フィナーレは やっぱりこれよ ハッピーエンド

 おめでたい慶事パーティーは盛り上がっておりますが、陽は傾き夕暮れ時を迎えております。夕さまと雲子さまの初恋の色がパレス六条を染め上げます。甘味司パティシエの甘介が心をこめて作ったウェディングケーキにナイフを入れ、お互いに食べさせ合っていらっしゃいます。膳司総料理長のフルコースも振舞われております。おふたりはご友人や従者やSKJたちと楽しく談笑なさっておいでです。


 少し離れたところで光る君はふと夕空を見上げられます。あの方に語りかけられます。

「葵ちゃん、見てる? 夕の晴れ姿だよ」


~ 見てるよね? 俺たちの夕 晴れ姿

 キミが遺した 一途さ永遠とわに ~


 ふわりと柔らかい風が光る君を包みます。葵子さまきっとご覧になっていらっしゃいます。


 ヴィレッジすぷりんぐの東の対にもお客様をご招待いたしました。ヴィラ二条にお住まいの末子さまと空子さまにメゾン朝露からは朝子さまがいらしてくださいました。

「末ちゃん、来てくれてありがとうね」

 光る君は招待客の皆さまにご挨拶をなさいます。

「これを」

 いつものゴッワゴワ足ふきマット風織物でございます。

「ん? コレまさか夕に??」

「光る君によ」

 夕さまの結婚式にもかかわらず贈り物は光る君になさる末子さま。まったくといっていいほどのブレなさでございます。光る君もこの贈り物が夕さま宛てでなかったことにホッとなさりながら末子さまの頭を゛ぽんぽん゛でございます。


〜 からころも とんちんかんの 眠り姫

 いついつまでも からからころも ~


「空ちゃんもありがとね」

 空子さまにもご挨拶ですね。

「ここにもうさぎさんはいるかしら?」

 またお茶会のお話でしょうか。

「どうかな、楽しんでいってね」

 アールグレイを淹れたティーカップを差し出されます。


~ ねぇ空ちゃんアリス 俺も一度 連れてって

 不思議の国の ティーパーティー ~


「朝ちゃん」

 几帳を周り込むとそこには凛としたお姿の朝子さまでございます。

「このたびはおめでとうございます」

 キリッと凛々しい朝子さまですが、お目元は微笑んでいらっしゃいます。

パレス六条ココまで来てくれてありがとう」

 光る君も礼節を持ってご挨拶なさいます。

「お似合いのおふたりね」

 朝子さまが夕さまと雲子さまをごらんになっていらっしゃいます。

「ね、朝ちゃん、あの子ら従姉弟同士だよ。俺らとおんなじ」

 光る君は口角を上げて嬉しそうですわね。

 

~ 明ける朝 開く朝顔 煌いて

  添う露もあり 添わぬ露あり ~

 朝子さまが詠われます。


~ そうだよね 俺たち親友 いつまでも

  以上もないけど 以下もないよね? ~


 わかってるってば、と光る君もお歌で返されます。そうですわよ、男女の友情というのもいいものでございます。

 

 東の対から寝殿へと光る君は移動されます。日が暮れ、夜の帳が降りてまいります。ふと渡殿から庭に咲いている小さな鈴蘭を見つめられます。

『夕ちゃん、ここにキミがいてくれたらな』

 光る君にとって夕子さまは「永遠の青春」なのかもしれませんね。


〜 ひっそりと 可憐に揺れる 鈴蘭に

 逢えないキミの 面影探す ~


『玉ちゃんのこと、これからは親として幸せにするからね』

 例の一件はしっかり反省なさいましたものね。そうそう、玉子さまは宮仕えに上がることになりました。尚侍ないしのかみという役職でキャリアウーマンを目指すそうにございます。お仕事のキャリアを積まれるのももちろんですが、素敵なオフィスラブが待っているかもしれませんわね。


「藤ちゃん」

 今度は夜空を眺められます。満月がパレス六条を照らしております。

「いつでもそこで見守ってて。俺もいつまでもキミを想ってる」

 

〜 ひさかたの 月を見上げて 君想ふ

 永遠とわの憧れ ああかぐや姫 ~


 光る君、あなたさまの想いは十分藤子さまに届いております。藤子さまの想いは澄んだ月に耳を傾けてみてくださいませね。


「桐山」

 光る君に付き従っている桐山にお声をかけられます。

「はい」

 目立たぬように控え、さりとて必要とされればすぐに光る君のお側へと参ります。

「いろいろとありがとう」

 桐山の顔を見てにっこりと光る君は微笑まれます。

「もったいないお言葉にございます。殿」

 当然のことながら桐山は謙遜いたします。

「あれ、若って呼ばないの?」

 パレスに来た頃は若と呼んでおりましたわね。

「殿はもうご立派な御殿の総領にございます」

 光る君は少しだけ口角をあげましたが、こうおっしゃいます。

「桐山がパレスを仕切ってくれているからだよ」

 決してご自分の手柄にはなさらないのでございます。

「当然の責務にございます」

 桐山も同様にございます。

 

 メイン会場の南庭を見渡すとインカムをつけた弦一郎がテキパキと指示をとばしております。指示を受ける弦三郎と弦四郎が会場内を動き回ります。マイクを握っている管一はパーティーを盛り上げております。管三、弦二郎はそれぞれゲストのもてなしやサポートにまわっております。管二が三従士など若い従者のフォローをしております。見事な源ちゃんズフォーメーション、弦一郎のパーフェクト指示書と抜群のチームワークの賜物でございます。


「皆、殿をお慕いしてお仕えしております。殿のお人柄ゆえにでございます」

 誰しもが光る君のお役に立ちたいと働きます。

「俺もみんなが好きだよ」

 光る君も主従の身分の差なく皆を大切にいたします。

「殿はなんと見事な総領になられたことか。亡き主上うえもさぞや、ううっ」

 桐山の例の「主上病」が始まりましたわね。

「ありがとね。はい、懐紙」

 光る君の対処法も慣れたものでございます。

「あありがとうござっいますぅぅ。ううっ、主上っ、主上っ、殿はなんと、ううううう」

 主上ぇ、殿ぉと懐紙に顔を埋めての嬉し泣き桐山でございます。


「さ、お妃クイーンズエリアに行くよ」

「こちらお持ちいただく引き出物にございます」

 瞬時に平常のビジネス桐山に戻ります。桐山の泣きモードとビジネスモードのスイッチ操作を操る光る君との名人芸ですわね。


 さて、寝殿メイン会場にやってまいりました。クイーンズエリア、でございます。宮中からの特別ゲストがおふたりご臨席でございます。御簾越しのご挨拶でございます。

秋子しゅうこさま。ご臨席賜り光栄でございます」

 春宮妃にして元恋人六子さまのお嬢様、秋子さまですわね。パレス六条の慶事にわざわざお越しくださりました。

 秋子さまを通して六子さまに語りかける光る君でございます。


~ もう一度 麗しのキミに 逢えたなら

 月が綺麗I Love You.と 俺は告げるよ ~


 やっぱり何度でも六ちゃんキミと恋に落ちるよ、なんて光る君は思っていらっしゃいます。


「月ちゃん」

 もうおひとりの宮中からのゲストは今や皇后さまの月子さまでございます。

「おめでとう。光くん」


〜 ジュリエット キミとの想い出 星リング

  甘くてしびれる カクテルのよう ~


 またもや月子さまのSPがおふたりの間に人の壁を作ります。

「さすがにここで何もないだろ? 息子の結婚式だよ? 俺ってそんなに信用ない?」

「ないわね」

 月子さまが即答なさいます。光る君はうなだれていらっしゃいます。

「でもそんなアナタが好きなのよ」

 !!!!!

 月子さまのお言葉に光る君は人垣SPの壁を超えようとなさりますが、逆に寝殿の外へと追いやられるようでございます。

「つきっ! 月ちゃん!!」

 屈強なSPによって簀子縁まで押し出されてしまわれたようですわね。

「またバーでね」

 御簾の向こうから月子さまがお手を振っておられますわね。


 寝殿内への侵入は諦めた光る君は西の対へと向かわれることになさいます。

 歌を詠みながら明子さまの元にいらっしゃいました。


~ めぐり逢ひ 運命の糸 赤い糸

  固く結んで 俺の人魚アリエル ~


「明ちゃん」

「素敵な結婚式になったわね」

「姫ちゃんのオルガンもよかったよ」

 明子さまとご一緒に姫子さまもいらっしゃいます。

「ありがとう。パパ」

 姫子さまはSKJのぱんだたちとスイーツビュッフェを楽しんでいらっしゃるようですわね。


「ねぇ、光さん」

 女の子たちのキャッキャッ、キャッキャッと楽しそうな様子を眺めながら明子さまは光る君に話しかけられます。

「ん? なに?」

 光る君も明子さまのすぐお隣にお座りになり、肩を抱かれます。

「姫子のときもこんな風にしてくださるの?」

 光る君の表情が瞬時に凍りついたようでございます。

「いっ? ひめっ、姫ちゃんのときって姫ちゃんが結婚するってこと?」

 光る君の顔色が一気に蒼くなっていきます。

「いずれはそうでしょ?」

 夕くんの次は姫ちゃんでしょ? と明子さまはおっしゃいます。

「いやいやいやいや、いかん! いかんに決まっとるでしょうが!!」

 勢いよく立ち上がられる光る君でございます。側にあった脇息(ひじかけ)が音を立てて倒れます。いつもの舞うような所作どころではございませんわね。

「ひっ、姫ちゃんがどこの馬の骨ともしれないヤツと結婚だなんて許さんぞ!」


~ 天下一 恋多きオトコも 人の親

 いったいどの口 言ってんのかしら ~


 明子さまのお歌もあいかわらずでございますね。まあ確かにどの口が、となりますわね。


「姫ちゃんを几帳と屏風で取り囲め!」

「誰にも見せるな!!」

 光る君の叫びにも似た指令が響きます。ふと近くに控えていた管三と目が合いました。姫子さまのSKJ(遊び相手)の3人は管三とほたてのこどもたちでしたわね。

「ぱんだ・うさぎ・こあらの3人も几帳で囲め!」

 すると遠くから刺すような視線を感じます。弦一郎も無言の訴えアピールをしてきます。

「こうめちゃんも隠せ!」


「「「はぁぁぁぁ。ムスメって困るな……」」」

 過保護&過干渉パパさんズ結成でございます。

 皆、どなたかの姫さま(娘さん)を奥さまにしてきたにもかかわらず、ご自分の娘は誰にも渡したくないようでございますわね。


「ふぅっ、花ちゃん……」

 花子さまのところに光る君はやってきました。今日はスウェットで膝まくらというわけにはいきませんわね。

「光る君、どうなさったの?」

 花子さまが光る君の様子を伺います。あら、お目に露が見えるようでございますね。やはりご子息夕さまのお幸せな姿はおとうさまとしても……


「いや、これで邪魔者がいなくなって花ちゃんを独占できると思うと嬉しくてさ」

 とことんお花畑オトコですわね。

「あら、おほほほ。でも夕くんときどきは遊びに来てくれるって言ってたわ。スウェットも置いておくって」

「なにっ! ホントか? アイツめ……」

「みんなでこれからも仲良くいきましょう? ね?」


~ これからは 俺の乙姫 竜宮城

  どっちも独占 夕は邪魔者 ~


 玉手箱の魔法はいつまでも光る君にだけかける恋の媚薬でございますわよね。


「紫ちゃん」

 最後はやはり紫子さまのところでございます。お隣に座られお手をとります。 


~ 結局は キミがパレスの センターだ

  12時過ぎても 恋シンデレラ ~


「光くん」

「なに? マイ・スィート・ハート?」

 光る君は手の甲に口づけながら紫子さまをご覧になります。

「ダーリン、これからも楽しく過ごしましょうね」

(【超訳】やっぱり好きよ。あなたのことが)

 ずどぉぉぉぉん。光る君のお心が撃ち抜かれた音のようでございますね。都合のよい【超訳】は光る君にも聞こえるようでございます。

「紫ちゃん!」

 傍目も気にせず光る君は紫子さまを抱きしめられます。

「キミのために俺は生きるよ! キミのためだったらなんでもするよ!! キミのっ、キミっ、キミの!」

 感極まる光る君でございます。



〜ときめいて 死ぬほどキミに 恋したら

 パレス六条 平安ならむ〜


さくら色に染め上げられた京の都

緩やかに踊る花びらの舞

真珠色が描く都の輪郭

淡紫うすむらさきの空

弾ける花火

瑠璃紺ラピスラズリ宇宙そら


 

月煌めき星降る夜


時は平安

所は京の都、光り輝くお屋敷その名はパレス六条


光に愛されしかの君

その君に愛されしプリンセス

君が大切にする人々

彼らを慕い仕える者たち


繰り広げられるかくも平安なる日々

甘くときめく恋物語


皆の歓声がこだまします。

花火が打ち上がります。

幸せに包まれます。



世界は愛に溢れております。


本日はもちろんのこと、恐らくこれからも、パレス六条永遠に平安なり、でございます。



♬BGM(『げんこいっ!』オールキャストで合唱)

イッツアスモールワールド  

Oh Happy Days


✨『げんこいっ!』トピックス

壁にドン

源「紫ちゃん、マイラブ」

紫「私も好きよ」

 (【超訳】超訳が通じないあなたのことがね)


あごをクイ

源「loving you 紫ちゃん」

紫「me too 光くん」

 (【超訳】その鈍さも恋してるわ)


見つめ合うふたり

源「死ぬほど紫ちゃんキミに恋してる」

紫「私もよ」

 (【超訳】ホントあなたって憎めないわね)


そして顔を寄せ合い、瞳を閉じる。



☆弐の巻 『本日もパレス六条平安なり』

 その五 ときめいて 死ぬほどキミに 恋したら パレス六条 平安ならむ   fin.


 Next エピローグ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る