壱の巻 死ぬほどキミに恋してる
めくるめく 恋愛絵巻 始まりますの
障害なんて越えるためにあるんだぜ withかぐや姫
時は平安。太平の世でございます。
季節は秋。錦繍の秋の盛り。紅葉が今を盛りと風景を彩っております。
その赤子の手にも似た小さいくれない色の葉を無数に纏った枝がゆらゆらと、さわりさわりと揺れております。
いずれ散りゆくその様はどこか人生にも似て儚く美しいものでございます。
所は京。宮中でございます。
皇族、貴族のみなさま方が雅楽を奏で、紅葉を愛でる和歌を詠んでいらっしゃいます。
申し遅れました。わたくしミタと申しまして、この大和の国の語り部でございます。年齢? 女性に聞くことではございませんが、卑弥呼さまはわたくしより年下でございますね。長年こうしてこの国のことを語っております。今回はとびきりの
さきほどの紅葉の宴の中でもひときわ光を放つ方がいらっしゃいます。
まるでその方から光が溢れているかのような眩しさ。
ひとたび目が合えばたちまち心を射貫かれてしまうようなその瞳。
ただのあいさつでさえ恋のささやきに聞こえてしまいそうなその声。
心を溶かしてしまうようなそのお言葉。
白魚のような美しく長いその指。
その優美な手で舞うお姿は
神でさえ恋をしてしまうのではないかと思えるほど。
御名を
光源氏の君
と申されます。
主上の第二皇子ですが、源姓を名乗られることになりました。
例えようもないほどに美しいその皇子さまを「光る君」と皆が呼びます。
「紅葉もキレ―だけどさ、もっと綺麗なのはキミだよね」
その類まれなるイケメンぶりのおかげでこんなことをささやかれて彼になびかない女性などおりません。例外をのぞいては。
「あの人だけは俺のものにならないんだ」
光る君の永遠の憧れの人、藤子さまのことでございます。
幼い頃ふたりはよくご一緒に過ごされました。
藤子さまが5歳年上でしたので、それは仲の良い姉弟のようでございました。
どことなくお顔が似ていらしたので、実の姉弟に見えなくもありませんでした。
気品あふれ、優雅に笑みをたたえていらっしゃるそのお姿は往く春に咲きこぼれる藤の花のようでございます。そのお美しさは周囲の憧れの的でございます。
美しい藤子さまを「輝く日の宮」と称え、「光る君」と微笑みあうお姿は羨望の眼差しでございました。
時は流れ、光る君がご成人あそばした頃におふたりに別れが訪れました。
藤子さまが月へと還らなければならなくなったのです。
親御さまがお決めになった縁談のためでございました。
もちろん、光る君は引き留めました。
壁際にいらっしゃる藤子さまの前に光る君が立たれます。両の手を勢いよく藤子さまのお顔の横あたりの壁にどんっと置かれます。
「キミを一番愛しているのは俺なんだ」
「月になんか行かないでくれ」
「恋の障害なんて越えるためにあるんだぜ」
それはそうと藤の花言葉をご存知でしょうか。「恋に酔う」だそうですわよ。
藤子さまは光る君の腕の下をかいくぐり、
「何言ってんのよ。わたくしたち住む世界が違うのよ?」
「そんなこと言って他の人にも同じこと言ってるクセに」
「泣かれてもね、こっちだって困んのよ」
(いっそ素直にあなたを愛せたらよかったのに)
藤子さまの心の声は光る君に届いたのでしょうか。光る君は几帳のこちら側から几帳の
光る君は藤子さまを月に帰すまいと勇敢に弓を構え藤子さまのお迎えの方々と戦うおつもりでございましたが、いざお迎えが参りますと、たちまちあたりが金色に輝き、その光を浴びた者たちはその場で眠りこけてしまい、気がついた時には藤子さまは旅立たれたあとでございました。
「じゃあね」
お庭の白砂に残された藤子さまからのお別れのお言葉は
〜 こんなにも ツライ想いを するんなら
もう恋なんて したくねぇかも 〜
光る君の
今日も光る君は空を見上げます。
煌煌と眩しく輝く月を眺めます。
愛しい愛しいあの人のことを想っていらっしゃいます。
そんな想いとともに光る君はこの
死ぬほど
♬BGM
Talking to the moon Bruno Mars
もう恋なんてしない 槇原敬之
✨『げんこいっ!』トピックス
女子をときめかせる胸キュンシチュエーション①壁ドン②カーテンの刑(几帳の布ごと抱きしめる)
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