ちょっとだけ怖い話

まるま員

物置部屋

 小学生のときに正月、祖父の家にいったときの話なんだけど。

 祖父の家は田舎の大きな一軒家で、部屋の数も十部屋以上あるような家だったんだ。


 だから子供としては冒険したり、遊んだりするのが楽しくて、丁度同じくらいの年ごろの従兄弟とか親戚連中も集まってたからみんなでかくれんぼすることになったんだ。

 一年に一回か二回くらいしか行かない祖父の家だったから、家が大きいのもあって知らない部屋とかも結構あったわけ。

 で、かくれんぼで隠れる場所を探してたら、廊下の奥に物置みたいな部屋を見つけたんだ。

 奥の方で暖房も効いてないから寒いんだけど、使ってない布団なんかも積まれておいてあったから、布団の間に隠れれば見つからないし暖かくなるかなと思ってそこに隠れたんだ。


 きゅー、じゅう、って遠くの方から聞こえてた鬼の声が聞こえなくなって少しして、部屋に近づいてくる足音がどたどたって聞こえてゆっくりドアを開ける気配がしたんだ。

 きたって思って慌てて布団の中に顔を隠して、鬼が遠ざかるのを待ってたんだけど、なかなか部屋を出ていく足音とかドアの音が聞こえなくて、部屋に本当にいるのか気になってちょっと布団の間を開けて部屋の様子を見たら、部屋の中で黒いモヤみたいな人型の何かが立ってたんだ。

 うわっ、何かいる。って子供心に怖くなって慌てて布団の中に隠れて鬼が探しに来てくれるのを待ってたんだけど、廊下の方から足音は全然聞こえてこないし、でも怖いから見たくないしで目を瞑ってるうちに寝てたんだろうな。

 気づいたら部屋に黒いモヤもいなくて、少しほっとしたんだけど、また現れるかもしれないって怖くなってあわててドアをあけて部屋を出ようとしたら左の足首が痛くなって、足元を見たら左足に黒いモヤが足輪みたいについてるの。

 もう怖くて、痛いのを我慢して部屋を飛び出して親のところに泣きついて、黒いモヤの人影みたいなのを見たって話なんかもしたんだけど、夢でも見たんじゃないのかって感じでまともに相手してくれなくて。

 ただまぁ、自分もハッキリと見たってわけじゃないし、足首の痛みとか足についてたモヤもすぐになくなったから、気のせいだったのかなぁと思って、気にしないことにしたんだ。


 それ以来、祖父の家でもどこでも黒いモヤとか見たことなかったんだけど、去年の夏だったかな。祖父が亡くなって少ししたときから左の足首が痛くて、黒いモヤが足首に見えるようになったんだよね。

 病院いっても原因はわからないし、神経痛なんじゃないかって言われてるんだけどたぶんこれ、この黒いモヤのせいだと思うんだよ。

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