154cmの俺と26cmの猫
夢沢 凛
プロローグ ; 現在の日常
じーっと見つめてみる。最初は知らんぷりをしているが、根気よく見つめているとやがて「仕方がないな」という表情でこちらを振り返る。
さて、一体なんの話をしているかというと今の俺—
そんな状況がしばらく続くと根気に負けた俺は小町のもふもふな体に顔を埋める。あぁ〜、めっちゃもふもふじゃん〜。小町は何も言わずにじっとしていてくれる。これは有難い。
そんな時グッと足を踏まれた。痛ってぇ!!
「あ、ごめんごめん。脚が長くって引っかかっちゃった」
犯人は姉貴。絶対わざとだな。そんな俺の睨みはガン無視で姉貴はすぐに小町に駆け寄った。
「そんなところにいたでちゅかぁっ」
すかさず小町を抱き上げて小町の頬と自身の頬とを擦り合わせる姉貴。
あー、小町がー。
小町は顔を背けて必死に耐えている・・・気がする。
そんな小町は尻尾が短く、測ってみたら5㎝〜6㎝ほどしかない。加えて耳は尖ってなくて丸みを帯びている。両耳の間と身体の右側そして尻尾に三毛の模様が入っていてその他は真っ白だ。
ついに耐えきれなくなった小町は手足をばたつかせて抵抗を見せた。
「小町が嫌がってるぞー」
ぶっきらぼうに横入れしたのは俺の兄貴。ちなみに俺は3人姉弟の末っ子だ。
「嫌がってないし。ねー?小町にゃん」
ジタバタ、ジタバタ。頑張って逃げるんだ、小町。
「んにゃー」
そうしてようやく発した一言。ジタバタするのを辞めた小町の様子に流石の姉貴も小町を床に下ろした。すると疲れ1つも見せずに小町は軽やかな足取りで食事場へと向かい、思い思いにご飯を口に運んでいった。してやられたな、姉貴。
そして小町騒動も収まり、俺はゲーム機を手に兄貴との対戦プレイを始めた。
こうして何気ない休日を楽しんでいるわけだが、4年前の俺が今の姿を見たらきっと驚くだろう。何故なら“生きる”ことに対して固執していなかったからだ。作文には「自殺しようと思った」とまで書いた。
だが今はそう思わない。生きることは大変なことで、誰にでもできることじゃないこと。
それを小町に教えてもらった。小町は俺の命の恩人なんだ。
ことの始まりは小学5年生のこと。
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