政敵なんてクソくらえ withジュリエット
みなさまここまでお付き合いくださりありがとうございます。
あらぁ? 呆れていらっしゃいますか?
千年語り継がれるイケメンの恋物語でございますよ?
三千年にひとりと言われているイケメンでございますよ。
黄金比率どおりのお顔だち、生まれながらの
光る君のめくるめく恋絵巻はまだまだ続くのでございます。
今回のお相手は月子さまとおっしゃいます。
実を申し上げると、月子さまの
そんな政敵のお姫さまとの恋がスムーズに進むはずがございません。
初めて出逢ったのは宮中で催された桜の宴の夜でございます。
春らしい
月子さまのお姉さまの弘徽殿の
「アタシ朧月夜が一番すきだわ」
綺麗な声が聞こえてきたので、光る君はお答えになります。
「奇遇だね。こんな夜更けの月が好きなんて。俺もだよ」
忍び込んだ簀子縁を滑るように歩まれる光る君の
わずかにたゆたう春風にさくらのはなびらが舞い、うすぼんやりと朧月夜が照らす春の夜、おふたりは恋に落ちたのでございます。
月子さまははっきりしたお顔立ちの美女でございます。その艶やかなお姿はまるで咲き誇る
「アタシより美女なんている?」
「誰よりも綺麗なんだから誰よりもときめいた恋をするのよ」
「後宮での地位争いなんて楽勝だわ♬」
月子さまの美しさの源はその自信です。そして周りの褒め言葉を栄養にさらに美しさに磨きをかけるのです。
実は最初の出会いのときにお互いの名前や家柄をご存知なかったのでございます。
夜が明けてきて帰らなければならなくなった光る君は尋ねます。
「
「あら、気になるなら自分で調べたら?」
月子さまはそうおっしゃられました。
月子さまには
「やっべぇ、キミ兄ちゃんのフィアンセだったの?」
「そう。でもアナタのことがアタシは好きよ」
「俺だって兄ちゃんよりキミのこと愛してるよ」
お互いの立場が判明したあともおふたりはデートを重ねられます。いわゆる密会でございます。
愛車の跳ね馬牛車ではアシがついてしまいますから、「わ」ナンバーの大衆牛車にて月子さまの元へと通われます。牛車から降りられても烏帽子を深く被り、グラサンにマスク姿でございます。
月子さまが
光る君はお庭からバルコニーの月子さまを見上げられます。
「どうしてあなたは光る君なの?」
月子さまからしてみれば、父親の政敵、婚約者の弟でございます。
「キミが誰の娘だろうと誰の婚約者だろうと俺はキミを愛してる」
グラサンもマスクもかなぐり捨てて月子さまと見つめ合います。
「お父様に見つかっちゃうわ」
お手を胸元に寄せて悲しげにお顔を左右に振られます。よよ、と袂でお顔をお隠しになられます。オーバーアクションですわねぇ。酔っていらっしゃいます。
「政敵なんてクソくらえだ」
こちらにももうおひとり酔っていらっしゃる方が。月の光が不敵に笑みを浮かべる光る君を照らします。月子さまもうっとりと見つめられます。
「やっぱりあなたってステキだわ」
光る君が華麗にバルコニーの手すりを飛び越えられます。
あ、そこの手すり、この前ウダイジンさまがなにやら細工をなさっておいででしたわよ。
ぼきっ
どすん
あら。ららら。
お伝えするのが遅うございましたわね。ごめんあそばせね。
こうして月子さまとのお付き合いは秘密裡に続いたのでございます。
実を申しますと、月子さまが春宮さまとご結婚されたあともでございます。
「たまに実家に帰省してきてカレとのアバンチュールもいいもんよね」
「そうはいっても優しくしてくれる
「あなただってアタシだけじゃないから同じでしょ?」
ふう……。今日は月にちなんでお団子でも召し上がります? 玉露のお茶もお淹れしますわね。わたくしはきな粉に黒蜜をたらすのが好きなんですの。ああ、ゴマあんもいいですわねぇ。シンプルなみたらしも捨てがたいですし、ずんだというのもアリですわね。
……、これは失礼いたしました。話がそれてしまいましたわね。
わたくしが申し上げるのも僭越ではございますが、光る君と月子さまはよく似ていらっしゃいます。
ご自分の魅力を十分にわかっていらっしゃる。
生きていくには恋がなによりのビタミン。
ときめいていなければ死んでいるのと同じ。
安定した暮らしもいいけれど、刺激も欲しい。
〜 背徳感 スリルたっぷり 蜜の味
楽しまねぇと つまんねぇじゃん 〜
「私を月に連れてって」
「あの星で指輪を作って」
「キミのためなら星でも月でも取り寄せるよ」
似た者同士のおふたりであれば、この展開は当然の帰結とも言えるのかもしれません。
今夜も敵地ウダイジン家に忍び込む光る君。
スリリングな逢い引き、でございます。
美しい月がふたりを照らします。
月がモチーフのジャズが奏でられております。
アルトサックスとウッドベースの音色が雰囲気を盛り上げます。
今夜の担当は管一と弦四郎ですわね。
「俺たちには団子よりコッチだよな?」
「そうね、カンパイ」
「星より美しいキミの瞳に」
カクテルグラスを傾けるおふたり。カクテルの名前はビトゥイーン……おっと、よい子も読んでいらっしゃいますからね、自主規制いたしますわね。
光る君が月子さまのあごをクイと少し上向きになさいます。
星がこぼれんばかりの瞳でお互い見つめ合っておいでです。
そしてあの
もうみなさまお馴染みでございましょう?
さあ、ご一緒にご唱和くださいませ。
死ぬほど
あら? なんでしょう。この紙。
『号外! 宮中スクープ!!
♬BGM
fly me to the moon Risa Jazz Covers
✨『げんこいっ!』トピックス
女子をときめかせる胸キュンシチュエーション⑥
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます