いえ、魔王の名前はクミンです」
『捻りも無くなっている、しかもちょっと可愛い』
「女性の魔王でしたよ、ちょい怖系お姉さんでしたね」
『そのちょい怖系お姉さん魔王が十五才の女勇者に血祭りにあげられたのですね』
「魔王クミンは戦闘力も優れていましたがチートすぎる勇者がいる世界で力ずくの支配は無理と判断。ハヤシライスの美味しさを布教し、その美味しさにより人々を支配しようと目論んだのです」
『ハヤシライス辺りの説明が何一つしっくりきませんね』
「ですが実際に魔王クミンの店は凄い大盛況、多くの民が魔王クミンを崇め始めます。もう誰もがハヤシライス無くしては生きていけない体に」
『それ本当にハヤシライスでしょうか』
「閑古鳥の鳴いた店でリアンは悩みます、このままでは赤字になると」
『至極現実的な悩みですね』
「いっそ魔王クミンを血祭りに上げてしてしまった方が早いのではと」
『物騒な勇者ですね』
「二度三度じゃ足りないと」
『魔王の奮闘を応援したくなりました』
「売れ残ったカレーを俺に注ぎながら勇者は悩み続けます」
『思い出したかのように貴方が沸いてきますね』
「俺は言いました『勝負するなら店として勝負するんだ』と」
『喋りましたか、皿が』
「リアンは突然カレーの下から喋り出した俺に驚きましたがカレーを食べ終えてから冷静に考え、そんな事も在るだろうと納得します」
『食べていたカレーの皿が突如喋り出したのに、最後までカレーを食べる辺り相当なカレー好きですね』
「取り合えず俺は勇者のカレー皿として転生した異世界転生者であり、リアンの病を治したことなどを説明しました。彼女は全てを真っ直ぐに信じます」
『よく信じましたね』
「自分でも驚きました、なのでよく信じられるものだと聞きましたよ」
『貴方が驚くのは珍しい』
「いつもカレーを食べていると何故か震えていて、この皿でカレーを食べると毎回力が湧いてくる奇跡が起きていたからだとか」
『そう言えばカレーを食べる女性で欲情していましたねこの皿。後者はオプションでも使いましたか』
「はい、俺で食事するとレベルが1上がるようにしてありました」
『カレー好きがそんな皿でカレーを食べていたら五年もあれば相当なレベルになりそうですね』
「元々の強さがチートのリアンでしたからその辺は誤差だったと思いますけどね」
『一番の影響はチートにチートオプションを使用したことでしょうね』
「ちなみにカレーを美味しそうに食べている顔に興奮していると言う事も話したのですが」
『話してしまいましたか』
「ありがとうとお礼を言われました」
『相手も変態でしたか』
「いえ、自分がカレーを美味しく食べている喜びを伝えられていたことに対する感謝だとか」
『おっと、謎の罪悪感』
「俺も流石に罪悪感を感じましたね」
『直向に純粋な子には弱いのですね』
「まあ、その後彼女もやや悶えるようになったので素質はあったと思いますが」
『そこは聞かずに済ませたかった』
「話は戻って暴力に訴えるのは良くないと説得し、店を盛り返す方法を二人で考えます」
『傍目から見ればカレー皿に独り言を呟くサイコな光景ですね』
「先ずは内装、今まで倒した魔物のホルマリン漬けが並んでいるのは威圧的だと」
『ホラーも良い所ですね』
「敵情視察に来ていた魔王クミンが泣いてましたからね」
『部下が軒並みホルマリン漬けで展示されていたらちょい怖系お姉さん魔王も泣くでしょうね』
「お前も飾ってやりたいというリアンの言葉で逃げ出していましたね」
『やりかねない相手ですから当然逃げますね』
「次に都度あるごとに来店した魔王クミンに襲い掛かるのを止めろと、営業中くらいは見逃してやるべきだと」
『めげませんね魔王も』
「魔王クミンもカレー好きなんですよ」
『それでも自分を血祭りに上げる勇者の経営しているカレー屋には行かないと思います』
「ちなみにこの二つを改善するだけで客入りはぐっと改善されました」
『でしょうね』
「魔王クミンも毎日カレーを食べに来ましたからね」
『さてはこの魔王相当なカレー好きですね』
「いつも泣いてましたが」
『刻み込まれた恐怖』
「時折裏に連れて行かれていましたからね」
『これはどちらが悪いのでしょうかね』
「今のところ客層のシェア率は三対七、やはり魔王クミンのハヤシライスの人気は落ちません」
『元々国民の九割がハヤシライス派の国なので善戦している方かと』
「リアンは策を思いつきます、魔王クミンをホルマリン漬けにすればあの店も潰れるのではと」
『一番の常連客なのだから、そこは温情にしてあげて欲しいですね』
「俺はリアンの顔面にカレーを叩きつけて叱りつけます、そんなことをすればお前のカレーはハヤシライスに負けたことを認めたことになるんだぞと」
『カレー皿にカレーを叩きつけられる勇者』
「リアンは叩きつけられたカレーを舐め取りながら泣いて反省します」
『カレー好き設定がシリアスを台無しにしています』
「あと少し悦んでいましたね」
『見られて興奮する変態でしたからね』
「俺は言いました、勝てない理由が分からないなら見に行けば良い、敵情視察にいくぞと」
『なるほど、国内シェアを誇る店ならば一度は見に行った方が良いですね』
「リアンと俺は変装して魔王クミンの店に潜り込みます」
『木製のカレー皿が何をどう変装したのでしょうか』
「リボンを付けられました」
『あら可愛い』
「リアンはダルカンモ将軍の剥製を被りました」
『知人の頭を被って変装するのはホラーですからね』
※そんな作品もホラー映画にはあります。
「店内はとても清潔、見事なアンティークが飾られており雰囲気の良さもありながら食事をするのに落ち着ける優しさもありました」
『ホルマリン漬けの並んだ店とは大違いですね』
「しかし店員の態度が少し悪かったですね」
『おや、どのように』
「俺達の方向を何度も見たり、声を掛けるだけでビックリして怯えるんですよ」
『魚系魔物の生首を被った勇者と喋る皿ですからね』
「様子を見に来た魔王クミンも泣いて厨房に逃げ出す始末」
『右腕だった部下の頭ですからね』
「しかしハヤシライスは美味しかったです」
『皿が食べたのですか』
「盛られると味が分かるオプションがあるのです」
『良くそんなオプションを探し出せましたね』
「同じ味を共有できればそれは間接キス判定にでもならないかなと」
『見下げた野郎ですね』
「でもまあリアンの作ったカレーの味とかを分析するのには役立ってますよ」
『それはそうですね、ちなみに魔王のハヤシライスと勇者のカレーはどちらが上だったのですか』
「リアンのカレーですね、ハヤシライス派の俺でもお前のカレーの方が美味いとリアンには言いました」
『愛用カレー皿からの突然の裏切り発言』
「結局の所、味では勝っていたのですが負けていたのは店の内装や店員の態度、外装などが原因だと判明しました」
『店の内装と店員と態度は聞いていますが外装は初めて聞きますね』
「同じですよ、魔王クミンの手下のホルマリン漬けが並んでいます」
『何故内装と一緒に改善しなかったのか。それでも常連として通った魔王のカレー好きは凄いですね、あとシェアの三割の客』
「それらを撤去して落ち着いた感じの店になった途端、客の数は互角になりました」
『でしょうね』
「魔王クミンも笑顔で来るようになりました」
『今までの悔恨をよく忘れられますねこの魔王』
「ある日魔王クミンは言いました、私は一度隠れてこの店のカレーを食べてからこのカレーの虜になったのだと。リアンのカレーへの思いがたっぷりと詰まったこのカレーを食べていると幸せな気分になれるのだと」
『恐怖を乗り越えてでも食べたい位には虜になったのでしょうね』
「あと、昔殺しあった相手だというのに、なんやかんやで普通に接してくれるリアン自体も嫌いじゃないと」
『部下のホルマリン漬けを並べられ、会う都度に血祭りにされるのは普通の接し方とは違うと思いますが。あと殺しあったと言っていますが一方的にしか感じませんが』
「殴られるのも気持ちが良いしと顔を赤らめながら」
『変態しかいませんねこの世界』
「そう独白しました」
『しかも独り言でしたか、何故貴方がそれを聞いたのか』
「その時に魔王クミンに出されていたカレー皿が俺だったのです」
『店の営業でも使用されていましたか』
「本来は使わないのですが珍しく皿の枚数が足りなく『これを使うか』とリアンが選んだのです」
『愛用の皿を魔王に使う辺りお互いそれなりに打ち解けていたのですね』
「そしてレベルアップする魔王クミン」
『そんな効果ありましたね』
「ついでに今まで蓄積されていたリアンからのダメージも回復しましたね」
『一応そちらがチートオプションですからね』
「結局互いの店は一歩も譲らずお互いにシェアを奪い合いながら繁盛していきました」
『それはなにより』
「そして俺とリアンの悲しい別れの時も訪れます」
『割と仲良くやっていたのに』
「レベルの上がりすぎたリアンは力の加減が難しくなっており、ある日俺を洗っているときにクシャミをして真っ二つにしてしまったのです」
『遠い世界のやらかしが自分に返って来ましたね』
「ああ、これで俺は死ぬんだなと思い俺はリアンに別れを告げます。彼女は涙しながら謝ってきました」
『クシャミで相方にトドメを刺したら仕方の無いことかもしれませんね』
「俺は言います、これも因果だ、形あるものは何れ失われる。君が魔王を倒した後も勇者として立派にやれる姿を見れただけで俺は十分だと」
『そうですね、物として存在している以上はいつかはその形を失う時がくるでしょう』
「君がいつも見せるカレーを食べた時の美味しそうな顔は大好きだったよと、欲情できたよと」
『最後の一言が台無しですね』
「リアンも私もと応えます」
『最後の方にじゃないですよね』
「少し悶えてたので後者もでしょうね」
『その辺の記憶は忘れておきます』
「そんな感じでややしんみりとした感じで帰ってきましたね」
『割と満足して死んだように感じますね』
「そうですね、恋愛とは違った関係を持ちましたけど悪くない皿生だったと思います。リープリスの時と同じくらいに大分満足できたかと」
『皿生、中々聞きませんね。でも帰ってきたと』
「結局リアンは自分の力で頑張っていましたから、皿として出来たのは不治の病の治療とレベリングと店を盛り返す助言程度です」
『皿にしては十分過ぎると思いますね』
「ここに戻れたということは、満足しきれていないのでしょうね」
『貴方を満足させるには中々骨が折れそうですね、そもそもろくな異世界転生してないですし』
「それでお土産ですが」
『先に言っておきますが魔物のホルマリン漬けは受け付けません』
「ではこれは他の人へのクリスマスプレゼントにするとして」
『やはり持って来ましたか』
「リアンの作ったカレーのレシピ、覚えているので今から作りましょうか」
『それは良いですね、クリスマスにカレーと言うのも少し場違いかもしれませんが昨日はクリスマスディナーを沢山食べたので』
「二人分を一食で食べたんですか」
『ケーキは残していますよ、それと私からもクリスマスプレゼントを一つ』
「なんですかこれ」
『厚めの日記帳です、どうせ頻繁に帰ってくるのだから思い出を綴ったらどうかなと』
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