月夜の三者面談!
「こんばんは。明子さま」
鶯のような美しい紫子さまの声でございます。
「紫子さま。ようこそいらっしゃいませ」
まったくといっていいほど動揺を感じさせない明子さまでございます。
光る君は瞬時に明子さまから距離をお取りになられます。
先導のチームすぷりんぐのSKJの後方からヴィレッジうぃんたーの
「こうして歩いて行き来ができるっていうのは便利なおうちよね?」
おほほほほ、ほんとうに――とおふたりの笑い声が重なります。
「みなさんとお会いできますものね」
便利なおうちを作られた総領はあうっ、はうっと呼吸を乱していらっしゃいます。
「月がとってもキレイなので、お留守番どうしご一緒に眺めようかしら、なんて思ったの」
明子さまにっこりと微笑まれたあとにお答えになります。
「それはステキですわね。大勢で眺めた方が楽しいですものね。さあ、紫子さまこちらへどうぞ」
明子さまが御簾内へとお招きになられます。光る君は立ち去ることもできず、意味もなく反復横跳びをしていらっしゃいます。
「お邪魔いたしますわね」
口元を扇子でお隠しになっていらっしゃいますが、紫子さまのお美しさはその
「どうぞ」
バタバタバタっと光る君は格子に寄りかかられます。
「あらぁ?」
いとも優雅に御簾内に入られた紫子さまが視線を上げられます。
「や、やぁ紫ちゃん、来たんだ……」
引きつり笑いの光る君が紫子さまを出迎えます。
「なんでしたっけ。恋にはサプライズが必要なんだそうですわ」
明子さまが微笑みながらお答えになられます。
「さすがねぇぇぇ」
まぁっとおっしゃりながら紫子さまも優雅な笑顔でございます。
「む、むらさきちゃんはよく来るの?」
とても不自然な恰好で格子によりかかっていた光る君が用意されている
「どうかしら? あなたほどではないでしょうね」
にこやかに紫子さまもお座りになられます。まるで牡丹の花が咲いているかのような美しさでございます。一方芍薬のような明子さまもお席につかれ、お三人で正三角形を形作っておられます。
「御簾もあげさせましょうね。せっかくの月夜ですもの」
明子さまはSKJに指図をなさいます。御簾を上げて、燭台の蝋燭の火を落とします。月明かりが白々と端近を照らします。
「まあ、綺麗ねぇぇ。ねぇ? 光くん?」
「そ、そうだね。綺麗だね」
紫子さまと光る君が微笑みあわれます。
月の光を受けてか光る君のお顔が蒼白く見えます。
「本当に。月が綺麗ですわね。光さん?」
「……。きれいだね……、うん」
明子さまとも月を愛でる光る君。
引きつった口角がそのまま凍り付きそうでございます。
まことに月は綺麗でございます。
おほっほほほほほ。
うふっふふふふふ。
ハハッハハ……ハ、ハ、ハ……。
そんなお三人を盛り上げるのはもちろん源ちゃんズでございます。この場を上滑りするかのような明るい音楽が流れてまいります。なぜか源ちゃんズが若干頬をこわばらせているようでございます。忠義なご家来衆でございますわね。
童謡にクラッシックにと沈黙は罪とばかりに源ちゃんズは立て続けに音楽を演奏します。SKJの3人はヴォーカルをキャンセルして几帳の裏側で張り込みOKでございます。特等席で三者面談を傍聴、のようですわね。
「ヴィレッジういんたーはとってもシックでおしゃれなのね。月も綺麗に見えるわ」
「ヴィレッジすぷりんぐこそ華やかな御殿ですわ。月ももっと綺麗でしょう?」
紫子さまと明子さまがお互いのお屋敷を褒め合います。
「光くんのセンス抜群ね。ほんとに月が綺麗だわ」
「どこのヴィレッジでも月が綺麗に見えるように考えてくださったのよね? 光さん?」
今度はそのお屋敷の総領をおふたりで讃えられます。
「ま、ま、あ、そうなるかな。気に入ってもらえてよかったよ」
会話の合間にやたらと「月が綺麗」と連呼するのが少し気にはなりますが、恐れていたようなドロドロとした雰囲気でないことに光る君は安心されたご様子でございます。
『月が綺麗』そう言えばある意味を含んでいたのでしたっけ。ご存知ですか? 同じものを見て同じように美しいと感じる。それこそがお互いを同じ気持ちで想いあっていることだと。それが英語でいうところの
ここ京の都の華やかなる御殿のその中のひとつのお屋敷のそのまたひとつのお部屋にて。かくもステキな三者面談が行われていることを知っているかのように月は煌煌とその光を注ぎます。それはまるでスポットライトのように。
緩やかにじりじりと。
月が夜空を渡るかのように。
時は穏やかに流れていくのでございます。
ああ、本日もパレス六条平安なり、でございます。
♬BGM
月(童謡)
交響曲「運命」 ベートーベン 都合により途中で演奏中止
月の光 ドビュッシー
ソナタ「月光」 ベートーベン
✨『げんこいっ!』トピックス
源ちゃんズメンバー 担当楽器
弦一郎 ヴァイオリン&琵琶
弦二郎 ヴィオラ&
弦三郎 チェロ&
弦四郎 コントラバス&和琴
管一 サックス&横笛
管二 トランペット&笙
管三 トロンボーン&尺八
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