愛していると言ってくれ withベル
皆さまごきげんよう。あらまた見つかってしまいましたわ。今日のおやつはマカロンなんですの。おフランスのお菓子らしゅうございますね。美味しゅうございます。ではカフェオレなどいただきながら今回のお話をさせていただきますわね。
光る君のご身分柄、恋のお相手も高貴な方々ばかりでございます。
そんな中さほど身分の高くない女性と光る君は出逢います。
夏の夕暮れにたまたま通りがかった小さなお家でございます。
板塀に見慣れない珍しい花が咲いているので光る君は塀越しに話しかけます。
「可愛らしい花だね。なんていうの?」
「夕顔の花よ。
お屋敷の中からひとりの女性が出てきたようですが、塀が視界を遮りお顔はよく見えません。
「どうぞ。持っていっていいわよ」
そう言うと、その女性は扇の上に夕顔の花を載せて光る君に差し出しました。
見ると、その扇には彼女の詠んだ歌が書いてありました。
~ あなたにね 光がさして きらめいて
眩しすぎて よく見えないの ~
(なんてステキなの。また逢いたいわ)
女性側からアプローチをされるという展開に光る君は夢中になります。
この方が夕子さまでいらっしゃいます。夏の陽ざしのように突然降り注いできた恋のお誘いに光る君がときめかないわけがございません。
夕子さま自身はまるで野に咲く鈴蘭のように控えめでお可愛らしい方でございます。可憐、という言葉がぴったりでございます。
はらり、はらりと夕顔の花が散っていくようでございます。蝉しぐれも夏の終わりを知らせているようです。命燃え尽きる前の絶唱なのでしょうか。
「これ以上のシアワセなんて望まないわ」
「結婚なんてしなくていいの」
「時々来てくれればわたしは十分シアワセなのよ」
光る君はご身分にはふさわしくない街中の夕子さまのお家へと通うようになります。お庭もお屋敷も手入れは行き届いているのですが、小ぢんまりとしたお宅でございます。ざわざわと隣家や通りの気配や物音が聞こえてくるような夕子さまのお宅が光る君には物珍しいようでございます。何せご自身は高級住宅街の大豪邸にお住まいでございますからね。
夕子さまは優しくたおやかに光る君を受け入れますが、
実は光る君もご自分の身分や境遇のことなど明かしていらっしゃいません。
「キミは誰?」
「誰でもいいわ。あなたのそばにいられるんだから。あなたこそ誰?」
「キミに恋してるただの男だよ」
〜 逢いたくて いつでもキミを 想ってる
こんな気持ちは 初めてなんだ 〜
完璧なまでに整った端正なお顔に切ない憂いの影がさして、その美しさはもうこの世のモノとは思えません。
どなたからもご好意をいだかれる光る君でございましたが、ご本人には満たされない想いもおありだったようです。
最初の恋が成就せず月へと昇っていったからでしょうか。
光る君はご本心を隠して仮面を纏われます。
誰か俺のことを愛してくれ
本当の俺を愛してくれ
愛していると言ってくれ
ふたり仲良く縁側に並んで水を張ったタライにおみ足をつけていらっしゃるようでございます。ぱしゃりと水を飛ばしたりなさりながら、楽しいひとときを過ごされております。お庭が夕陽に照らされ、杏色の情景がおふたりを包み込むようでございます。
今日もまた夕顔の花が散っていきました。
夕顔の季節が過ぎてゆくのが告げるのは夏の終わりだけでしょうか。
キミが……俺のことを愛してくれたらいいのに。
そうすれば、俺も仮面をはずすことができるかもしれない。
夕子、キミになら心を許せるかもしれない。
「なんや、最近派手な車が停まってんなぁ」
「いかにも金持ちそうやなぁ」
「いったいどんなセレブを通わせたはんのやろなぁ」
なにやらご近所が騒然としております。跳ね馬のマークの入った牛車を皆が取り囲んでおります。
「ね、ちょっと場所変えない?」
なんせ
お仕事の合間のほんの空き時間にもこちらにお顔を出されるのですからご近所チェックが入るのも当然といえば当然でございます。光る君の素性がバレて噂になるのも時間の問題かもしれませんわね。
離れていても脳裏をよぎるのはキミのことばかり。
逢いたくてたまらない。
今日は珍しいスイーツが手に入ったから持って行ってあげよう。
光る君は腰をさすりながらあの
え? また? とおっしゃいましたか?
……、気のせいでございましょう。
死ぬほど
♬BGM
Beauty and the Beast (美女と野獣より)
恋のバカンス ザ・ピーナッツ
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