Shall we dance? 俺のプリンセス withシンデレラ
さて一話一話光る君の恋のお相手をご紹介している壱の巻ですが、ようやく折り返しを過ぎました。そうなんですの。一体何人続くのかってご心配でした?
さて、今回は可愛らしいお話ですわよ。金平糖でもご用意いたしましょうか。あ、それともかぼちゃを使って……。
あいかわらずとっかえひっかえカノジョを作っては、満たされない想いで月を見上げている光る君ですが、ある日外出先のお寺の庭で片方だけの可愛らしい草履を拾います。
「それ、わたしの!」
生垣から飛び出してきたのは幼い女の子でした。
光る君は驚かれました。
少女があまりにもあの藤子さまに似ていらしたのです。
光る君が草履をはかせておやりになります。
「何をしていたの?」
「森の動物さんたちとダンスパーティーごっこよ」
「ダンスパーティー?」
「そうよ。大きくなったら本物のダンスパーティーに行くの。いつか王子様が迎えにきてくれるのよ」
春の柔らかい陽ざしのそそぐ中、花という花が咲き乱れる爛漫の春のことでございます。
お可愛らしいその少女は紫子さまとおっしゃいました。
藤子さまとそっくりなお顔立ちの紫子さまに光る君は夢中になられます。
紫子さまは継母とふたりのお姉さまとお暮らしでいらっしゃいます。
血のつながりのない紫子さまにお3人は冷たく接していました。
見かねた光る君は半ば強引に紫子さまを自宅にお連れになりました。
「キミはね、俺と出逢うために生まれてきたんだ」
「キミが大きくなったら舞踏会で俺と踊るんだ」
「俺がキミの王子様なんだよ」
舞踏会とは宮中で催されるダンスパーティーのことでございます。
あの舞踏会でパートナーを組むということは彼が最も大切にしているパートナーだと世間的にアピールするものでございます。
「俺の願いはね、キミとふたりで幸せになることなんだよ」
「キミだけを愛している。一番愛しているのはキミだ」
「キミが俺のプリンセスだよ」
そんなことをお話なさりながら光る君は紫子さまを理想の女性にお育てになりました。
それはそれは美しく。
それはそれは聡明に。
紫子さまは薄紅色のさくらのような雰囲気を纏う女性へと成長なさいました。誰もが美しいと認めます。溢れる気品が紫子さまを包みます。
「みんな紫子のことをキレイっていうの。そんなことないのにぃ」
「やだー。女房たちもみんなに言わなくていいのよって言っているのにぃ」
「タイヘン! 今日髪洗う日だわ。早くして! トリートメントもね。ついでにパックもしちゃおうかしら? あっ! ネイルもお願いね」
美は一日にして成らず、ですわね。あの光る君の最愛の恋人であるための努力は怠っていらっしゃらないようでございます。
紫子さまが成人なさり光る君とご結婚され、あの舞踏会へとおふたりでお出かけになります。宮中フィルハーモニー管弦楽団によるワルツが流れて参ります。
宮殿の大広間で紫子さまの前に光る君はひざまづき、お手を差し伸べられます。
「Shall we dance? 俺のプリンセス」
「はい。王子様」
おふたりのワルツに周りの者たちが羨望の眼差しでございます。
シャンデリアが煌く中、光る君が華麗にエスコートなさいます。
シフォン生地の十二単の色鮮やかなお着物がふわりと舞います。
まるで桜のはなびらを散らすように。
まさに美男美女、非のうちどころのないカップルだと皆が褒めそやします。
そんな周囲の言葉に光る君はより気分を高められます。
「なんてキミは素晴らしいんだ」
「キミこそが俺の理想のプリンセスだよ」
少し光る君の表情が歪みましたわね。
もしや、足を踏まれました? それにしては紫子さまは涼しいお顔をなさっていらっしゃいますけれど。
曲目が変わりました。今度は明るめのダンスナンバーでしょうか。とても楽しげに踊っていらっしゃいます。
さすが、宮中のダンパ、でございます。お料理やデザートに目移りしてしまいますわね。シャンパンにイチゴなんぞ浮かべてみようかしら? こちらは? トリュフのカナッペ? まあ美味しそうだこと。これって余ったら
光る君は手毬寿司をお口になさっています。あら、ものすごくむせていらっしゃいます。大量ワサビのロシアンルーレットだったようですわね。ある意味大当たりですわね。
それはさておきでございます。
光る君と紫子さまは気を取り直して、
簀子縁の下から今夜はヴァイオリンが聴こえて参ります。
去りゆく春を知らせるようにさくらが舞い降りて参ります。桜の雨の中で寄り添うおふたりの姿はもうため息モノでございます。
「なんてキミは美しい女性になったんだろうね」
「あなたが愛してくださるからよ」
(【超訳】アンタがあっちこっちのオンナに手を出すから負けないように女子力上げてんじゃないのよ、ボケ)
「もうキミのことしか目に入らないよ」
「わたしの瞳にもあなたしか映らないわ」
(【超訳】どの口がいうかしらね。ネタは上がってんのよ)
自分で育てたとはいえ、想定以上に美しく成長なさった紫子さまに光る君は目を細められます。彼女の紡ぐお言葉もお言葉通りにお受け取りになり感激していらっしゃいます。
〜 あの日から
理想どおり 計画どおり 〜
光る君のおこころを占めるのはもちろんあの
ああみなさま、ため息などおつきにならないでくださいませ。
死ぬほど
「さ、12時になる前に帰るわよ」
「ええっ? だってまだパーティは終ってないよ?」
「プリンセスってそういうもんでしょ? それに夜更かしは美容によくないわ。それともどこか
「……。いっ、いいです。帰ります」
おふたり仲良くお手をつないで階段を下りていらっしゃいます。あら、紫子さまのヒールが脱げましたわ。光る君がそのガラスの靴を大事そうに履かせておやりになります。
駐車場にはすでに源ちゃんズがスタンバイ済みです。
いつもの
「わたしたちの
BGMは「愛の喜び」でございます。
今夜は
夜中にねぇ、若干ご近所迷惑ではございますけれど、紫子さまのリクエストでございます。ご容赦くださいませね。
死ぬほど
♬BGM
華麗なる大円舞曲 ショパン
愛の挨拶 エルガー
愛の喜び クライスラー
恋 星野源
✨『げんこいっ!』トピックス
女子をときめかせる胸キュンシチュエーション⑧
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます