ペントハウス『ムーンハイアット』
「源ちゃんズの飲み会も楽しそうだったわね」
「そうでございましたね」
藤子さまがおっしゃいます。
あちらは「月夜の品定め」でございました。
「こっちは月からね」
「そうでございますね」
今日も漆黒の
「そういえば面白かったわね。月夜の三者面談」
「藤子さまご所望のプリンセス夢のコラボでございますよ」
「ね? 楽しかったでしょう?」
「茶話会もございましたわ」
「パレス六条はいつも楽しそうね」
「平安でございますね」
ここはわたくしミタと藤子さまの住まいでございます。
ペントハウス『ムーンハイアット』と申します。
眺めのよい最上階のペントハウスでガラス張りのリビングからはアースビューが楽しめます。この窓にカウンターテーブルを設置して、わたくしはPCで執筆をし、藤子さまはお隣でお酒を飲んだり、読書をなさったり、わたくしにチャチャをおいれになったりしていらっしゃいます。
光る君にとって、成就しなかった初恋の想いがゆえに藤子さまは永遠の憧れでございます。今も月を眺めてはチョコを供え、切ない歌を詠っては
~ かぐや姫 月を見上げて 想うキミ
愛し面影 望月のころ ~
日々恋に奔走なさる光る君でございますが、月の見える夜、特に満月のころはひとり物思いにふけられることがございます。哀しげに、淋しげに、憂いを帯びた眼差しで月を見つめるその横顔は妖しく美しいお姿でございます。その瞬間は一途に藤子さまを想い、焦がれていらっしゃいますからね。
「藤ちゃん、もう逢えないのかな」
困ったことにその切ないお顔を見ているとなんとかして差し上げたくなる風情の光る君なのでございます。
「綺麗ね」
藤子さまはまるで他人事のように呟かれます。
〜逢えたなら 壁にドンして 囁くよ
もう離さない 永遠のキミ〜
ここまで想われればオンナ冥利に尽きるというものでございます。たとえまあ、その、複数同時進行の恋があったとしても、でございます。
「藤ちゃんから俺は見えてるの?」
雲居の月に語りかける光る君でございます。見え隠れする今宵の月の行方を気になさいます。
「さてと、今日のディナーはなに?」
かぐや姫が気になっているのは今日のお献立でございます。
「パクチー鍋にいたしましたの。最近流行りだそうで」
「山盛りパクチーね、それにレモンがこんなに入っていてさっぱりしてそうだわ」
「ここでしゃぶしゃぶしたお肉でパクチーを包んでいただくんです」
ふと一瞬切ない表情をお見せになった藤子さまが、気分を変えるようにダイニングへと向かわれます。
「美味しそう! あ、アタ、ごはんよ。ユタはいるの?」
アタとユタはわたくしの姉でございます。この部屋はわたくしたち三姉妹の部屋なのでございます。藤子さまはちゃんとご邸宅(といってもおとなり)がございますのに、わたくしたちの部屋に入り浸っていらっしゃるのでございます。
「では、いっただきま~す」
藤子さまの号令でお食事スタートでございます。
「アタの音楽の演出はどう?」
アタは音楽の仕事をしております。わたくしの作品のBGMを考えているのも彼女でございます。
「今回はエピソード数が多いのよ。ついていくのがタイヘンだわ」
アタが一番上の姉でございます。
「ユタの絵は?」
ユタの仕事は絵でございます。そう、拙作の表紙のデザインや
「今回のイチオシは春宮さまと夕さまの桜の宴でしょう。渾身のチカラをこめたわよ」
「あの桜の宴はステキだったわよねぇ」
藤子さまがほうっとため息をつかれます。
「そして夕くんといえば、ね?」
ちらりと地球をみやった藤子さまがわたくしに目くばせをなさいます。
「そうでございますね」
そうなのでございます。
「物語もいよいよ後半ね」
グラスに白ワインを注いで再度乾杯でございます。わたくしたち3姉妹の執筆作業にスーパーバイザーの藤子さま、いうなればチーム月の民、でございますわね。
『本日もパレス六条平安なり』という弐の巻でございますが、次回からはしばらく舞台がパレス六条ではなくなるのですが、引き続きお楽しみくださいませね。
『げんこいっ!』初の「胸キュン」ストーリー、でございます。
♬BGM
It's A Only Paper Moon
✨『パレス六条』登場人物紹介
藤子さま 永遠の憧れプリンセス、光る君の初恋の君、月の民
ミタ 本作著者、語り部、月の民、年齢最高機密
✨『げんこいっ!』トピックス
ミタ三姉妹
アタ
ユタ
ミタ
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