第4話 ボランティア希望者と獣人達との交流
その犬顔の人の膝の上には、犬顔の子供が乗っているのです。その後ろや横には猫顔や兎顔や狐顔の子供達が戯れています。
おばあちゃんが側を散歩していますが、後から小さな子供の獣人達が、ぞろぞろおばあちゃんの後を、テクテク追いているのです。孤児の獣人かもしれません。
衝撃の光景にボランティア志願の皆んなは、目を見開き口を半開きにして黙っています!
お父さんは一歩前に出て「みなさんよく来てくださいました。私は平家悟といいこの村の世話役をやっております。皆さんお疲れのところ申し訳ないが、少しの間話を聞いてください。」
お父さんはこれまでの経緯を簡単に説明して、元村長のコロルさんを紹介しました。コロルさんは本当に日本語で「この村の人たちから親切にされた事を感謝して、また皆さんがお手伝いに来てくれた事に、ありがとうだわん。」と挨拶しました。
それぞれ書類に住所や氏名や連絡先を書き込んでもらいます。特技ややってみたいボランティアの書く欄があり、割り振りの参考にするつもりです。
身分証名のある人は見せてもらっています。ただ身分証名の無い人はお父さんは密かにチェックしていました。
書いている最中獣人の子供達は不思議そうに、書類と顔を覗いて「にゃー」と声をかけたり、足にじゃれたりして、ボランティア志願の若者達の顔をとろかすのでした。
「あの、あの、この子にさっ触ってもいいですか?」コロルさんに聞いたお兄さん、コロルさんは「耳だけは家族とか恋人同士しか触れませんのでそれ以外でしたら大丈夫ですよわん。」「もちろんアソコもダメですよ、これは人間と一緒だと考えてください。」お父さんが付け加えました。
今まで我慢していたお兄さんは、猫族の子供の服の上に出ている首筋をやさしく撫で始めました。キョトンとしていた子供は、すぐお兄さんにハグして「にゃにゃーん」と言ってくれました。
人族の兵隊に追いかけ回され、両親を殺され孤児になった子供はとっても寂しかったのでしょう。ハグされたお兄さんはこれ以上無いくらい感激して、すごい顔になっています。
受付で手続きを終えた、大きな荷物を背負ったボランティア希望の人達は、お父さんとコロルさんの案内で村の集会室兼食堂に向かいました。
子供達も一緒に追いて来ますが、ボランティア希望の人は獣人の子供達が気になって仕方ありません。チラチラ見ながらつまずく、こける人が続出でした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
集会室では猫、犬、兎、狐族のお姉さん達が、お茶とお菓子を配って労をねぎらってくれます。お姉さん達は艶やかな毛皮や小さな顔で、背丈は150~160ぐらいでしょうか抜群のプロポーションなんです。そして体のキレがいいんです。筋肉の質が違うみたいで、僕らの運動能力の倍以上は有りそうです。
ボランティア希望の若い男女は顔を真っ赤にして、初めて見る獣人のお姉さんを呆然として眺めているのです。
「やーよく来てくれたなも、ゆっくり休んでピコ。」真っ白な兎族のお姉さんに、声を掛けられたシンジ君とアケミさん。真っ赤になったシンジ君が勇気を出して「一緒に写真を撮ってもいいですか?」の問いに「もちろんウサピヨン!」兎族のお姉さんを真ん中に、シンジとアケミさんはにっこり記念撮影に励むのでした。
『来て良かった、生きててよかった』元ひきこもりのシンジ君は心の中で叫ぶのでした。
ようやく緊張もとけて、獣人のお兄さんやお姉さんを真ん中に車座になって、ボランティア希望者たちとの会話が弾んでいます。コロルさんなんか周り中から触られまくりで「わん、わん、くすぐったいだわん。」と身をくねらせています。
ベルちゃんはコロルお父さんの膝の上で、ニコニコして皆んなと一緒に父親のコロルさんをベタベタ触っています。
まったりした時間が過ぎて、僕のお父さんが立って話始めました。「皆さんそれでは、ボランティア仕事の配属先を決めていきます。もちろん合わないとか不満などあると思いますので、後から申し出てください。」
お父さんは「◯◯さんと◯◯さんは建築業の経験があるので、今隣町の源さんがリーダーとなって、獣人さん達の住む家の修理をしているので、源さんの手伝いを獣人さん達と一緒にお願いします。」
「続いて電気関係に強い◯◯さんと◯◯さんには、今一番重要な裏山にある洞窟とその周辺に、監視カメラの設営を私と一緒にお願いします。」
赤鹿村のサイトでは募金を募集していて、募金のお金を監視カメラ代やパソコン代にあてるつもりです。お父さんは次々と、ボランティア仕事の分担を決めていきます。
アケミさんは福祉大学在学中ですので、孤児たちの保育と年少さん達の遊び相手をお願いされました。
シンジ君はPCスキルとプログラミング能力と、ハッカーの基礎知識などで、お父さんに付いてサイト、監視カメラの管理あと雑用の仕事を任されました。シンジ君は引きこもりの5年間、ハッカーに憧れ独学でPCスキルを磨いてきた事が、役に立ちそうです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます