ヴィレッジおーたむは平安なり
さて、3つめの町はすぷりんぐ、さまーと来ましておーたむ、でございます。パレス六条の南西の区画、すぷりんぐの西隣でございます。秋にふさわしく楓や紅葉などの色づく木々の他にも萩や秋桜、曼珠沙華など秋に見ごろをむかえる花々も植えられ、錦秋の眺めを満喫できるお庭でございます。南庭の大きな池はビレッジすぷりんぐのお庭の池と繋がっており、凝った造りとなっております。こちらビレッジおーたむにお住いになられるのは今回初めてご紹介するお方でございます。
以前光る君がお付き合いしていた六子さまというお方がいらっしゃいました。身分も高く都いちの貴婦人と評判の六子さまでございましたが、ご自分が思っている以上に光る君を愛してしまい、嫉妬の鬼となってしまわれました。例の毒りんごを仕込んだのも六子さまだったとかそうでないとか。
そんな折、お部屋で毒物の調合をなさっていらした六子さまは誤ってその臭気を吸ってしまわれそのままお亡くなりになってしまわれました。光る君がアバンチュール、じゃなかった明石で謹慎していらしたときのことでございました。
六子さまは光る君とお付き合いなさる前は
春宮さまとのあいだにはお姫さまがひとりいらっしゃいました。その方が
六子さまが亡くなられ、光る君は秋子さまの親代わりになられました。その光る君のお世話で秋子さまは現春宮さまのお妃さまになられました。
「秋子さま、お邪魔していいかしら?」
普段は宮中の後宮でお暮らしの秋子さまですが、時折こうして
「紫子さま、お久しぶりね」
それぞれのヴィレッジが渡殿(渡り廊下)でつながっているので光る君だけでなく行き来が楽にできるようになりました。
「秋子さまごきげんよう」
光る君がお父さま代わりならわたしはお母さまになるわ、と紫子さまがおっしゃったのです。紫子さまにはお子さまがいらっしゃらないので秋子さまをとてもかわいがられます。
「紫子さまもごきげんよう」
実は秋子さまと紫子さまは年齢がさほど変わらないので、秋子さまは紫子さまをお母さまというよりはお姉さまのように慕っていらっしゃいます。
秋子さまのSKJ、元はお母さまの六子さまのSKJであったチームおーたむのもみじとかえでとすすきが紫子さま御一行をお迎えになられます。紫子さまのSKJ、チームすぷりんぐはお手みやげの羽二重餅をお渡しになります。
お菓子とお抹茶の楽しいひとときを過ごされる秋子さまと紫子さま。話題は秋子さまの夫君の春宮さまのことのようでございますわね。春宮さまは光る君の弟君にあたります。
「それにしても春宮さまって素敵よねぇ。カッコいいわ」
紫子さまがそう言うと、
「「「ステキですわぁぁぁ」」」
とチームすぷりんぐの三人が声を揃えます。春宮さまはカンペキな美男子と評判のお顔立ちなのです。
「秋子さまもあんな素敵な方に愛されてお幸せね」
「「「うらやましいですわぁぁぁ」」」
紫子さま含めチームすぷりんぐ大盛り上がりでございます。黒目がハートマークでございます。
「この前など秋子さまの
チームおーたむのもみじが話します。
「「「んまぁぁぁあ」」」
チームすぷりんぐのリアクションが綺麗にハモります。
「秋子さまがいらっしゃらないときはその絵を眺めてるからっておっしゃって」
かえでも話に参加します。
「「「きゃああああああ」」」
秋子さまの身辺警護をしている後宮のSPが何事かと駆け寄ってくるほどの騒ぎっぷりでございます。異常でないことを確認したSPは元の配置に戻っていきます。
「この前の花見の宴もすごかったみたいね?」
紫子さまが話題を振ります。宮中で毎年行われる桜の宴でのことでございます。
春宮さまには側近として光る君のご子息夕さまがついていらっしゃいます。このおふたりが帝の御前で桜の舞を舞ったのでございます。かたや美形の皇子さま、かたや光る君そっくりのイケメンボーイの夕さま。このふたりがダンスをしたのですからそのカッコよさ、美しさは筆舌につくしがたいものでございました。
「「「それはもう!!!」」」
チームおーたむのSKJ3人が秋子さまよりも早く答えます。宮中行事ですので紫子さまやチームすぷりんぐはその宴には参加していないのでございます。ただ宮中の2大アイドルの胸キュンダンスの噂は春の嵐のように都に吹き荒れたのでございます。
「そうね、とても素敵な舞だったわ」
秋子さまがようやくお言葉を発せられます。
「しかも、春宮さまったら今の舞を秋子さまに捧げるっておっしゃって」
もみじはまるで自分が言われたかのようにうっとり夢見気分のようですわね。
「「「「いやぁぁぁぁぁ」」」」
すでに紫子さままで叫んでいらっしゃいます。あまりの騒音に軒下の野良猫たちが退散していきます。
このところ春宮さまや夕さまからお言葉をかけられたり、おふたりをお見かけしただけで女官たちが卒倒するのが宮中では流行っているようでございます。
この花見の宴の折りも春宮さまと夕さまの舞をご覧になった女官たちがまた我先に争うように倒れたとか。
「それから? それから春宮さまはなんて??」
きゃあきゃあきゃあ
「もっとないの? もっと言って!」
いやぁぁぁぁ
「「「「うらやましいですわぁ」」」」
紫子さまとチームすぷりんぐは興奮しすぎて息も絶え絶えのようでございます。
「しかも秋子さまひとすじ」
呼吸を整えながら紫子さまの一言でございます。
「「「うらやましいですわぁ」」」
「失礼いたします」
源ちゃんズの管三がやってきたようです。
管三は源ちゃんズでは最年長で光る君がお小さい頃から仕えております。いつでも穏やかな柔和系イケメンでございます。弦一郎が源ちゃんズのリーダーなら菅三は源ちゃんズの兄貴分で常に光る君と源ちゃんズを見守っております。
「春宮さまから御文でございます」
「「「「「「「きゃああああああああ」」」」」」」
あまりの音響に御簾が揺らぎます。
「御文箱よぉぉぉぉ!」
いやーーーーーーぁぁぁ!
「で? で? 秋子さま! なんてっ???」
紫子さまもSKJたちもこぞって秋子さまに詰め寄られます。
「この御文箱、なんて素敵なの!」
「ふたが開くわよ!!」
「もう薄様紙までカッコいいわ!」
「添えられてる紅葉もカッコいいわ!」
「宛名のお
「なんて高貴な香りなの!」
秋子さまはくすくすと微笑まれながら、優雅にゆったりとそのお手紙をお広げになられます。
「「「すてきぃぃぃぃぃぃ」」」
まだ文面は目にされていないのにこの盛り上がりようでございます。
「「「「「「「きゃああああああああ」」」」」」」
「「「「「「「やめてぇぇぇぇぇ」」」」」」」
猫の次は池の鯉までもが退避するようです。すぷりんぐ側の池へと移動してゆきます。
本日もパレス六条平安なり、でございます。
♬BGM
Venus タッキー&翼
✨『パレス六条』登場人物紹介
六子さま 毒りんご怨霊御息所さま
春宮さま パーフェクトホンモノプリンス
チームクィーン(もみじ、かえで、すすき) 秋子さま付きSKJ
管三 源ちゃんズメンバー、みんなの兄貴、マイホームパパ
✨『げんこいっ!』トピックス
秋の庭には柿、りんご、栗などの果樹園もあり果物狩りも楽しめる。イチョウもあるので銀杏拾いも可能。
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