シグマ・ウェントリは死んだ
蒼鬼
may 21 2247~ may 25 2247
may 21 2247
今日から観測宇宙船【マーマイト】に配属されたはいいが、改めて地球の現状に唖然とするばかりだ。
教科プログラムでしか学んだことが無い分、かつて人類が、この海に沈んだ地球に住んでいたという事が未だに信じられない。
かろうじて、砂漠と化したかつての大陸がポツポツと、孤島のように点在している以外、見るようなものは殆ど無い。
地球温度は75℃、海面は+140m。
南極大陸全ての氷が溶けても、まだ上昇し続ける海水は、一体どこから来るのだろうか。
may 22 2247
赴任2日目。
最悪の日だ。
整備士のジョッシュが俺の生まれを馬鹿にしやがった。
「新入り、お前の母胎コンピュータ聞いたぜ【メアリー・スー】だってな」
「日がなバンクから
だと?
反吐が出る!
俺を産んでくれたマザー【メアリー・スー】は優秀な母胎コンピュータだ。
母星では一番のバンク量を誇り、優秀人材の出生率が一番の自慢の母親だ。お前のような出生数を稼ぐために、粗雑交配を繰り返すだけのコンピュータ生まれとは訳が違う。
レイモンド船長が止めてくれなければ、赴任2日目で整備士を殴り飛ばし、母胎の評判を落とす所だった。
船長曰く、優秀母胎出身をああやって挑発し、暴力の既成事実を作り悪評を振りまく事をやっているらしい。
今度から徹底無視を決め込もう。
may 23 2247
赴任3日目。
放射能観測の終わり、面白いものを見た。
有名企業の商業船が地球へと着海し、海水を気化冷凍して仕入れている所だ。
同じ観測員のセブンスから聞いた話だが、母星で使われている工業用の水は、地球から氷解として回収されたものが使われているという。
月に2回、政府から発注されて回収に来るそうだ。
積み込みが終わったのか、デネブ軌道から飛び立つ船を見た今日は、昨日とは打って変わって有意義な1日だった。
明日は海面突出区域への観測任務だ。
日記はこれぐらいで区切って早く寝よう。
may 24 2247
いくら最新鋭の防護服とは言え、流石に地球は暑かった。
防護服内部でも30℃を超えるのは、予想の範疇外、確かこのブランドのCMでは。
「どの惑星でも、快適な環境を貴方に」
と、うたっていた気がするが、これでは金星勤務の職員はろくに働けはしないだろう。
本日のF5地点の海面突出区域での調査で発見できたのは、打ち上げられて干からびた軟体生物の死骸と、海洋哺乳類の頚椎部分と思われる骨だけだった。
明日もまた、あの暑い防護服を着用しての作業かと思うと気が滅入る。
may 25 2247
おんなのこがいた
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