(短編)青く静かな時
こうえつ
この空の下
…少し寒くなってきた。
天気はすごくいい 。
空は高くて……見渡す限り青く透き通る 。
「親族の方々は、こちらへ」
後方から聞こえる声。門の方へ歩きながら、僕は久しぶりに空を見ている。
「ご友人の方々……」
その声で数人が歩き出す。僕とすれ違う。
好きな人が……死んだ。長い間病に苦しみながら。
別れの言葉が流れる中、僕には現実感が無いままで
式は進む。
何故か涙は出なかった。
家族も悲しみとどこかに安堵の表情が見て取れる。
長い長い闘病は彼女の家族も疲弊させた。
鳴らされるクラクション。その音にも悲しさがない 。
ほんとうに好きな人を亡くすと言うこと。
考えてもみなかった。現実になっても何も浮かばない。
見上げる空は高く、青く、静かだった。見たこともない快晴。
人が死ぬのはなぜだろう。病気、自殺、事故……理由はあるだろう。
でも違うような気がする。
この空の向こうのどこかで、人間ではない、神でもない、何かが、何かの決まりにしたがって、もしくは気まぐれで、死ぬ人を決めている。いい人、健康な人、悪い人、病気の人…… そんなことには関係無く、死は決まる 。
どうすれば、生きられる?
どうすれば、死ぬ事ができる?
生きたくても、死にたくても、願いは叶わない。この青く静かな時間に思う。
死ぬことを決めたのは 彼女に問題があったわけではない。
だからこそ青空はとてもきれいで穏やかだ。
「どうしようもない。自分には何も出来なかった」
言い訳に似た自分の想い、でも後悔だけは心に残る。
美しい綺麗な終わり。でも僕には他に望むものが確かにあった。
流れていく青く静かな時間に思うことはあった。
(短編)青く静かな時 こうえつ @pancoo
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